姫路の医療を牽引 魅力ある病院に
2021年度をめどに兵庫県立姫路循環器病センター(姫路市西庄)と統合・再編し、新病院の開院を目指す製鉄記念広畑病院。橘史朗理事長・院長に話を聞いた。
ー理事長としての1年、新病院の開発に向けての苦労もあるのでは。
当院は、新日鉄広畑病院が社会医療法人化に伴い製鉄記念広畑病院と名称変更したものです。現在は、392床、本館と新館の2棟構成となりました。
新館は3年前に出来上がったばかりで、姫路救命救急センターを併設しています。ICUは10床フルオープンできましたが、20床の救急病棟は16床運用にとどまっています。このような状況下で、兵庫県立姫路循環器病センターとの統合話が持ち上がり、熟慮の結果、統合に踏み出しました。
院内のコンセンサスを得ることが最も大切なことの一つと考え、これまでに12回の院内説明会を開きました。新病院の開設主体である兵庫県とともに、神戸大学、姫路市、姫路市医師会、地域自治会など、検討会や説明会、意見調整会、を幾度となく開きました。何とかコンセンサスに近いものが得られたと思っています。
現在は、兵庫県との間で基本計画を作成していますが、県立と民間の統合はまれなケースで課題は山積みです。
新病院は700床規模で、高度な政策医療の提供、高齢化とともに増加する救急患者への対応、医師不足の解消などを行う、地域のリーディングホスピタルを目指しています。
―救命救急センターについて聞かせてください。
救命救急センターができて3年目になります。兵庫県下で9番目、民間病院としては初めてです。循環器救急には、姫路循環器病センターが対応していますが、一般救急には当院が対応しています。
年間約3700台の救急車を受け入れていて、特に重症患者、多発外傷患者に対応することが多いですね。中播磨医療圏(姫路市・市川町・福崎町・神河町)で吐血患者を随時診ることができる医療機関は当院しかありません。消化器内科医、救急医、看護師など4〜5人のチームが24時間体制で診療しています。
ドクターヘリの準基地病院にもなっていますので、火、水曜日にはヘリが駐機しています。毎日のように救急患者がヘリ搬送されてきます。
災害対応ですが、熊本地震の際には、スタッフがDMATとしてドクターカーで被災地に出向き、熊本赤十字病院で支援活動を行いました。
―がん診療・地域医療については。
当院は兵庫県指定がん診療連携拠点病院ですので、他の拠点病院と連携しながら治療水準の向上に努めています。緩和ケア、在宅医療の充実、がん患者と家族に対する相談支援、がんに関する各種情報の収集・提供など、各チームでの取り組みをさらに強化していきたいですね。
また、姫路市内においては、姫路赤十字病院、姫路医療センター、姫路聖マリア病院、当院の4病院でエリアと役割を分担して地域医療を行っています。私たちの主な担当地域は、姫路市の南西部とたつの市です。
このエリアは工業地帯で人口が多く、高齢化は進みますが今後もしばらく人口増加が見込まれています。救命救急センターができてからは、さらに広いエリアからの患者さんも受け入れるようになりました。今後も病院機能の充実に努めたいと思っています。
地域医療を考える上で肝心なのは医師の数です。若い医師、ベテランの医師がバランスよくそろっていないと、病院はうまく機能しません。中播磨医療圏の医師数は、兵庫県の平均よりもやや少ないくらいですが、隣の西播磨医療圏は非常に少ない。ですから、西播磨の約4分の1の患者さんは、姫路市内まで治療を受けにきているのが現状です。
医師不足を解消するためにも、若い医療者が魅力を感じることができる病院づくりが求められているのだと思います。
―医師不足解消に向けた具体的な取り組みは。
姫路市には、市内の医療機関で臨床研修を受けている研修医向けの奨学金制度があります。
奨学金貸与後、引き続き市内の医療機関に医師として一定期間勤務すれば、返還債務が免除されるというものです。また、兵庫県でも医学生向けの奨学金制度を設ける予定があるようです。近ごろは、奨学金が返せない学生が増加していると聞きますし、大学の授業料を下げることも、今後は検討すべきではないかとも思います。
学費のことを気にせずに学校に通い、思う存分学ぶことができる。そんな世の中でないと、この先、いい学生、いい職業人は育ちにくいのではないでしょうか。
―ご専門は外科ですが、近ごろは腹腔鏡下手術が増えていますね。
腹腔鏡下手術のメリットは、傷が小さい上に開腹と同じレベルの手術ができることです。実は、私も腹腔鏡下手術を受けたことがあるんですよ。一昨年12月に胃と腸の検査をしたところ、大腸にポリープが見つかって。内視鏡検査は自分でもやっていますから、「あ、がんや」とすぐにわかりました。
年末でしたが、手術の予約に空きが出て、友達の病院で手術してもらいました。1週間の入院中は、「プリンが食べたい」「痛いから早くドレーン(排液管)を抜いてくれ」などとわがままを言ったりもして(笑)。こういう言い方はよくないかもしれませんが患者さんの気持ちを知ることができるいい経験でした。
社会医療法人
製鉄記念広畑病院
兵庫県姫路市広畑区夢前町3丁目1番地
☎079・236・1038(代表)
http://www.hirohata-hp.or.jp/