徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野 西岡安彦 教授

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

新たな医療創生に貢献する講座に

■経歴/徳島県立脇町高校卒業 1988 徳島大学医学部医学科卒業 同 同大学同学部附属病院医員(第3内科) 1993 同大学大学院医学研究科博士課程修了 1995 同大学同学部助手 1996 米国ピッツバーグ大学外科学・分子遺伝学・生化学部門研究員1999 徳島大学医学部講師 2007 同大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(分子制御内科学分野)准教授 2008 米国テキサス大学M.D.アンダーソン癌センター癌生物学部門客員准教授2011 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(呼吸器・膠原病内科学分野)教授 2014 徳島大学病院病院長補佐(併任) 2015同大学大学院医歯薬学研究部(呼吸器・膠原病内科学分野)教授

c19-1-1.jpg

―教授になられて5年目ですね。

 この教室は1971(昭和46)年に第3内科として開設され、今年45年目を迎えました。私は当講座の17期生でもあります。5年目を迎えた今年度は区切りの年と考え、大きな講演会など、例年とは違った企画も4月下旬に行いました。

ー教室の特徴は。

 呼吸器疾患とリウマチ膠原病疾患を対象にしています。いずれも患者さんが多く、疾患も幅広い。例えば、呼吸器疾患の場合は、感染症やがん、そしてアレルギーといった領域があり、さらに、それぞれの領域に多様な疾患があります。

 個々の領域で高いレベルの診療と研究ができるように教育や指導を行うのが、この講座の特徴のひとつです。偏らず幅広く経験を積み重ねることで、総合力の上に個性ある専門力を養うことを目指しています。

ーご自身の研究内容と、最近のトピックは。

 私は入局後、初めの10年は肺のがん免疫の研究を中心に行い、その後の10年は間質性肺炎の研究を主に行いました。一人の研究者が2つの違う領域の研究に同時並行で取り組むことはめずらしいことで、大変ですが自分はこのままのスタイルで行きたいと思い、現在まで続けてきました。

 がんは多様な能力を持っていますので、効き目のある薬であっても生き延び、薬がだんだん効かなくなるのが残念な点です。しかし、逆にいうと耐性を克服すれば、効き続けるということでもあります。そこでアバスチン(中外製薬)の耐性のメカニズムの解明についての研究を講座で進め、論文をまとめたところ、昨年10月にイギリスの総合科学雑誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に掲載されました。

 われわれの教室オリジナルの研究が「ネイチャー系ジャーナル」に発表できたことは医局で初めてのことであり、大変うれしく思いました。

 実は、このメカニズムの解明において私が注目したのは、間質性肺炎で研究をしていた線維細胞なのです。がんの耐性について研究をしている研究者はまだあまり注目していない細胞です。ですから、2つの研究が相互に生かされた結果としても、大変うれしいものでした。

ー臨床面で力を入れていることは。

 1点目は近隣の病院、特に徳島県立中央病院との連携の強化です。徳島大学病院は徳島県立中央病院と隣接し、3階は廊下でつながっています。

 2つの公的病院がこのような形となっているのは全国でも珍しいようです。せっかくの立地条件をより有効に生かすために、今年4月から、当科と県立中央病院の呼吸器内科では週1回の合同カンファレンスを行うことにしました。

 大学病院は高度医療、県立病院は救急医療と、得意な役割が違うので、互いに補い合うことができ、日ごろから顔を合わせることで人的交流もスムーズになっていくことを期待しています。

 また、病床数は当院が696床、県立中央病院が460床、合計で1156床。これは中四国でも最大規模の病院に匹敵する病床数になります。2病院合わせれば手掛けられる症例数も多くなり、治験や医師主導臨床試験などを通して積極的に新しい医療の開発に貢献できると思います。

 2点目は、地域の医師会など先生方との連携です。例えば徳島市医師会の先生方と連携し、慢性閉塞肺疾患(COPD)の検診事業を始めたことが挙げられます。

 このCOPDは、患者数が増えているだけでなく、COPDであるにも関わらず受診していない患者が多く、潜在的な患者は全国に500万人もいると言われ、大きな社会問題となっています。

 2014年に定められた厚生労働省の健康日本21の第二次の方針では重点疾患にもなっていますが、まだまだ疾患としての認知度が低く、自覚症状も少ないので、受診に結びつかないのです。

 しかも、残念なことですが、徳島県のCOPDの死亡率(人口10万人あたり)は全国ワースト1位(2015年)です。

そこで当講座では、3年前から徳島市の医師会と連携し、県の肺がん検診の際に、COPDのリスクがある人を見つけ、受診を勧めています。

 まだまだ受診には結びついていないのが実情ですが、毎年工夫を凝らし、今年は市民公開講座などの場で、呼吸機能検査(スパイロメタリー)を実施しリスクのある患者を見つけ、より多く受診につなげたいと思います。

ー今後目指すものは。

 大学病院ですから、教室オリジナルの基礎研究を臨床の場に還元し、疾患の診断・治療に貢献できるような成果を目指しています。

 しかし、基礎研究の段階で明確な結果が出ていたものでも、臨床応用に近づけば近づくほど、結果を導き出すことは難しくなります。ですが、そのステップを超えればゴールは見えてくるはずです。研究者として挑戦すべきひとつの段階だととらえ、進めていこうと思っています。

 現在、地方大学は、慢性的なマンパワー不足の状態にあり、研究をしっかりやるのが難しい状況にあることは否めません。

 しかし、大切なことは、医局員すべてがモチベーションを保って活躍できる環境を作ることだと考えています。そのような環境であれば、個々に最大限の力を発揮すると同時に、大きな「和」の力を引き出すことができるのではないかと考えています。最終的にはたくさんの先生が「共感」を持って他県からも集っていただけるような教室にしたいと思っています。

 そして、一人でも多くの臨床科学者(フィジシャン・サイエンティスト)を育て、新しい医療の創生に貢献できる講座を目指したいと思っています。

徳島大学医学部 徳島市蔵本町3 丁目18-15
☎088-633-9116(代表) http://www.tokushima-u.ac.jp/med


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る