「てんかんへの理解を深めてほしい」
徳島大学病院(徳島市蔵本町)の徳島大学日亜メディカルホールで「てんかん市民公開講座2016 てんかんを知ろう」が行われ、72人の参加者が集まった。
てんかんとは大脳の神経細胞が過剰に興奮するために発作を起こす疾患。意識がなくなり全身のけいれんを起こす場合や数秒だけ意識を失うものなど、発作のタイプはさまざま。タイプにより使用する抗てんかん薬が異なるため慎重な診断が求められる。
てんかんに対する世の中の理解は十分とはいえず、根強い誤解や偏見が存在する。市民公開講座を通じて一般市民に正しい知識を身につけてもらい病気への理解を深めてほしいとの願いで開催された今講座。
司会を徳島大学保健学科、子と親のこころ診療室長の森健治教授。講師を徳島大学脳神経外科の多田恵曜(よしてる)助教、同藤原敏孝医員、同大学小児科の東田好広助教の3人が務めた。
主催は徳島大学病院。後援は日本てんかん協会徳島県支部、ユーシービージャパン株式会社。
■成人てんかんの診断と治療
開会のあいさつを徳島大学病院病院長で脳神経外科の永廣信治教授が行った。
永廣教授は「てんかんとは脳疾患の1つです。近年、てんかん患者さんによる自動車事故が社会問題化しているが、参加者のみなさんには、この市民公開講座で正しい知識を得て、疾患への理解を深めてもらいたい」と話した。
多田助教は「成人てんかんの診断と治療」について講演し、てんかんの原因や対処方法、治療法などについて説明。
「てんかんは適切に診断し、薬物治療を行えば発作を70〜80%の人でコントロールすることが可能」とし、「難治性てんかんに対してはビデオ脳波モニタリングや画像検査を行い、手術による治療も可能だ」と述べた。
また、徳島大学では複数の診療科が集まってカンファレンスを行い治療方針を決定していると紹介した。
■てんかんと運転
藤原医員は「てんかんと運転」について講演した。
近年、てんかんが原因だと思われる交通事故が続発。それに伴い、2014年5月に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が施行。翌月には改正道路交通法が施行され、一定の病気などについて運転の適否が定められた。
藤原医員は新法制定と法改正によって変わった点や、てんかん患者の運転免許に関する現状を説明した。
てんかん患者が運転をするためには「現状では、少なくとも2年間は覚醒中に意識や運動が障害される発作が起きていないことが必要」だと述べ、自分が運転してもいいのかわからない場合は、主治医と相談することが必要だとした。
藤原医員は講演の最後に「『てんかん』であるから、免許の取得や更新に制限が課せられているわけではない。自動車などの運転に適さない症状のある人が運転しないようにすることで、痛ましい事故の発生を減らすことが目的」と述べ、安全に運転するという意義を医師、患者、そして社会全体が考え続けていくことが大切だと強調した。
■小児てんかんの診断と治療
「小児てんかんの診断と治療」では東田助教が小児てんかんの発作型分類を患者の発作時の動画を用いて説明。「発作型を判定し、薬物治療を決定するために、患者さんの発作の様子をよく観察することが重要です」と語った。
また、てんかん発作を誘発する因子や注意点、学校生活を送るために必要なことや発作時の対応についても説明した。