これからもチャレンジし続けたい
―経済産業省の昨年の調査で米子市が「暮らしやすさ日本一」になったそうです。その理由は。
日本一には医療の充実も関与していると思います。昔から米子には、必要なものは自分たちでまかなっていくという風土があるようです。いいものは取り入れて、そうでないものは選択しないという判断が早いです。この病院は1921(大正10)年に開院し、もうじき100周年を迎えますが、当時は山陰地方に病院がなかったため、600人以上の有志が資金を拠出したんです。一口株主のような人もずいぶんいたそうです。公会堂も一世帯が毎日1円を貯める1円募金運動で建ちました。行政が引っ張っていくのではなく、住民主導の雰囲気がある町のような感じがします。
ですから当院にいくら100年近い歴史があるといっても、時代によって役割が変化していきますから、そこの着眼を間違うと、患者さんは来てくれなくなります。
そこで、私がおよそ1年前に理事長に就任して以降、急患は積極的に受けるようにしましたし、訪問診療は今年の課題ですが、訪問看護と訪問リハ、そしてケアプランを作る部門はきちんと動いています。これから在宅への流れをつくらなければなりませんからね。米子らしい地域包括ケアシステムが構築されるよう、当院としても積極的に提言していくつもりです。
さらに昨年は「地域包括ケア病棟」をスタートさせました。急性期と慢性期の両方を担い、安心して退院できる地域密着型の病院になっています。
―「おしかけ出前講座」をされていますね。
これは今年4月からスタートさせたものです。がんや認知症、生活習慣病やリハビリ、あるいは薬や医療制度など、42種類のメニューの中から興味のあるものを一つ選んでもらい、10人くらい集まってもらえれば、こちらから会場まで〝おしかけ〞て、無料の講座を開催するというものです。
すでに10回近く開かれ、これからも増えていくと期待しています。また院内でも、1時間程度のミニコンサートを定期的に開催しており、広報誌を通じて演奏者を募集しているところです。
―病診連携はうまくいっていますか。
とてもうまくいっています。鳥取大学医学部附属病院と山陰労災病院、米子医療センター、そして当院の4病院が、それぞれ年に1回、医師会との会合を開いています。次の当番は当院で、つまり開業医さんの顔が見える情報交換会が、年4回開催されているわけです。病院側がこれからの方針などをプレゼンテーションし、そのあと懇談会が開かれます。それで開業医さんは、しっかりとした情報を持つことになります。
―これまでを振り返って思うことは。
知らないことへの好奇心が強かったのか、新しいモノ好きだったのか、チャレンジしてうまくいくと達成感があり、生きがいを感じてきました。自ら求めていく、チャレンジの気持ちが大切だと思います。満足すると現状維持だけになるから、進歩しないですね。管理職も長くやりましたが、安定してしまうと面白くなくなります。それで大学病院と労災病院でもいろいろ改革をやってきて、そろそろゆっくりしようと思って後輩の病院を手伝っていたら、ここの運営の話を持ちかけられました。理事長職をもう少し続けて、次期院長や幹部を育てたいですね。
医療法人同愛会
博愛病院
鳥取県米子市両三柳1880番地
☎0859・29・1100(代表)
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