医療法人社団 日新会 城山病院 赤座 薫 理事長

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地域医療を俯瞰して考える

東海高校卒業 1984 昭和大学医学部卒業名古屋大学第2外科入局 西尾市民病院研修医 1986 西尾市民病院医員 1990名古屋大学病院 医学博士取得 1992 中津川市民病院 外科部長 1994 西尾市民病院 外科医長 名古屋大学医学部院外講師 2003 医療法人日新会 城山病院 副院長 2011 同院長 2014 恵那医師会理事

 岐阜県中津川市は、2005(平成17)年の大合併をピークに人口減少が続き、今年8万人を割った。市内の民間病院として、唯一、回復期リハビリテーションに取り組み、高齢者医療と日々向き合う赤座薫理事長に話を聞いた。

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■地域医療を広い視野でとらえる

 岐阜県中津川市は市政63年。2005年、岐阜県の旧恵那郡の3町3村が合併し、同時に島崎藤村の「夜明け前」の舞台である長野県山口村とも合併しました。県を越えての合併は国内で46年ぶりということもあり、大きな話題を呼びました。

 この時、人口は8万5千人。現在は、高齢化や人口流出により8万人に満たない状態となっております。

 木曽山脈などに囲まれ自然豊かな地域ではありますが、山間部の住居も多く、高齢者にとっては厳しい環境です。日中独居の高齢者が多いのもこの地域の特徴です。

 中津川市には、中津川市民病院と国民健康保険坂下病院の2つの公的病院がありますが、同市は南北に長く、両院は15㌔程度離れています。

 岐阜県の地域医療構想をどう描くのかは喫緊の課題で、地域が一緒になって考えていく必要があります。

 しかし、その際に中津川市だけではなく、隣接する岐阜県恵那市や、開業医の高齢化、著しく人口が減少している長野県木曽地区などの状況も俯瞰(ふかん)的に考えることも大切だと思います。

■高齢者医療との出会い

 医局が名古屋大学第二外科で、外科医として先進医療に取り組んでいました。腹腔鏡手術がちょうど始まった頃には、医局の人事により、岐阜県内や愛知県内などに数年おきに異動して腕を磨きました。

 同じ医局の先輩医師でもあった父の赫(ひかる)が、JA岐阜厚生連東濃厚生病院病院長を経て、1981年から城山病院の院長となりました。当初は46床の急性期病院でしたが、介護老人保健施設にも1997年から取り組むなど、いち早く地域のニーズを取り込んでいたようです。

 教授から「そろそろ父親を手伝ったらどうか」と、当院への異動を要請されたのは2003年6月でした。しかし当院は、2000年に80床へと増床したのを期に療養病棟に転換していました。私はこれまでの急性期病院から慢性期病院への異動にはあまり乗り気ではありませんでした。

 一方で、父親を助けたい思いも強く、まずは病院の安定経営に力を注ぎました。当時、「城山病院はベッドが一杯でなかなか入院できないですね」と言われることもありました。しかし、実は病床利用率は70%程度と低く、ベッドの管理がうまくいっていなかったのです。

 これに対して、入退院の予約管理を徹底したり、介護者休養目的短期入院を積極的に行ったりと、細かいマネジメントを行うことで、利用率も徐々に上昇し、今は90%台後半を維持しています。既存のハードの中での工夫が経営安定につながったと考えています。

 病床の管理のために、ケアマネジャーや社会福祉士との連携の重要性も学び、後に立ち上げた回復期リハビリテーション病棟の運営の際に大きく役立ちました。

■回復期リハ病棟の役割

 当院は、2007年に東濃東部で初めて回復期リハビリテーション病棟を立ち上げ、あわせて365日リハにも力を入れています。患者さんに在宅復帰していただくための後方支援病院として、地域に必要だと考えたからです。

 当初は、外科医の私が、回復期リハビリテーションを行うことに不安がありました。しかし、岐阜県内で回復期リハを行っているサニーサイドホスピタル(多治見市)で院長をしている同期の医師からの「外科医だからこそ、全身を診ることができるし、リスクもジャッジできる」という言葉に背中を押されました。

 回復期リハビリテーションの一番の役割は、急性期から在宅生活までをシームレスにつなげていくこと。病院でリハビリを頑張っても在宅での生活のマネジメントを検討せず、「結局寝たきりになった」ではダメなのです。

 このため、医師、看護師、リハビリスタッフらによる、退院前の「介護サービス連携者会議」は大変重要です。運動能力を維持するために、介護サービスを利用しながら在宅生活をきちんとマネジメントできるノウハウを伝えることが我々の大きな役割です。

 岐阜県南東部のいわゆる東濃地区では、2012年に大腿骨頚部骨折・脳卒中の地域連携パスが走り始めました。計画管理病院や、回復期リハ病院、そして老健施設、開業医が一堂に集まり、年3回の会議を行っています。患者さんが安心して在宅で過ごすための医療連携がようやく地域に根づいてきました。

■在宅の限界、長期療養と家族の心の教育

 回復期リハ病院の一面として、地域の在宅医療への受け渡しの役割もありますが、現場の視点で考えると当地区では在宅医療の限界も感じます。

 当市は高齢化率が30%近く、日中独居高齢者、老老介護が多く見受けられます。2018年には介護療養病床がなくなることが決定しています。

 国は老健、療養病床の患者さんを積極的に在宅に仕向けることにインセンティブを与えていますが、これは介護離職を増やすだけだと危惧しています。また、山間部エリアでの訪問診療は、冬場などははっきり言って難しいのが現状です。

 加えて、開業医の高齢化、介護を一生懸命すればするほど家族が身体を壊しかねないという問題もあります。当地域では国の言うように在宅志向を推し進めることは、医療従事者としての正義ではないのではと思うこともあります。

 また、胃瘻(ろう)についても疑問があります。日本では1990年代から内視鏡下胃瘻造設術が急激に増加しました。回復が期待できない脳卒中患者さんを末梢輸液で治療した場合、亡くなるまで2〜3カ月程。一方、胃瘻患者さんでは、3年以上は生命が維持できることが多いです。しかし、2年も過ぎると、四肢関節の拘縮が著明となり顔貌も変わってしまいますし、意識もない状態がほとんどです。

 日本人の感覚として、喋れなくとも、食べなくとも、手が温かければお父さん、お母さんは生きている、と思う人も多いでしょう。でも、それと患者さん本人の感じ方は別物だと考えられます。

 私は、胃瘻を作るかどうかを決める前に、家族と、死や、家族との別れについての話を1時間以上します。そうすると、胃瘻を作らない、という選択をされる方も自然と多くなります。

 海外に目を向けると、例えば、北欧ではもともと行われていませんし、フランスでも1995年をピークに減少していると聞いています。

 本来であれば胃瘻を作るかどうかについては、急性期病院がもっと考えるべきことかもしれません。私自身、当院に来てから、俯瞰して医療について考えられるようになりました。

■医学教育と地域医療

 医学教育の現場では、治す医療である専門性を高める教育ばかりが重要視されているような気がします。しかし、実際には医療と生老病死の折り合いを見つける視点を持つことが大事なのだと考えるようになりました。

 現在の医療福祉現場のひずみを考えると、官僚だけでなく、もっと現場の医療従事者が関与し、現場の視点でシステムを作るべきではないかとも考えます。

 最後に、当地域は医師の高齢化、医師不足に悩まされております。当院も例外ではありません。高齢化社会を支えていく地域医療に、体力ではなく心で関わっていきたいと考えている医師を心待ちにしております。

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医療法人社団 日新会
城山病院

岐阜県中津川市苗木字那木3725番地2号
☎0573・66・1334(代表)
http://www.n-shiroyama.info/hos/


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