医療法人有心会 大幸砂田橋クリニック 前田憲志 院長

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腎疾患の道を歩んで50年

1965 名古屋大学医学部卒業、同学附属病院分院内科副手入局1973 同附属病院内科助手 1979 同附属病院分院検査部助教授 1991 同附属病院内科教授 1992 同附属病院分院長 1996 同附属病院在宅管理医療部教授 2002 同学名誉教授、大幸砂田橋クリニック院長

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―専門の腎疾患について教えてください。

 私が大学の医局に入局した当時は、腎不全で入院されている方が多く、典型的な尿毒症によって亡くなる方が多い時代でした。その状況を改善したいと思い、大学卒業直後から透析療法の開発・改良に着手し、臨床研究を重ねてきました。

 当院を開業した2002年ごろは、糖尿病性腎症の患者さんが一気に増えてきた時期でした。この糖尿病性腎症の保存期腎不全(透析を受けなくてもいい時期)の治療が当面の課題でした。

 加えて、透析患者の寿命が日本人の平均寿命に比べて著しく短かったため、それも同時に改善しなければなりませんでした。そこで、透析センターを運営する一方、保存期腎不全の治療も始めたのです。また、在宅医療についても、同時期に始めました。

 在宅透析を始めるきっかけとなったのは、ある患者さんです。私が名古屋大学医学部附属病院分院で透析治療を始めた1968年当時、透析を受けられる施設は全国的にまだ少なく、新潟、東京に一部あるだけで、関西地方ではほとんど行われていませんでした。

 そんな中、大阪から名古屋までタクシーで通院される患者さんがいました。体内に水がたまって非常に苦しがられていた。治療を受けると体調は良くなるけれど、毎回タクシーで通うとなると継続的な治療は難しくなります。そこで、在宅血液透析の機械を購入してもらい、一時的に名古屋大学医学部附属病院に入院。本人と家族に機械の取り扱い方法をしっかり教えてから大阪の自宅に帰しました。

 この方以外にも、仕事の関係から、透析センターに通うことが困難な方は多い。愛知県三河地区には透析センターがあまりないため、仕事を終えて名古屋市内まで来て、透析をして、翌朝には出勤しなければならない状況でした。在宅透析の重要性を強く感じています。

―24時間蓄尿検査を行われていますね。

 透析治療の重要な指標となるのが、「保冷24時間蓄尿検査」の数値です。この検査は、まだ広く実施されていませんが、尿をきちんと調べると、体の状態を正確に知ることができ、病状のコントロールも可能です。

 当院ではまず、24時間蓄尿器というのを作ってデータを集めることから始めました。患者さんたちに協力してもらい、尿を集めて検査センターへ出し、戻ってきたデータをもとにさまざまな計算をしました。

 「GFR(糸球体ろ過量)」、「クレアニチン・クリアランス(血液浄化能力)」、さらには食塩・タンパク質・リン・カルシウム・カリウムをどれだけ摂取したか、筋肉をどれだけ動かしたのかまでわかります。これによって、より適切な治療を行うことができます。

 しかし、この計算は大変な仕事量でしたので、日本腎臓財団、日本透析医会などに研究費を申請し、自動計算ができるソフトを作りました。

―糖尿病性腎症の治療について教えてください。

 10年ほど前、大きな病院でも「治療は無理」といわれた糖尿病性腎症の患者さんが来院されました。尿を検査すると、タンパク質が非常に多く含まれていて、腎不全発症前より体重が20㌔以上も増加し、歩くことも困難な状態でした。

 糖尿病性腎症が少しずつ増えていた頃でしたが、症状を抑えたり、病気を治したりする方法ははっきりとはわかっていませんでした。治療法について迷っていたとき、アメリカで発表された論文を読みました。

 それは、一型糖尿病患者の血圧・血糖をきちんとコントロールすれば、5年経つと腎臓の状態が良くなり、尿タンパクも減る。10年で腎臓の組織もずいぶん良くなったというものでした。

 それなら日本でもできるかもしれないと思い、まずは徹底して糖尿病を治療することに専念したのです。

 すると、治療前は4・68㌘と、基準値を大幅に上回っていた尿タンパクが10年間の治療によって、数値は0㌘になりました。腎機能は少し落ちましたが、一定の数値を維持することができ、透析に至ることもありませんでした。

 腎疾患には、リン・カルシウムの尿中排泄量が関係があることもわかってきています。骨を丈夫にするため薬を服用している高齢者に腎臓が悪くなるケースも増えているのです。さらに、高齢化とともに腎機能が衰えてしまう「腎硬化症」の問題など、まだまだ多くの課題が残っています。

 腎臓というのは、非常に複雑な構造の臓器です。一度悪くなるともとに戻らない。啓発キャンペーンなどを通して、早期発見・早期治療を呼びかけていきたいですね。

―在宅医療についてはいかがですか。

 名古屋市医師会は16区で全面的に地域包括ケアシステムを施行していますし、当院でも在宅医療に取り組んでいます。しかし、遠方へ出向いての診療には困難なことも多い。私は、在宅が中心になっていくことが果たして医療の最終目標なのか、疑問でもあります。在宅医療にならなくて済むように、「ピンピンコロリ」を目指すべきではないかと思うのです。

 当院の外来ではそこに力を入れています。まずは、病院に歩いて来てもらうために、骨・筋肉・脳を活性化するための治療や指導を徹底し、成果を上げています。

 元気な高齢者が増えれば、医療費もかからないばかりか、働いてもらうことで社会に還元することもできる。

 今後は、元気な高齢者同士でグループができてくればいいなと思っています。ただお茶を飲むだけでなく、社会的な存在感とやりがいを持ったグループの活躍が超高齢社会を生き抜くカギになると思っています。

医療法人有心会大幸砂田橋クリニック
名古屋市東区大幸4 丁目18 番24
☎052・711・8889(代表)
http://www.daiko-sunadabashi.jp


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