病める人々の為に医の心、人の心を求めつづけたい
―病院の運営に携わって2年がたちました。
当グループは岐阜市東部に位置する、医療と介護のケアミックス型の法人です。1984(昭和59)年に、父が開業し、2013(平成25)年に私が大学から戻り、理事長に就任いたしました。
着任直後は、大学病院との違いをさまざまな面で感じました。私たちの病院では、専門外だから診ないというわけにはいきません。また、大学病院とは異なり、高齢な患者さんが多いため、高度な医療が適応にならない、合併症が多く繊細な治療が必要なことが多いなどの特徴があります。今は、当院ならではの柔軟な対応で、大きな病院にはできない、温かみのある医療が提供できるという良さもあるのだと感じています。
当院の理念は、父が考えた言葉で、「生命の尊さを知る者は幸せである。ここに、病める人々の為に医の心、人の心を求めつづけたい」というものです。
最後の「求めつづけたい」という表現でもわかるように、医の心、人の心を深く理解することは大変難しいものです。この創業の原点を大事にしながら「時代に合わせて変化する」ということを自身のテーマにしています。
―病院の建物が大変個性的です。どのような思いが込められていますか。
父は若い頃、アメリカ・ミネソタ州のメイヨークリニックに留学をいたしました。
同病院は、早くからチーム医療を取り入れて質の高い医療を提供することで知られ、全米中から患者が集まることで有名です。このため、医師たちは皆、誇りを持って働いていたようです。父は同院の運営に大変感銘を受け、同院の建物のイメージをこの地で作ろうとしたのでしょう。
―新たな取り組みは。
私は、九州大学の神経内科で脳血管障害、パーキンソン病など神経疾患の研究に携わっていました。当院でも、高齢化に伴って増加する認知症、神経難病などをきちんと診る体制を整えたいと考え、1年ほど前に障害者病棟を作りました。併せて、神経難病の患者さんにリハビリを提供したいと思います。
また、順天堂大学大学院認知症診断・予防・治療学講座客員教授である田平武先生を招き、認知症診断・予防・治療センターを開設、もの忘れ外来もスタートしました。
さらに、岐阜県下では最大規模の100床を有する回復期リハ病床を開設、セラピスト70人体制で365日、リハビリを提供できるようにいたしました。
神経内科が中心となる病院は、大変珍しいと思います。神経内科に興味があり、神経難病や認知症に取り組みたいと考えている医師の方はぜひ当院で学んでいただきたと思います。
―力を入れている点は。
医療の質も大事ですが、温かみのある病院にしたいので、接遇に力を入れたいと考えています。このため、「うれしかったカード」といって、患者さんが病院に対して伝えたいことや職員間で伝えたい感謝の言葉などをこのカードに書き込んで伝え合うという取り組みを進めています。
「ありがとう」「ここに入院して良かった」という言葉をいただくとモチベーションアップにもつながります。
―病院以外にも多数の施設を擁し、すでに地域包括ケアシステムが形作られているようです。
法人名である「メディカルソサエティ」という名前にあるように、医療社会をつくるのが当法人のコンセプトです。病状が変わっても、在宅を含め、各施設で対応できる状況が確立しています。
また、介護家族を抱える方が介護離職をしなくても当グループを利用しながら、安心して働くことができる体制を提供したいと思っています。
高齢化率がピークを迎える2025年に向けては、地域の方のために、当法人の内容の充実を図って参ります。