問︓ 働くのに疲れました。平均寿命まで、あと30 年も生きるのかと思うとうんざりします。(40 代男性/会社員)
内藤嘉之・高槻病院院長=私立甲陽学院高校卒業 京都大学医学部卒業 京都大学医学部麻酔科学教室研修医、カリフォルニア州DNAX 研究所、神戸市立中央市民病院などを経て、2015 年から現職。
答︓ 人類の歴史上、働くことに喜びを感じ始めたのなんて、ごく最近のことです。ほとんどの期間、人類にとって、働く・生きることは苦痛でしかなかった。だから、お経には「仏さんの国は食べる必要がない素晴らしい場所だ」と書いてあり、人々は「死」を肯定的に捉えながら、ある意味では待ちわびていたかもしれない。これまで、宗教改革や共産主義の誕生などで生き方や労働の捉え方は流転してきました。労働を自己実現だと考えるのなら、「生きる」ことの意味も考え直すべきだろうと思います。充実した生の終点としての死をどう捉えるのか。宗教に答えはありません。生きるとは、その答えを探る営み自体を指すのでは。