リハビリという力 鐘ヶ江 寿美子

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にのさかクリニック・バイオエシックス研究会 米沢慧セミナーより

 長寿社会を迎え、リハビリテーションの需要は増大している。今回のセミナーではリハビリテーションを根幹より再考した。

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リハビリテーションの語源と定義

 リハビリテーションの語源は、「リ=再び」+「ハビリス=人間にふさわしい、適した」+「エーション=状態にすること」である。1968年WHOはリハビリテーションを「能力低下の場合に機能的能力が可能な限り最高の水準に達するように個人を訓練あるいは再訓練するため、医学的・社会的・職業的手段を併せ、かつ、調整して用いること」と定義した。

 しかし、日本のリハビリテーションの創始者・上田敏は、リハビリテーションとは「人間らしく生きる権利の回復」、すなわち「全人間的復権」であり、過去の生活への復帰であるよりもむしろ「回生」なのだと説いた。米沢氏は上田氏のリハビリに対する思想を受け、以下3視点より論じた。

いのちの回生としてのリハビリ

 解剖学者・三木成夫は、ヒトのからだは植物と動物の共生とし、動物性器官は感覚系、神経系、運動系よりなり、植物性器官は消化・呼吸器系、血液・脈管系、泌尿・生殖系よりなると説いた。個体発生は宗族の発生をくりかえす(ヘッケル)というように、胎児期のヒトは魚類〜哺乳類への生命進化を胎内で一気に行う。リハビリは動物性器官へのはたらきかけではあるが、生命のリズムをつかさどる植物性器官への影響も大きい。

 リハビリがいのちの回生であることを世界的知者は語る。脳卒中後、社会学者で歌人の鶴見和子は「回復しないなら、新しいいのちの変化を「回生」と呼ぼう」と歌った。免疫学者の多田富雄は麻痺した足指がぴくりと動いた感動より「体は回復しないが生命は回復している。その生命は新しいもの」と著した。また、リハビリは単なる機能回復訓練ではなく、生命力の回復、生きる実感の回復と唱え、リハビリ制限は平和な社会の否定であると訴えた。

いのちの深さへのリハビリ:老揺期のリハビリ

 米沢氏は三木の生命哲学より、いのちの質は動物性生命の力であり、いのちの深さは植物性生命の心であると言う。健康寿命を過ぎ、老揺期を生きる高齢者に対し、生命の質だけでなく、その深さへの配慮が必要である。

 高齢者の三大介護といわれる「食事」は栄養補給ではなく、「排泄」は汚物処理ではなく、「入浴」は人体洗浄ではない。各場面で介護の受け手と仕手が言葉や気持ちを通わせ、関係性を構築する必要がある。これら生活リハビリはコミュニケーションである。「要介護度」は介護の必要性を介護に要する時間をもとに数字化したが、コミュニケーションとしての親和度に変換したらどうかと米沢氏は提案する。親しく和み、「寄りそう」必要の度合いである。

いのちの受容としてのリハビリ

 障害を①機能障害、②能力障害、③関係障害に分類すると、寝たきり、重度の生活障害、老揺期、認知症、終末期の障害は関係障害である。いかに〈いのち〉を受けとめることを支えるか、かかわるのか。

 最近は終末期患者へのリハビリも注目されている。予後数週間の患者が「トイレで用をたしたい」とリハビリに向き合う。ここでのOTやPTの役割は、生活動作の訓練ではなく、生きる「希望」への介助となる。また言語療法中に親身になって話を聴いてくれるSTに患者は想いを語る(スピリチュアル・ペインの表出)。

 最後に米沢氏は、精神科医・高松淳一医師の言葉を紹介した。認知症が進行した高齢者が、「私は40だ」と言う。自分で(間違って)分かる、もうひとつの生き方をされる...と。これも〈いのち〉の受容であり、これに付き合うのもリハビリテーションといえるだろう。


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