4 月に病院長に就任「優しい病院になるために」
今年4月に中国中央病院の病院長に就任した上岡博氏。
今後の取り組みや医師としての歩みを聞いた。
■強みを生かして
当院は広島県東部地域の医療を担う基幹病院です。地域の医療ニーズに対応できる体制を整えていかなければなりませんが、それに加えてこれまでの得意分野を、さらに進化させる必要があると考えています。
血液内科では、10床の無菌室を備えて急性白血病などの治療に使用しています。造血幹細胞移植ができるのは県東部では当院のみです。
また県東部では、呼吸器、特に肺がんを専門にしている施設は少ないのですが、当院には肺がんの診断から外科治療、放射線治療、内科的治療まで全ての分野において専門家が数多く在籍しています。
このほか糖尿病、人工透析、周産期医療なども当院の強みです。
今後は、これらの特徴を伸ばしつつ、地域の基幹病院としての責任を果たしていきたいと思っています。
■分業も視野に
現在、医師の確保には日本全国どの病院も苦労していると思います。将来的には病院間で分業をしていく必要があるのかもしれません。
福山地区には、当院を含め福山市民病院、福山医療センター、日本鋼管福山病院という4つの基幹病院があります。これからは一つの病院で医療を完結させるというよりも各病院が得意分野を伸ばして地域全体で全ての疾患をカバーする、そんな意識の転換が求められているのではないでしょうか。
■風通しの良い職場に
「患者さんにも職員にも優しい病院」にするのが私のモットーです。院長は職員間の風通しが良く、互いの意見を忌憚(きたん)なく言い合える職場環境を整えていかなければならないと考えています。
院長室の扉はいつでも開けているので、職員には気軽に意見を言いに来てもらいたいと思っています。すべての職員に気軽に声をかけてもらえるような院長になるのが私の理想です。
当院は現在医師とメディカルスタッフがとても仲良く、和気あいあいとした雰囲気があり、とても働きやすい病院だと思います。超急性期病院のように忙しすぎないことも理由かもしれません。その結果でしょうか、当院は離職率がとても低いと思います。
私の目標は「患者さんにも職員にも優しい病院」ですが、先達のおかげで実はすでに優しい病院になっているのかもしれませんね。
■逃げずに向き合って
若い人には何事にも怖がらずに挑戦する姿勢を持ち続けてほしいと思います。経験を積むほど苦手な分野や専門外の領域から逃げてしまいがちですが、若いうちは逃げずに真正面からぶつかっていってほしいですね。
私は若い時、救急医療が大好きで、救急でいろんな疾患を診たいと思っていたものです。困っている患者さんを決して見捨てないという気概を持った若者を一人でも多く育てていきたいと思っています。
■医師としての歩み
岡山大学第二内科に入局したのは同科の平木教授の白血病の講義を受けたことがきっかけです。「白血病をこの世からなくすのが私の夢だ」と、とうとうと語られる先生の姿を見て、白血病治療に携わりたいと思い入局したのです。入局から最初の10年間は血液グループにいましたが、アメリカ留学から帰ってきた時より肺がん医療に携わることになりました。
肺がんの発症リスクにタバコが及ぼす影響は無視できません。私が医師になった当時は、私も含め多くの医師が喫煙者でしたが、現在ほとんどの病院は敷地内禁煙ですし、医師でタバコを吸う人は昔に比べて激減していると思います。
若いころは連日遅くまで仕事をしていました。少し早く終わると深夜の2時、3時ごろまでマージャンに興じることもありましたね。しない日も遅くまで仕事をしていましたが、深夜に帰宅して、家で2時間ぐらい寝て、朝は定時に来て仕事をすることもありました。上司や先輩がやっていたので、それに合わさざるを得なかったのも事実ですが、われわれの世代にはタフな人が多かったですね。今、振り返ると懐かしい思い出です。
■二足のわらじ
今月から外来診察と院長回診をしています。もちろん管理職もやりがいはありますが、患者さんと話すのはやはり楽しいですね。院長に就任した4月からずっとやりたいと言っていたことがようやくかないました。
公立学校共済組合 中国中央病院
広島県福山市御幸町大字上岩成148 番13
☎:084 ・970・2121(代表)
http://www.kouritu-cch.jp/