新築移転から1年、これからも地域のために
1956(昭和31)年、多気郡大台町に開設以来、公的医療機関として三重県奥伊勢地域の医療を支えてきた大台厚生病院。昨年4月、同町内に新築移転した同院の中井九太夫院長に話を聞いた。
―新築移転から1年、いかがですか。
移転前の病院は、1964(昭和39)年に建設されたもので、とても歴史がある建物でした。かなり老朽化が進んでいて、耐震診断の結果、建て替えが必要とされたのです。そのままでは医療機能を充実させることが困難なため、早急な対策を迫られていました。そこで、大台町と大紀町からの助成金を受けて、この場所に新築移転。昨年4月に開院することができました。
開院と同時に、電子カルテも導入したのですが、操作に不慣れなこともあり、しばらくは現場が混乱しました。大変な時期もありましたが、今では落ち着き、患者さんの数も増えてきました。
―貴院の特徴を教えてください。
当院では、救急を含めた、急性期から慢性期までの患者さんを幅広く積極的に受け入れています。近隣の医療機関や施設と連携しながら地域医療に取り組んでいます。
入院患者の割合をみると、70〜90代の方が7〜8割を占めています。この辺りは高齢の患者さんが多い地域ですから、在宅医療の支援として訪問看護、訪問診療などのニーズも高い。また、予防医療についても、広報誌などを通じて患者さんへの啓発活動に努めています。
加えて、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンなどの予防接種、健診、特に総合がん検診の受診率を高められるよう、これからも努力していきたいと思います。
透析治療にも力を入れています。この辺りで透析が受けられる施設は当院しかありません。
新築移転に伴い、2階に造った血液透析室は、柱がなく室内全体を見渡しやすくなっており、ベッドの間隔も十分空けるように設計しました。各ベッドには無料で視聴できるテレビを1台ずつ設置。透析時間を快適に過ごしてもらえるように配慮しています。当院の透析ベッド数は24床(うち個室2床)あり、現在62人の方が利用されています。
高齢の方の場合、治療を受けたり、入院が必要になっても、遠方へ出向くことは困難です。この先も、急性期、地域包括、慢性期の3つの医療で地域に貢献していきたいですね。
―人材の確保について、何か工夫されていることはありますか。
ありがたいことに、現在は人材に恵まれている状況です。町外からも当院での勤務を希望される方が多く、若いスタッフも増えてきました。今後は妊娠、出産、育児、介護などのために休暇を取得するケースも増えてくるでしょう。職員たちにできるだけ長く勤めてもらって、いい仕事をしてもらえるよう、しっかりサポートしていきたいと思います。
近ごろは、メンタルの健康面への細かな配慮が必要ですし、職員の教育にも注力しなければなりません。当院では、接遇やリスクマネジメントの研修、院内勉強会など、看護部長が中心となってやってくれています。私は診療で手がいっぱいなので、非常に助かっています。
―なぜ医師になろうと思われたのですか。
本当は血を見るのが苦手なんです。いまだに怖い(笑)。ただ、中学のころから理数系の勉強が好きだったので、漠然と工学部に進もうと考えていました。一方で、親戚に医者が多いこともあって、話を聞きに行くこともしょっちゅうでした。もしかすると、それがきっかけかもしれませんね。
高校3年の12月、親の薦めもあって医学部進学を決意し、現在に至っています。
自宅が伊勢市で通勤するには遠いため、平日は病院の近くに泊まります。単身赴任のようなものです。土曜日も午前中は診療がありますし、月に1回は訪問診療にも出かけています。休日は自宅に戻りますが、いろいろな講演会などを聴きに行くことが多いですね。医者である限り、生涯学び続けたいと思います。
―若い医療人にメッセージをお願いします。
実際に医師になってみて思うのは、臨床は人間を診る仕事だということ。勉強すること、技術を磨くことはもちろん大事ですが、何より大事なのは、コミュニケーション能力だと思います。
私もあまり得意な方ではないのですが、まずは患者さんと信頼関係を結ぶことを心掛けてほしいですね。
三重県厚生農業協同組合連合会
大台厚生病院
三重県多気郡大台町上三瀬663-2
☎0598・82・1313(代表)
http://www.miekosei.or.jp/5_okh/