「ときどき入院、ほぼ在宅」を合言葉に自宅でも病院でもチームで支えます
今年で創立130周年を迎える特定医療法人萬生会。同法人の中で、緩和ケアに力を入れている合志第一病院の坂本泰雄院長に話を聞いた。
■病院の特徴
創立130周年を記念して2月11日、市民公開講座を熊本市内で行いました。300人を超える方々にご参加いただき、「高齢者の医療、特に終末期の医療のことがよく理解できた」と好評でした。
当院はもともと、「西合志病院」として1977(昭和52)年、菊池郡西合志町(現在の合志市)に設立されました。町村合併により合志市に統一されたことを機に、2010(平成22)年10月、一般公募によって「合志第一病院」へ病院名を変更。同年、回復期の医療を充実させるために、回復期リハビリテーション病棟を新たに立ち上げました。現在は、脳血管疾患、心不全、骨折など、多くの患者さんの社会復帰をお手伝いしています。
リハビリのスタッフたちは、身体機能回復のための治療だけでなく、スキンシップや声かけなどを繰り返し、人と人とのふれあいを大切にしています。入院当初は認知症の症状が重かったのに、少し改善された患者さんもいらっしゃいます。
当院の前身である西合志病院は、1999(平成11)年に、熊本県下で2番目の緩和ケア病棟を立ち上げましたが、医師、看護師が不足していたため、病棟の運営を一時休止していました。しかし、熊本県北部には、緩和ケアを専門にできる施設がなかったため、ノウハウを持っていた当院で再開することになったのです。そこで、私が院長として着任した2012年、リニューアル工事を行い、緩和ケア医療を再開しました。
入院患者さんには、なるべく、自宅に近い感覚で入院生活を送っていただきたかったので、木をふんだんに使った北欧風のデザインにしたり、フロア中央のデイルームにまきストーブを設置したりと、内装にはこだわりました。「まるで、ホテルに来たみたい」「避暑のつもりで来たよ」と、皆さん喜んでいらっしゃいます。
そういった声はうれしいのですが、患者さんにずっとここに居てほしいと思っているわけではありません。患者さんにとっては、住み慣れた家が一番。病状が治まり、安定した状態になれば、自宅に帰って、より快適に過ごしていただきたいと思っているのです。
■ときどき入院、ほぼ在宅
当院では、急性期の病院で大きな手術や高度先進医療などを受けてこられた方たちのその後の療養、回復期リハビリなども引き受け、病気の進行に伴って、経過に沿った対応を心掛けています。
本当は自宅で療養したいと思っていても、それぞれの家庭には、さまざまな事情があり、核家族、老老介護状態の場合も多いのです。家族は介護に疲れてしまっているし、患者本人も家族に負担をかけたくないと思っている。その部分をわれわれがお手伝いしていきたいですね。
萬生会グループは、機能強化型訪問看護ステーションの施設基準をクリアしています。在宅療養支援診療所、訪問看護ステーションなどと連携・協力しながら、地域の皆さんのお役に立ちたいと考えています。
そのためには、在宅医療をバックアップする病院が必要です。当院はその役目も担っていますので、外来診療、在宅医療・介護、緩和ケアを通して、「その人らしい生き方」を最後までサポートしています。
「その人らしい生き方」は千差万別。患者さんの人となりを理解しながら、医師、看護師、薬剤師、栄養士、リハビリ職員、医療ソーシャルワーカーなど、チーム全員で支えていくことが大切だと思います。
■今後の展望
私の専門は外科です。父は内科医でしたが、患者さんに接する姿を見て、「人に尊敬される仕事なんだなあ」と憧れ、医師を志しました。本当は教師になりたかったのですが、口下手だったものですから(笑)。
熊本大学の第二外科にいた当時は、まだ外科の専門分野が細分化されていなかったので、消化器がん、乳がん、心臓疾患の手術など、あらゆることを経験しました。学ばなければならないことも多く、大変でしたが、それが現在、緩和ケアの患者さんを診るときに大変役立っています。
また、各病棟に私の担当する患者さんがいて、時々リハビリ室に顔を出すこともあります。私が患者さんに声をかけることで、患者さんと職員のコミュニケーションもうまくとれているようですので、続けていきたいと思います。
また、年内に温泉付きの大きな通所リハビリセンターを造る計画があります。源泉かけ流しの温泉で、管理は大変ですが、リハビリで疲れた体をゆっくり休めていただきたいですね。
4月からは、血液・腫瘍内科を専門にしている医師が1人増えて3人体制になります。この分野においても、県北部地域の医療を支えていきたいと思います。