絶え間なく前進を
明和病院は1945(昭和20)年に設立された地域密着型の総合病院。大阪と神戸の間に位置する西宮市にあり、甲子園球場までは徒歩で約10分。
山中若樹理事長・院長に病院の取り組みについて聞いた。
◆明和の5S
私たち明和病院は「High performanceHospital」を目指しています。当院の基本理念は「小回りのきく親切(shinsetsu) で信頼(shinrai) される病院」(2S)です。それにスピード( s p e e d ) 、周知( s y u u c h i ) 、遂行(suikou) の3つのSを加え、明和の5Sと呼んでいます。
この地域には大規模な急性期病院がたくさんあり、その規模、診療範囲にわれわれは太刀打ちできません。
しかし、小回りという意味では、大規模病院を上回ることが可能です。私たちは「小回りのきく親切で信頼される病院」という点において阪神地域でのトップを目指し、職員一同、目標に向かって日々の業務に励んでいます。
◆ERと総合診療のさらなる強化を
当院にはERがあるので、今後は高齢者救急にも力を入れていくつもりです。ERは北米型で、365日24時間の救急医療に対応しています。
よく耳にするERの課題としてコミュニケーション不足でERの機能と各診療科の機能が結びつきにくいことが上げられます。しかし、当院では、みなさんが有機的かつスムーズに動いてくれており、ありがたいですね。
兵庫県西宮市は全国でも数少ない人口増地域ですが、高齢化は確実に進行しています。専門に特化した臓器別の診療だけでは、高齢者社会における地域の医療ニーズには応えられませんので、ベースを広くした総合診療を強化していく必要もあると考えています。
ERや総合診療をさらに充実させていくことが、われわれ地域密着型の一般病院が目指すべき将来像です。
◆高度ながん診療体制
高齢化の進行に伴い、がんの罹患(りかん)者、死亡者が増加しています。がん診療に力を入れていきたいとの思いから、2014年に明和キャンサークリニックを開設しました。その中で高精度放射線治療とPET‐CTによる診断を行っています。
◆現状維持は後退
私は現状維持は後退にほかならないと考えています。「今まではこうしていました」という前例主義では、組織の停滞を招きます。
新しい方法が取り入れられないということは、組織において、よく見られますが、私はそれでは前進につながらないと思っているのです。
◆医療サービスの改善のために
一昨年の夏に医療サービス改善・向上プロジェクトという取り組みを始め、今年の春に委員会を設立しました。
この取り組みは、プロジェクトメンバーが入院・外来患者および家族からの改善事項の届け出を整理し、医療事故を未然に防ぐとともに苦情・クレームなど病院の評判を下げる事由を減らすことを目的としています。
夜間、ドクターコールをしても当直医が出ない、患者さんから診察要望があるのに口頭指示のみで現場に来ない、などの問題が現場では山積しているのです。
患者・家族対応上の問題事例と苦情、患者アンケート、トラブル報告書、師長からの報告事例、外来アンケートなどから収集します。問題がある事案に関しては現場責任者や当事者に照会し、回答をもらいますし、システム上の問題であれば、システム改善につなげ、当事者に問題があれば、各責任者を指導して、改善・指導内容を報告してもらうことにしています。
フォローアップとして3カ月後にその報告の検証を行います。フォローした時点で改善が見られなかった場合、TQM室での内部監査の項目に追加し、単なる報告だけで終わることなく、徹底的な問題の改善に努めています。
◆医師であるまえに常識人であれ
医師とはヒトを相手にする職業なので、ヒトとの意思疎通がものをいいます。医師と患者の動線は短いものです。これほど容易にヒトから感謝されたり、逆に恨まれたりする職業は少ないと思います。
「神の手」を持つような医師であったとしても接遇は技術のひとつです。出身高校の偏差値が高い医師が医師としての適性があるかどうかは別の話です。医師である前に患者に寄り添えるヒトでなければなりません。
一流とはハートがあり、技術があり、知恵があり、実行力を伴っていることです。若い医師には医学以外にも文学、歴史など幅広く教養を身につけて欲しいですね。
医療法人 明和病院
兵庫県西宮市上鳴尾町4 番31 号
☎0798・47・1767(代表)
http://www.meiwa-hospital.com