済生会グループの理念を具現化すべく永年事業に取り組む
―新築移転されましたが、温泉地にある病院ならではの特長などを教えてください。
建物が老朽化しましたので、このほど新築をし、昨年12月21日に竣工しました。山口市内の病院ではもっとも高く9階建てとなります。この中に、医療療養型病床142床を置き、これに加えて今年1月1日に、広域型特別養護老人ホーム「おとどいの里」を7、8階に80床で新設しました。4月にはフル稼働いたします。
同じ建物の中に病院と特養が一緒に入っているケースは全国的にも珍しいようです。引き続き敷地内に、職員のための保育所などの建設も始まりますので、最終的な工事の完了は、今年の6月を予定しています。
当院は、病院から1.5km離れたところに泉源を持っており、旧病院の時から温泉プールがありましたが、新病院ではその規模を大きくしました。リハビリの水中訓練や、入院中の患者さんに利用していただいており大変好評です。内科には温泉療法専門医もおり、温泉は治療に大いに役立っていると思います。
―山口市内でのグループの各施設の役割分担は。
山口総合病院は急性期、湯田温泉病院は慢性期、そして30余りの福祉施設、事業所は在宅へという役割分担でやっております。また、湯田温泉病院とそれらの施設を合わせて「済生会山口地域ケアセンター」として運営しており、私が院長とケアセンターの所長を兼務しています。
国が地域包括ケアシステムの構築を方針としていますが、山口地域ケアセンターは包括ケアのシステムを、早い段階から構築しているため、各地から視察のために多くの方が訪れています。
―新規事業に力を入れておられるようですが。
済生会の基本理念は、①地域医療への貢献②生活困窮者への援助③医療と福祉の総合的なサービスを提供の3つです。これを実現するため、山口地域ケアセンターの所長(院長)と事務局長そして看護部長(技術主幹)の3人を中心にして事業計画を進めてきました。山口市初の老人デイサービス事業をはじめ、これまで手掛けた新しい取り組みは30近くになります。
最近では、山口刑務所と「山口再犯防止プロジェクト」を締結し、昨年8月より受刑者を対象とした「介護職員初任者研修」を刑務所内で実施。済生会本部(東京都)も大変興味を示し、炭谷茂理事長自らが山口刑務所で講義を行いました。
受刑者の再犯を防止するために資格の取得を目標とし、最終的には就労支援も行いたいと思います。全国的にも大変めずらしい取り組みかと思います。
もともとは、5年前に立ち上げた「山口圏域生活支援協議会」の協議から始めた取り組みです。協議会は、当センターや法務省、山口市、県など12の団体で構成されており、受刑者や刑余者(以前に刑罰を受けたことがある人)、ホームレスなどの支援を目的としています。これまで、受刑者による社会貢献活動ということで、当グループの施設内でのボランティア活動や、資格者による入所者への散髪サービスなども行いました。
―地域との連携は。
済生会グループが新たに取り組んでいるのが、「医療福祉包括連携士」という独自の資格の立ち上げです。行政、利用者、他の医院・病院や福祉施設との連携を深め、地域包括ケアのキーパーソンとなるような人材を育成したいのです。養成プログラムの開発なども進んでおり、おそらく社会福祉士や看護師、保健師が資格の取得を目指してくれると思います。
―病院やケアセンターの課題は。
医師の確保です。若い医者は、どうしても「治す医療」、「急性期」に魅力を感じるようです。当院は、慢性期、つまり維持する医療ですから、結果がすぐに出るわけではありません。
新しい医局はすべて個室にするなど、環境は整備しましたので、ぜひ新しい医師の方に来て欲しいと思います。
私自身、外科の医師として急性期からこちらに異動した時はカルチャーショックも受けましたが、20年を経てようやく形になりました。
済生会では名誉会員として表彰され、3千人の前で話をする機会もいただきました。
私の長年の夢である湯田温泉病院と他の介護施設などをすべて廊下で結び、全施設に温泉をひくという構想がようやく実現できそうです。敷地内には、車椅子の方も使える"足湯" も作りました。足湯は交流の場となると思い、看板には「I seeyou」( あしゆ) と書きましたが、いかがでしょう。足湯は英語でFoot Bath だそうで、「疲れを(ふっとばす)だな」、というと職員からやめてくれと言われました(笑)。
湯田温泉病院山口市朝倉町4の55
TEL:083(932)3311(代表)