専門性を追求し、高度な医療の提供を
◆病院の成り立ち
当院は1978(昭和53)年、長崎市宝町にある井上病院の分院として開業しました。設立当初は、いわゆる老人病院でしたが、前院長の辻畑光宏先生が院長に就任した1994年、神経内科をメインにした病院へと生まれ変わりました。
20年以上前に神経内科専門の病院をつくろうと決意した辻畑先生は先見の明があると思いますし、それに同意した井上満治前理事長も大英断だったと思いますね。
現在では10人の神経内科医が在籍しています。
◆神経内科治療の一環としてのリハビリ
私たちは、脳梗塞や脳出血などの「脳血管障害」、パーキンソン病などの「各種神経難病」、高齢化社会の進行とともに増加している「認知症」などの診断と治療を行い、治療の一環としてのリハビリテーションにも力を入れています。
治療とリハビリを切り離して考えている医療機関が少なからずありますが、当院で行っているのは、あくまでも神経内科治療の一環としてのリハビリです。
現在リハビリテーションのスタッフは130人。また、神経内科医2人がリハビリ専門医(指導医)として活動しています。
さらなる質の向上のために促通反復療法を考案した川平先端リハラボ(東京都渋谷区)の川平和美先生に毎月、当院に来ていただき、スタッフの指導をしていただいています。
また、ロボットスーツHALなどの最新機器を用いたリハビリを行うとともに、産業医科大学(福岡県北九州市)や鹿児島大学(鹿児島市)のリハビリテーション科と協力して開発治験などを行っています。
リハビリで治療していく上での難点は効果がでても改善がみられても時間の経過なのか、薬が効いたからなのか、リハビリが効いたのかの判断がつけにくいことです。当院では、しっかりとデータを蓄積して科学的根拠に基づいたリハビリを推進しています。
パーキンソン病では、リハビリに真面目に取り組んでいる人は、1年後でも症状が悪化しないというデータが出ているので、近いうちに学会発表をする予定です。
◆パーキンソン病体操
患者さんが自宅でも継続的にリハビリができるようにするために、当院のスタッフが「パーキンソン病体操」をつくり、DVDも制作しました。
立位編、座位編2編、臥位編、嚥下(えんげ)・発声位編、うつぶせ編の計6編(1プログラム12分)を収録。患者さんや要望があった他の病院などに、これまで1000本以上配布しました。
先月からは当院のホームページからダウンロードができるようにしたので、より多くの人がパーキンソン病体操に取り組んでくれたらうれしいですね。
◆パーキンソン病の基幹病院としての役割
長崎市医療圏におけるパーキンソン病患者さんの6割超が当院を受診していますし、離島や他県からも多くの患者さんが来られます。ALS(筋萎縮性側索硬化症)では長崎県内の8割以上の患者さんを診ています。
また、診療とともにパーキンソン病の基幹病院として新薬の治験や研究なども行っています。
◆認知症治療
認知症にはアルツハイマー型、脳血管型、レビー小体型、前頭側頭型などがあり、それぞれ効果がある治療法が異なるため正確な診断が求められます。当院では臨床心理士2人による認知症検査やMRI、RIなどを使った診断、治療を行います。
予約制の認知症専門外来を設置していますが、現在は3カ月待ちの状態です。世の中の認知症に対する関心、理解が深まってきた証拠ではないでしょうか。
◆臨床能力の維持・向上のために
病院の臨床能力を維持し続けるためには、臨床研究をしっかりとやらなければなりません。学会参加者には国内、海外を問わず旅費、宿泊費を全額補助しています。昨年は旅費研究費で、5000万円以上支出したのではないでしょうか。
しかし、それを惜しんでいるようでは臨床能力を維持できません。何か新しいものはないか、常にアンテナを張り、それを論文にして発表することが重要なのです。
職員の希望で、認知症研究のための機械「NIRS脳計測装置」を購入しました。脳機能を計測する機械で対象患者さんの研究とデータの蓄積を行います。すぐに病院の収益につながるものではありませんが、研究への投資は惜しみません。
当院のリハビリスタッフは学会参加率が高く、多数の論文発表を行っています。また、毎年、大学院への進学希望者がいるので病院から奨学金を出しています。
優秀なリハビリスタッフが多いので、これまで大学などへの転職も多くありました。本人のためになるのであればと、快く送り出すようにしています。移ってから鹿児島大学の教授、長崎大学の助教授や講師になった人もいます。そのほかの私立大学でも教授になった人がたくさんいます。
教育に力を入れているので、その点に魅力を感じた志の高い若者が毎年、数多く来てくれるという、いい循環になっていますね。
◆女性医師の登用
当院は女性医師が多いのが特徴で、副院長をはじめ、現在常勤医師17人中8人の女性医師が活躍しています。産休後、半年弱で復帰してくれた女性医師もおられました。
子どもが大学に入学するまでは当直を免除し、学校の行事などがある場合は、休みを取って参加できるように配慮しているので、女性も長く勤めてくれていますね。
4年続けて長崎県から女性医師就労支援の補助金をいただきました。当直免除や当直医を別に雇う、産休中にも研修が受けられるなどの取り組みが評価された結果だと思います。
女性医師に自分だけが特別扱いされて申し訳ないと感じさせるようではいけません。子育て中は働き方が違うのが当たり前だという風土をつくるのが重要なのではないでしょうか。当院は女性医師が働きやすい環境が病院の文化として根付いています。その証拠にこれまで女性医師が7人以下になったことはないんですよ。
社会医療法人春回会 長崎北病院
長崎県西彼杵郡時津町元村郷800
☎095・886・8700(代表)
http://www.shunkaikai.jp/kita/