寄稿 人材定着講座④ 看護師を目指すということ(2)
特に新卒看護師を採用する際にお願いしたいことがあります。それは、「求める人材像」を明確にするということです。
習得すべき知識や技術が多いため、新卒看護師のみなさんは、意外に「職業としての看護師」を具体的にイメージできません。ゆえに、事業所が求める明確な人材像が重要になるのです。
目標とすべき人材像を示されると、それに向かってスキルを身につけようと努力することができます。克服すべき課題を前に悩み、とまどうこともあるかもしれませんが、そういったプロセスはきっと自立した人材を育てるでしょう。
しかし、実際の採用現場では、「看護師資格があれば誰でもいい」「とにかくいい人を採用したい」といった曖昧な採用基準がまかり通っているのが現実です。これでは、採用できたとしても、「学校の成績は良かったのに、成果をあげてくれない」「思っていたような人材ではなかった」といったミスマッチを起こすでしょうし、人材が定着しない原因にもなります。
事業所側は、求める人材をできるだけ具体的にイメージすること、そして、新卒学生たちの資質だけでなく職業観までも見究めながら採用活動を行ってほしいと思います。さらに、職業人としての看護師を育成するという意識を強く持っていただき、患者さんや利用者の方に寄り添うことのできる真の医療者を育ててほしいと、これは私を含めた利用者の願いとして心にとめていただきたいと思います。
ところで、一般的にキャリアデザインを描くために必要なことは「将来の自己イメージ」であり、日々の仕事は常に通過点であることを認識することです。「なりたい自分」を目標としなければ、特に看護師のような専門職において成長することはできません。
そういう意味では、就職後のキャリアパス(経験を積む道筋)を明確に示す医療機関がもっと増えてほしいと思います。キャリアパスが示されている職場では、常に将来の自分を意識することができます。
看護師として将来どうなりたいのか具体的なイメージを持つことができ、さらに、そのためにはどのようなこと(経験、資格など)が必要なのかを常に考えることができるのです。
事業所としても向上心を持った看護師を雇用することができますので、キャリアパスの明確化は双方にとって利益が大きく、ぜひ取り組んでほしい職場改革のひとつです。