リハビリの精神 「全人間的復権」を 医療の世界にも
香川医療生活協同組合/高松協同病院は2002年の開院以来、リハビリテーション分野を中心に介護や福祉施設とも連携しながら、地域の医療・リハビリのニーズに応えてきた。院長に就任して10カ月が過ぎた北原孝夫院長に思いを聞いた。
―リハビリに特化した病院と、そうではない病院に違いがあるとすれば。
今、医療界や医療者教育の中に、「多職種協同教育」が取り上げられるようになりました。それをいちばん生かせるのが、回復期リハビリ病床や在宅の医療ではないかとのイメージを持っています。
回復期病棟では医師・看護師・リハビリスタッフ・ソーシャルワーカー・介護福祉士・看護助手など職員全員が協力し合って一人の患者さんを支えていく思想に貫かれています。そうすると、おのずとリハビリに対して、「社会復帰を目指すために全人間的復権を」という理念が生じます。リハビリテーションをするということ自体が、その人らしくあるように支えなければならない。この比重の大きさが、そのほかの病院と違うところであり、それを目指す医療機関でありたいと思っています。
―チーム医療を大切にしていると聞きました。
各職種の専門的な力量を最大限発揮した強力なチーム医療こそが鍵であると考えています。病棟スタッフは、看護、ケアワーカー、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなどの職種別(縦のライン)ではなく、病棟所属としてさまざまな職種が強力なチーム(横のライン)となって、リハビリテーションを提供しています。職種間の壁を極力なくし、お互いを尊重しあい率直に意見を述べ合える関係、環境を作ることこそがよいチーム医療につながると考えています。
―医療生協の院長として地域包括ケアをどう見ますか。
いいものにするためにそれぞれの地域でどう工夫するかだろうと思います。各々の代表の声明を集めるだけでなく、住民の本当の声、そして現場で働く医療従事者の生の声をなるべくたくさん聞く。でも、そこまでやっている地方自治体の首長は少数ではないでしょうか。それを打ち破るには、私たちがモデルをつくり、これでやりませんかとアプローチする工夫が求められている気がします。
ここ高松市の木太町は、さまざまな世代が住んでいるのが特徴です。若い世帯が流入して小中学校がマンモス化し、でも昔からここに住んでいる人たちとのコミュニティーづくりがうまくいっているかどうかはわかりません。そこで当院や診療所、介護施設などの事業所、あるいは薬局などが、いろんな世代をつなぎ、町づくりやコミュニティーづくりに貢献していく。それをわれわれの団体が取り組むべきではないかと思っています。
かつてはその場所が、お寺だったり教会だったりしたかもしれませんが、病院や診療所が町づくりのお手伝いまでできるというのが、地域包括ケアに求められていることかもしれません。
民医連や医療生協は、地域住民が主人公の班をいくつもつくり、さまざまな健康に関する事業をやっています。さらにはWHOが推進している、健康に関する国際ネットワーク、HPH(Healthpromoting hospitals &Health Services=健康増進拠点病院とヘルスサービス)の活動をしています。これから国際的に広がっていくだろうといわれていますが、日本国内にはまだ数が少ないので、もっとアピールしていきたいと思っています。
なお「全人間的復権」という言葉は、国際的なリハビリテーションの世界で頻繁に使われる言葉で、高齢化社会という認識に立てば、もっと医療機関に発信していかなければならないと考えているところです。今は、リハなしに医療は考えられない時代ですからね。
―なぜ医者に。
無医村に足を運ぶ医者になりたかったんです。でも地域を支えているという目線に立つと、当初の目標とそんなに矛盾していないと思います。
香川医療生活協同組合
高松協同病院
高松市木太町7区4664番地
☎087・833・2330(代表)
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