「男性」看護師の場合
男性看護師が、看護専門職として能力を発揮するために必要な職場環境とは、どのようなものでしょうか。
厚生労働省によると、男性看護師は、2012年の段階で約6万3000人が登録されています(平成24年度衛生行政報告例)。
2002年に、看護婦(女性)、看護士(男性)という名称を「看護師」に統一してから約10年間で、男性看護師の就業者数は約2・4倍に大きく増加しました。それまで、男性看護師は精神科や手術室といった限定的な領域で多くみられましたが、就業者数の増加に伴い、一般病棟で働く割合も高くなっています。一方で、看護師全体の約94%が女性であり、男性看護師は依然少数派である状況に変化はありません。
看護職=女性というイメージはいまだに強いものがあります。なかでも、女性の患者から、羞恥心を伴うケアについて拒否された経験をもつ男性看護師は多く、やりにくさを感じることもあるようです。これは、患者の気持ちも理解できますので、まずは事業所としての配慮が必要でしょう。
また、男性看護師が働くうえで注意しなければばならないのは、勤務先の同僚や上司、後輩にいたるまで一人も男性看護師がいないことさえありうるということです。
生命を預かるという重責に加え、夜勤や当直が当たり前というハードな勤務環境。女性同士なら気軽に相談できることが男性であるがゆえに話せなかったり、理解してもらえなかったりということが続くと、悩みやストレスを溜め込んでしまいがちです。
これまでは、「看護職は女性の仕事」という前提をもとにして、事業所内で仕事が組み立てられ、あるいは役割が与えられていました。まずは、男性がいる環境においても、そういった「当たり前」が本当に当たり前なのか、見直すことが必要です。
業務を見直す際には、「業務に人を合わせる」ことを防ぐためにも、「これまでこのようにしてきた」「こうでなければならない」といった視点は排除すべきです。そしてその業務は誰のために、なぜあるのか。常に疑問をもって、見直していく必要があります。
どのような業務でもいえることですが、仕事が属人的になってしまうと、誰かに業務が集中してしまったり、特定の誰かにしかできない業務ができてしまいます。一時的にはそれで支障はきたしませんが、結局、事業所全体でみたときに業務の品質を保つことができなくなります。
仕事を特定個人の能力や性別に依拠させるのではなく、それぞれの業務に必要なスキルといった明確な基準を設定することで、人材の配置が説得力を持ちますし、それぞれの人材の目標が具体的になってくるでしょう。
男性看護師、女性看護師は、それぞれに強みを持っています。医療従事者として、それぞれの特徴をどのような場面で、どのようにいかすことができるのか。そこに、やりがいや、仕事に取り組む動機=モチベーションが生まれてきます。
モチベーションが生まれれば、互いに仕事の上で助け合うことができ、より働きやすい職場環境を作ることにもつながります。
事業所が取り組むべきことは、業務に紐づけされ、職員にもわかりやすい人事制度の確立です。特に人事評価制度の確立は人事制度の核になります。
看護技術はもとより、どのような人物がその業務に適しているのか、どのような人材を必要としているのか。そして、それをどのように評価をするのか。
看護に携わる専門職として、これからどのようなスキルを身につけていくべきなのか。自己の成長すべき目標をもつことは仕事のやりがいにつながります。これは、男性看護師、女性看護師にかかわらずいえることでしょう。やりがいをもって仕事に取り組める環境。結局は、それがよい職場環境ではないでしょうか。