―宮崎大学が指定管理者になった田野病院 「経営のノウハウと豊富な人材で地域医療ささえたい」
田野町は2006年に、隣接する佐土原町および高岡町とともに、宮崎市に編入合併された。田野町国民健康保険病院は宮崎市立田野病院として運営され、昨年4月から宮崎大学が指定管理者になった。国立大学法人が公立病院を運営するのは全国で初めてだそうだが、何がどう変わり、どう改善されたのか、近藤千博新院長に聞いた。
市と大学の思惑が一致
指定管理者というのは、公的な施設の経営を、独立行政法人である大学が民間として担うという意味で、そうなったのは宮崎市側と大学側の思惑が一致したからです。
田野病院側の問題として、医師不足と経営的な困難を抱え、大学は教育の観点から、附属病院とは別に、学生や若い研修医が一般的な診療を学び、地域医療も経験できる施設として、大学にも近い田野病院が選ばれたわけです。日本の医師として、大学で特殊な病気を専門的に診るだけでなく、高齢化社会では介護と医療の両方に目を配る必要もありますからね。
だから訪問診療もやっていて、興味を持っている学生にはとてもいい刺激になります。患者さんの社会背景なども見えてきて、「人をみる」ことと合致するようです。その感覚はこれから大切になってくるでしょう。「人間全体をみる」という意味では大事だと思います。
地域診療にみとりを導入
田野病院はずっと前から、地域診療の中にみとりを導入しています。最期は自宅でと思われている方のニーズに応え、手助けをして差し上げているんです。特にがんの末期になりますと、これといった治療はしないんです。もちろん、最期は病院でという方もおられますし、本人の思いと家族の気持ちが違うこともあります。
ところが、本人の希望に沿って家で家族が看ていても、容体が急変すると動揺して救急車を呼ばれることもあるわけです。そうすると救急隊員は蘇生処置をしなければなりません。そうなると「最期は家で安らかに」という願いが崩れることになります。そこで当院としては救急のほうにあらかじめ知らせておいて、連絡があれば医師がかけつけてみとるようになっています。もっとも私は昨年4月に大学から来ましたので経緯はわかりませんが、そのシステムがどうやら珍しいらしくて、つい最近、地元の新聞社が取材に来ました。
今後の方向について
宮崎市と合併する前から町民にはずいぶん親しまれていたようです。今は町内にクリニックが4軒あり、入院施設があるのはここだけです。高度な医療が必要な場合は大学病院などの専門機関にお願いすることになりますが、ある程度のことまではなるべくここで、と思っているところです。
研修医に言いたいこと
生まれ育ちは和歌山県で、大学は宮崎です。気候がよく似ていますから暮らしやすいですね。
医者になってよくよく考えてみますと、治療がうまくいけば損をする人は誰もいません。これが商売なら、自分が儲けたら誰かが損をしていることも考えられるわけです。そうしますと医療者は掛け値なしにいいことをして、人の役にたっているわけですね。ですから研修医には、頑張れば頑張るほど、いい結果が後からついてくると言いたい。もちろんきつい時もありますが、きつい時は自分が成長している時なんです。常に学問から外れず、しかも患者さんを人として診ることができる、そんな医者になってほしいです。