地域で安心して暮らすために病院改築でハード面を一新愛知県立城山病院の新たな船出
愛知県立松蔭高等学校卒業、名古屋大学医学部卒業/SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)普及協会・東海支部支部長
新病院が完成■
新病院の前期工事は2月はじめにほぼ終える予定で、2月22日には名称を「愛知県精神医療センター」に改め、新棟での診療を開始します。
現在の病棟は約50年前(昭和30年代)に建てられたものが多く、新しいものでも1977年築です。当然、現在の精神医療のニーズを満たしたものではありません。
新病院では、たとえば患者さんひとりあたりの利用面積が現在の基準に沿ったものに補正されるなど、アメニティーの面で飛躍的に向上します。
すべての改築を終えると7病棟になりますが、病棟の特性や機能を分化した病棟運用をしようと考えています。具体的には、医療観察法病棟をはじめ、児童青年期、精神科救急、急性期、回復期リハビリなどに明確に機能分化させます。
また、従来の病棟は大部屋中心で個室が少なく、保護室も少なかったため、救急や急性期の依頼に対応する構造上の障壁になっていました。新病棟では個室や保護室を大幅に増やし、さらに、外来診察室も現在の倍の16室に増やしました。これまでは外来診察室が足りなくて医師が診察室待ちをするという状況もあったので、それが解消されると思います。
地域支援の強化■
地域支援の強化■ 新病院の大きな特徴として、地域支援部門のスペースを拡充し、さらに独立した児童青年期外来を作ったことがあげられるでしょう。これに関連して、当院ではACT(アクト/ Assertive Community Treatment)を導入しています。
包括的地域治療という言い方もしますが、通常の医療資源、社会資源だけでは治療が成立しない方、たとえば自分で病院に行けない方は、医療や福祉資源を活用できないままに地域で放置されている状況が多くありました。そういった方のもとを積極的に訪れて(アウトリーチ)、治療も支援も包括的に行うというシステムです。
病院に来ることができる方は、病気としてはまだ良いほうなのですね。利用すらできなくて閉居しているような方が想像以上にたくさんいます。そのような場合、家族からの依頼であったり、家族から相談のあった保健所からの依頼でACTチームが動きます。
まずは、「あなたの生活を向上させる、生活を良くするお手伝いがしたい。そのためには医療が必要です」というアプローチで、地域での生活を張り合いのあるものにしたいというスタンスで関係を深めていきます。
もっとも典型的なのは、「自分は病気ではない」と主張して、親や周囲が勧めても病院に行かず、ほうっておかれて病気がひどくなる方です。こういった方には、こちらから訪問して最初は関係づくりから始め、治療や生活支援を行い、リカバリーを目指します。
また、病院には行けるものの、退院すると適切な服薬ができなくなるような、何回も頻繁に入院するような方を支える活動も行います。
ACTチームがスタートしたのは昨年の4月からですが、成果として、これまでは1年のうち300日間くらい入院していた方が100日程度に減る、あるいは入院回数が減るなどの手ごたえを感じています。
患者さんのために■
新病院になっても、病院としての基本的な姿勢、理念は変化しません。当然のことですが、患者さんのためにできることには可能な限り挑戦していきます。愛知県の精神科医療をさらに充実したものにするために責任は重大ですが、機能分化させた新病棟の適切な運用を図り、十二分に活用していきたいと思います。
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後期工事:平成28 年度~平成30 年度(予定)