熊本大学医学部附属病院 がんセンター/熊本大学大学院生命科学研究部 乳腺・内分泌外科学分野 岩瀬弘敬 センター長・教授

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大学病院のがんセンターとしての役割

いわせ・ひろたか【略歴】1979 年に名古屋市立大学医学部医学科を卒業し、名古屋市立大学第二外科に入局。1983 年以降、乳がん、甲状腺がんを専門に診療している。1993 ~ 1994 年にロンドン、ガイズ病院に留学。その後、名古屋市立大学で講師、助教授(准教授)を経て、2004 年に熊本大学大学院 乳腺内分泌外科 教授に就任。現在、熊本大学医学部附属病院がんセンター長を兼任している。専門は乳癌の内分泌療法のメカニズム解析、分子標的療法、化学療法、手術療法などの乳癌治療全般。【所属学会など】日本乳癌学会理事(専門医制度委員長)・専門医、日本外科学会理事・指導医、日本癌学会評議員、数編の欧文誌のAssociate Editor, Advisory Board に就いている。

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■がんセンターの特徴

 がん治療は、臓器単位つまり各診療科(肺がんは呼吸器科、胃がん、大腸がんは消化器科など)で行われています。しかし、画像診断、化学療法、緩和ケア、がん患者さんに情報を伝える部門などは、あらゆるがんに共通したものです。それらを横断的につなげば、検査・治療の 無駄を省くことができ、効率よく質の高い医療を提供することができます。その目的で、当がんセンターが作られました。

 当がんセンターは、外来化学療法センター・がん相談支援センター・緩和ケアセンター・がん登録センターの4つから成り立っています。センター全体の取りまとめと、がん相談支援センターのセンター長としての仕事が私の役割です。

 外来化学療法センターには18のベッド、もしくはチェアがあり、がん薬物療法専門医、薬物療法認定薬剤師、複数のがん薬物療法認定看護師がいます。

 本来、外来化学療法センターというと、点滴の抗がん剤を扱うのですが、今は経口の抗がん剤もありますから、処方の際はそこで薬の説明を受けることができるようになっています。

 病気の治療法に関してはドクターに相談できますが、社会的、経済的な悩みを相談するのは医療者だけでは難しいことがあります。その部分をサポートするのが、がん相談支援センターです。

 がんと診断されたときから、医師だけでなく、がん看護専門看護師やソーシャルワーカーに相談できる仕組みです。

 昔は、「がん=死」という印象が強かったのですが、今は早期に発見されることも多くなりましたので、診断後も日常生活は続きます。今は患者さんの病気だけ をみるのではなく、その方を支える経済的な背景、家族関係にまで踏み込んだトータルケアが必要です。

 また、がんが進行して終末期となった時に、在宅で診るのか、ホスピスに転院するのかなど、病院や診療所との連携の相談も受けています。

 このがん相談支援センターのサポート体制が整ってきたことで、各診療科や外来化学療法センターは治療に専念することができるわけです。今年はさらにスタッフを増やし、充実させていきたいですね。

 緩和ケアセンターについては、医師、看護師、ソーシャルワーカーなどあらゆる職種からなるチームが一体となって活動しています。当院にも緩和ケア病床があり、入院も可能です。みとりに関しても、診療科や連携施設との密な連絡で、円滑に行っています。

 また、がん患者さんのデータ一つひとつが、各種のがんの疫学調査として、今後の患者の治療法に役立ちますので、がん登録センターの役割も非常に重要です。

■乳がんの遺伝子診断

 がん相談支援もいろいろあります。たとえば、私の専門である乳がんの領域ですと、アンジェリーナ・ジョリーさんのような家族性乳がんの場合です。これは非常に微妙な問題を含んでいて、ともすれ ば「この家系の遺伝子はよくない」という差別を 生みかねないので、専門家による十分なカウンセリングが必要になりますね。

 アンジェリーナさんは遺伝子診断で「BRCA1」という遺伝子に異常を持っていることがわかりました。この場合は、90%近くが将来的に乳がんを発症することがわかっています。日本では遺伝子診断や予防的手術に関する保険診療はできません。日本で乳房再建手術を実費で施行したら200万円以上かかるのではないでしょうか。

 手術費用の問題もありますが、「未発症なのに、乳房切除していいの?」といった倫理的な問題もあり、日本ではまだこれからの段階です。日本乳がん学会も、診断はいいが、手術については慎重を期しているところです。

■早期発見のために

 乳がん増加の原因は、ライフスタイルの欧米化といわれています。晩婚、高年齢初産、少子化などが発症リスクですが、これは今さら変えようがありませんね。ですから、乳がんの発症予防(一次予防)は難しく、今後も増えていくことが予想されます。したがって、いかに早期発見して、がんから命を守るか(二次予防)が大事です。

できます。月に1度、生理が終わって乳腺が落ち着いている時期に、触診されることをお勧めします。触診のポイントは、寝たり起きたり、手を上げたり下ろしたり、体勢を変えて行うこと。そして平手で抑えるようにして触ることです。普段と違う痛みやしこりを感じた、乳頭から分泌物があったときには、すぐに乳腺外科の専門医を受診してください。

 40代以上の女性は、2年に1度、マンモグラフィーと触診を受けることをお勧めします。家族に乳がんになられた方がいる、高年齢初産で母乳の出が悪かった、未経産、乳腺に疾患がある、という方は、1年に1回。そうではない方は2年に1回で十分だと思います。

■がん治療のこれから

 現在、患者さんは専門医がいる病院に集まる傾向にありますが、その多くは熊本市内にあり、専門医がいない地域の方は熊本市内まで来なくてはいけない。この問題を解消するためにできたのが、厚生労働省の指導による都道府県がん診療連携病院協議会です。国指定では当病院を入れて8施設、県指定では11施設あります。まだ、設備的にも人的にも十分でないのが現状ですので、今後はこれらの各拠点病院に専門医をおいてセンター化したいですね。

熊本大学医学部附属病院熊本市中央区本庄1-1-1
TEL:096-344-2111(代表)


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