攻めの救急医療を目指す
2013年に着任した喜多村泰輔救命救急センター長。3年目を迎えて取り組みなどを聞いた。
◆救命救急センターの特徴
高知県内で救命救急センターを擁する病院は、近森病院、高知赤十字病院、そして当院の3つです。いずれも、位置的には、高知市内に集中していますので、いびつな形で配置されていると言えます。
当院の大きな特徴は、県と市の両方が関わった公的な病院であることです。当センターは県内唯一の「基幹災害拠点病院」でもありますので、救急や災害の研修などを請け負っている点も大きな特徴です。
昨年度は、救急患者を約1万3千人受け入れました。
病院前救護、いわゆる救急隊のサポートは重要です。高知県内には15の消防本部があり、救急救命士などが、現場の対応にあたります。まずは、現場で迅速かつ適切な対応をし、医療機関につないでもらうことが大事です。このため、救急隊の質を高めるための教育もしっかりやらなければなりません。
現在、毎月1回ですが、救急救命士との症例検討会を行っています。高知県の場合、一部ではありますが医療施設同士の通信ネットワークがあります。それぞれが近くにあるネットワーク利用施設に行けば、みんなが同じ場所に集まらなくとも検討会に参加できます。消防署管内で対応した症例を、みんなで共有することは大変意味のあることだと思っています。
◆攻めの救急医療を
「RAPID CAR(欧州型ドクターカー:ラピッドカー)」=写真があるのもこのセンターの特徴です。患者さんの搬送はできませんが、高知市内や周辺地域からの要請や、ドクターヘリ(医療専用ヘリコプター・略称ドクヘリ)が運航できない気象条件の際などに医師が乗って現場に駆け付けます。われわれ医師がいち早く現場に行き、救急隊と共に、現場で迅速な対応をするのが狙いです。病院の中で待つというより、攻めの救急医療という考え方を大事にしています。
ここは県内では唯一ドクヘリも運用しています。人口が少ない割に出動回数が多いことが特徴の一つでしょう。2015年度は、748回飛行しています。
ドクヘリと県の消防防災ヘリコプター(防災ヘリ)が担う役割が他の自治体とは違っていることが理由の一つです。他県では、転院搬送患者を防災ヘリで搬送する場合もありますが、高知県では患者搬送は原則としてドクヘリが行います。重複要請の時などは防災ヘリが補完的に医師同乗で患者を搬送しています。
地理的な特徴として険しい四国山脈があり、山での滑落や事故も多発しています。
このため、医師が防災ヘリからつり下げられて現場へ投入され、山奥の現場から治療を開始することもあります。
◆熊本地震、そして今後の災害に備えて
熊本地震では、当院もDMAT(災害時派遣医療チーム)を派遣しました。4月16日には、私もドクヘリで現地に、さらに後続の2チームは陸路で11時間かけて入り、患者さんの搬送や外来や救急の手伝いを手分けして行いました。
この期間中、四国にドクヘリがいない時間帯が出てしまい、緊急時とはいえ、今後の課題の一つかもしれません。
南海トラフ地震では、四国の中では、高知県の被害が最も大きいと予測されています。当院は、高知県の「基幹災害拠点病院」として指定されていますので、訓練や研修会を実施しながら、災害に備えています。
◆救急医の育成や人材確保のために
現在、県内には新専門医制度の救急専門医基幹病院(予定)が4つあり、当院にも3人の枠がありますが人材確保の見通しは非常に厳しいものがあります。そのような中で、若い医師の定着のためにも、オン、オフをきちんとつくる職場環境が大事だと考えます。
現在、センターの平均年齢は若く子育て中の女性もいます。家事を終えて、夜中に出勤するなどみんな頑張っています。
彼らが、せめて、週末は休めるような体制を作りたい。また、職場の良い雰囲気を作ることは私の重要な役割だと思っています。
高知県・高知市病院企業団立
高知医療センター
高知市池2125番地1
☎088・837・3000(代表)
http://www2.khsc.or.jp/