花と笑顔とおもてなしで勝負です
1917(大正6)年に創立され、来年100周年を迎える日立造船健康保険組合因島総合病院は、因島・上島・生口島の計4万人を主な医療圏としている。就任したばかりの橋本洋夫院長を訪ね、近況を聞いた。岡野芳和事務部長が同席した。
―4月1日に病院長に就任されました。職員の心をひとつにするには。
月並みではありますが、「花と笑顔とおもてなし」です。これで因島総合病院は勝負できると思っています。これを4月1日の朝に、みんなに集まってもらって宣言しました。
病院の正面入口を入ったところに花が生けてあります。病院に来られた方にも職員にも花がちらりと目に入る。こういうことは大切だと思います。職員の全員ではないにしても、何人かの胸には響いていると思います。
医療に関しては4月1日から、内科救急医療は3年半ぶりに、365日、夜の内科救急をしています。外科救急医療は、日曜日の夜以外、つまり平日と土曜日の夜に外科救急をしています。また5月より、訪問診療・訪問看護を拡充しています。さらに、当院の特徴として、血液透析とリウマチ診療、漢方医療について、いっそう研さんしていきます。
―因島の土地柄は。
岡野事務長は因島出身で、私は岡山から来てようやく12年目になります。でも、よく行く喫茶店の女性店主に「橋本さん、もうひとつやね、まだ因島の人になってない」と言われるんですよ。だからまだわかりませんね。しかし年商4億円のはっさくゼリーの発祥が因島で、その開発者の一人が市の職員だった岡野事務長だということは誇らしいことです。いろんな苦労が農家の方々やJAにあったそうですから、この地方の人はハッサクのようにあたたかくてやわらかいという感じでしょうか。(「ちょっと苦味もあって」と事務長)
―どうして医者になろうと。
理由は2つあります。小学校の時にテレビで、無医村の医者の連続ドラマがあり、それを見て直感で、医者になりたいと思ったんです。もう1つは、私の祖母が関節リウマチになりまして、さらに透析になって亡くなったんです。私が高校生の時のことで、病気に対して非常に腹が立ち、本気で医者を目指そうと思いました。2浪させてくれた父と母にはとても感謝しています。
これまで医者を続けてきて、高校生の時に祖母の病気に腹が立ったのと同じように、今の患者さんの家族も腹を立てられる。その気持ちはとてもよくわかります。でも病気に対してではなく、医師を腹立たしく思う人が最近は多いです。そこをどう受けとめられるか。その問いは永遠のテーマでしょうが、職員には、柔らかく接するようにお願いしています。
―研修医に助言があれば
難しい質問ですねえ...。私が若いころにある病院の院長室に呼ばれて、あるキーワードを教わりました。それが「医療はロマンと感動だ」。その時はよく飲み込めませんでしたが、この30年間でそれを感じることが何度かありました。それで続けられるんです。
だから医療者を目指している若い人には、「医者を本気でやっていると、ロマンと感動という、人智を超えたものに触れる瞬間がある。それを信じて進みなさい」と言いたいです。
―忙しい日々の中で緊張をほぐすには
まずは卓球です。大学で卓球部の副キャプテンでしたが、今でも月に2回やっています
それと、習字を習っています。先生は84歳の女性で、2時間の間で、1時間45分は互いにいろんなことを話して思いを吐き出し、最後の15分で1枚だけ書き、その時にすごく集中します。とてもいいガス抜きです。5月22日に尾道市で開催された市民公開講座「関節リウマチ―診療におけるウソホント」のディスカッションに私が登壇したのを聞きにきてくれたのはありがたいことでした。そして整体にも月に2回通っています。
卓球と習字と整体。これでどうにかやれている、という感じでしょうか。
―周辺の海がきれいですね
近くの上島にあるシーリゾート「フェスパ」は、瀬戸内でも最上級の自然を体験できます。そこの風呂がいいんですよ。今度ご家族と行かれてはどうですか。
日立造船健康保険組合 因島総合病院
広島県尾道市因島土生町2561番地
☎0845・22・2552(代表)
http://innoshima-hospital.jp/