地域に密着した医療と介護の一体化を
2013年、35年の歴史を持つ熊本託麻台病院から新体制のリハビリ施設として生まれ変わった熊本託麻台リハビリテーション病院。日本リハビリテーション病院・施設協会の在宅支援対策委員長も務める平田好文理事長に話を聞いた。
■理事長としての視点
昨年、理事長になって、病院から地域へ、これまでとは大きく視点が変わりました。地域包括ケアの実現、整備の時代にきている今、2025年問題に向けてどういった地域包括ケアが見込めるか。それぞれの地域に合ったシステムを作らなければならないと思っています。
当院が属する尾ノ上エリアには、尾ノ上、東町、健軍東、山之内の4つの地区があります。各地区の介護施設、自治会、民生委員、協議会、地域包括支援センターについて詳しく調べてみると、この地区には多くの介護施設が集まっていることがわかりました。さらに、病院、銀行、郵便局、コンビニ、公園など、生活に必要な施設が徒歩圏内にそろっています。
こうした環境を踏まえて、これからはもっと、介護医療の連携と地域住民の方々との密着度を高めていきたいですね。
私が考える地域包括ケアとは、子供から高齢者まで、元気な人からターミナルケアが必要な人まで、すべての方に対して行うものです。それには次の3つの取り組みがあります。
1つ目は、健康な人に対する取り組みである、「くまもとスマートライフプロジェクト」。これは、熊本県が企業・団体に働きかけているもので、①運動②食生活③禁煙④特定健診・がん検診受診⑤歯と口腔のケア⑥十分な睡眠、これら6分野にわたって、生活習慣を改善することで、健康寿命を延ばそうというものです。当法人もこの取り組みに参加しています。
2つ目は「生活不活発病キャンペーン」です。生活不活発病とは家の中でじっとして動かないことにより、心と体の働きが低下する状態のこと。日ごろから地域住民に向けた研修会を開催するなど、予防に努めています。
3つ目は、地域リハビリテーションの整備です。その取り組みの一つとして、在宅支援リハビリセンターをつくりました。通常、地域包括支援センターには、保健師、主任ケアマネージャー、社会福祉士しかいないため、リハビリに関する相談が合っても十分に受けられません。今後はそこにリハビリもセットできるような仕組みを整えたいですね。
すでに国が造った広域支援センターがありますが、これはリハビリのスタッフを指導するもので、役割が違います。補助金がなくなってからは、半分ぐらいしか残っていませんが、熊本県には残っていますので、災害、広域支援、在宅支援のリハビリセンターを併せたかたちで、地域のリハビリテーションを行いたいと思っています。
■今後の目標について
3年後を目標に地域に密着した医療と介護の一体化を実現しようと考えています。実現のためには、われわれが地域の中に入り、そこでどんな取り組みが行われているかを知り、それをサポートしたり、一緒にやったりすることが必要です。
そして、地域包括支援センターと密に連携を取り合い、お互いのアイデアを持ち寄ることにしています。
熊本市は現在、サービス付き高齢者住宅を約6000床造る計画があると聞いています。これらの施設がより良いケアを提供できるようにするためにも、地域包括の中の介護施設、医療施設のネットワーク整備が不可欠だと考えています。
もう一つは街づくりです。現在、熊本市内に空き家が約5万件あり、独居の高齢者も多く、人口の空洞化が進みます。そこで熊本市は、CCRC構想を掲げています。
CCRCとは、高齢者の健康な段階での移住を前提とした、住居や介護施設などを備えた共同体のことですが、これには地方移住をしてもらえる魅力ある町づくりが必要です。
医療と介護がそろっていて、安心して働ける町ができないと良いリハビリテーションはできません。町づくりのために、自治会にも顔を出して、地域住民の方々の声を聞くようにしています。
■医療者として求められること
自分の担当分野の知識しかないと、間違いを犯します。医療全体を見て、勉強しておくことが必要です。そして自分の担当は、全体のどの部分なのかを認識すること。ミクロの視点とマクロの視点を持つように、とも職員たちには言っています。
まずは1人の患者さんのことを知ること。そしてその患者さんを取り巻く環境を広い視野でみること。この2つの視点を持つことが大事です。
自分では気づけない部分を教え合うことができるチームとしての力も大切です。そして、そのチーム力を育てることが私の役割だと思っています。
熊本託麻台リハビリテーション病院熊本市 中央区帯山8-2-1
TEL:096-381-5111(代表)