整備された地域連携機能で「市民のための病院」を実現
先進の地域連携を実現
地域連携については、大きく「前方」と「後方」の2種類に分けて考えています(図参照)。当センターの特徴としては、前方連携で紹介された患者さんの急性期医療を行うと同時に、急性期リハビリテーションを実施、充実させていることがあげられるでしょう。すなわち、センターでの入院期間をできるだけ短くして、あとは連携病院にバトンタッチ(後方連携)しようということで、地域連携のあり方を先取りしてきたともいえるでしょう。
手術件数も非常に多く、年間1万2000件を超えています。反面、平均在院日数は約10・6日です。つまり、退院して回復期病院に移っていただくか、あるいは手術が終わった次の日くらいからリハビリを開始して短い期間で体力を回復してもらい、自宅への復帰率を維持しようということなのです。
こういった体制は地域医療構想の考え方ができる以前から実施していました。最大の理由としては、ベッド数に対して治療を希望される患者さんが非常に多いという事情があります。
急患は年間3万3000人程度受け入れていますし、退院までに時間をかけていたら治療が必要な患者さんを診ることができなくなるわけです。こうしたやむをえない背景から、まずは後方連携病院がスタートしました。もっとも、連携病院に送ったら「あとは知らん。あとは頼む」ということではありません。送る段階で通常の退院時よりも強い回復力をつけてもらおうと、急性期のリハビリを始めました。
手術したばかりの方をいきなり受け入れるのは難しいし、「点滴が必要だ」「自力で歩けないから補助が必要だ」......というのは困るという苦情もありました。随時、要望に応える形での対策が積み重なって連携室が充実し、早期退院を実現できるようになりました。
さらに、誤解していただきたくないのは、「(平均在院日数の)10日間経ったから退院させましょう」という退院支援ではないということです。
まず、入院したらすぐに退院までのタイムスケジュールを患者さんと共有します。そのなかで、退院支援チームが患者さんのさまざまな要望を聞き取り、自宅の近くの病院がいいのか、専門科を備えた病院がいいのかなどを一緒に考えていきます。患者さんとの話だけにとどまらず、送り出す先の病院とのやりとりもありますので、片手間でできる業務ではありません。
もっとも、市民のみなさんの中には、入院について「ゆっくり療養して、完治したら歩いて自宅に帰る」ものだ、という考え方も根強かったため、当初は「この病院はすぐに患者を追い出す」というクレームもいただきました。
当センターの使命として、神戸市民の要望にはできるだけ応えなければならないという命題の解決があります。そのためには早く空床を作って次の急性期治療の患者さんを受け入れる必要があるという趣旨をていねいに説明していくしかなく、パブリックなあらゆる機会を使ってコメントを出してきました。
救急体制と前方連携
神戸市中央区港島南町2丁目1-1
☎ 078(302)4321 http://chuo.kcho.jp
救急体制についても、他の科との連携が緊密であるところは強みだと思います。救急で診ていて手に負えない場合には、該当科の当直医がいち早く治療に参加する、あるいは救急ではなく専門科が引き受けて治療するなど、臨機応変な対応が徹底できている。緊急手術も非常に多くて、毎日4、5例、年間1500件くらいは実施しています。
前方連携については、すでにFAX予約を始めています。通常はかかりつけ医の先生から紹介状をいただくのですが、じつはこれの処理に非常に時間がかかるのですね。
患者さんの待ち時間も長くなりますので、病院や診療所からFAXで予約してもらったら、必要な手続きはすべてこちらで処理するというシステムを整えました。呼び出し端末も導入していますが、これを使うと外来受付から診療までがスムーズに進みます。
FAX予約の件数は、昨年度は1万3000件、1日につき約65件が該当します。初期の目的は待ち時間を短くしようということでしたが、新患のFAX予約が多くなったこともあって、紹介状のない初診の方について最低5000円を徴収することになった改定についても、あまり問題になっていません。
地域連携の充実も、待ち時間の短縮も、すべては、市民のための病院であることを貫徹しようということなのです。