小児科医の魅力は子どもとその家族の成長も見られること
ー佐賀県での大学の小児科の役割は
佐賀市内には当院のほかに、国立病院機構佐賀病院、佐賀県医療センター好生館という3つの大きな病院があります。
佐賀病院は、NICU(新生児特定集中治療室)を擁し、総合周産期母子医療センターを中心に運営、好生館は、小児救急や小児外科とそれに関連した病気、そして佐賀大学附属病院は、急性期に加えて特に慢性疾患の最後の砦として三次病院的な部分を担っています。
ー医局の特長は何でしょうか。
現在、医局員は57人で、私は四代目の教授となります。感染症などの急性期疾患から慢性疾患まで、小児全般に対応する幅広い臨床能力を持っている人が多いのが特長だと考えています。
ー教授に就任後1年経ちましたが、いかがでしょうか。
就任の際に、2つの大きな抱負を掲げました。
まず、1つ目は、産科、脳神経外科、泌尿器科、形成外科、口腔外科などといった小児に関わる診療科との連携をより強化すること。
具体的には、小児の病棟に入院している子どもについては各科共通のカンファレンスの実施などを通して、全身の管理を小児科が行うような体制を整えたいと考えています。
また、2つ目は、児童虐待に対する対策として新たにペリネイタルビジット(周産期小児保健指導)に力を入れたいと考えています。
本来はプレネイタル(出産前)が望ましいですが、忙しい方も多いでしょうから、期間は、出生前から出産後の早い段階で、と考えています。
ご両親と小児科医が出産前から話す機会を作り、行政と一緒になって親子を見守る体制を作るというシステムです。
大分県や北九州市が進んでいるようですが、開業医の先生方のコンセンサスを得ながら佐賀でも導入したいと準備を進めています。出産前から、小児のかかりつけ医を持つことにもつながり、お母さんの不安を解消し、結果的に虐待を予防するというものです。
ー具体的には、どのようなメッセージを母親に伝
予防接種や子育てに関することなど小児保健全般の情報です。虐待に関しては、たとえば、乳児揺さぶられ症候群は、意図的な虐待ではないことが多いのですが、泣き止まない赤ちゃんを強く揺さぶることで、脳に重い障害が残ってしまうものです。
あらかじめ情報と、相談できる場があることも伝えることで予防につながると考えています。
また、最近は、心配だから念のため、という時間外の受診が多いので、家庭での"看護力"を上げる情報を伝えたいと考えています。
ー最近、発達障害が増加していると言われています。
発達障害の増加は国際的にも著しいものがあります。文部科学省の調査では、義務教育段階で、特別支援学校及び小学校・中学校の特別支援学級の在籍者並びに通級による指導を受けている児童生徒が、総数に占める割合は、27%にのぼります。さらに、自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する児童生徒数は、2008年度以降、毎年約6千人ずつ増加しています。発達障害に絡んだ不登校、心身症などの問題も多く、医療側の対応が追い付かない状態です。
ー社会に求めることはありますか。
発害障害の原因の多くは先天的な素因によるものだということが分かってきていますが、社会環境の影響も受けます。まずは、そういう子どもの特性を理解して欲しいと思います。同じような特性を持っていても、大人になって仕事を持ち、自立できる方もいます。そのためには、育ってきた環境との相互作用が影響しますので、個性や特性を知った上で、過ごしやすい環境を与えられるような社会になって欲しいと思っています。
ー小児科医のキャリアが30年、どのような小児科医を育てたいとお考えですか。またやりがいは。
小児科医は総合医で、他の診療科や医療スタッフ、教育関係者、行政などと上手に連携していくことが大切です。また、子どもだけでなく、それを取り巻く家族もみなければならないんです。そのために伝えているのは、相手の立場を尊重し話を良く聞くということと、家族にも配慮するということ。私たちがそれを実践していき、次に引き継ぎたいと思います。
また、小児科医のやりがいは、子どもたちの成長が見られるということだと思います。また、子どもたちを取り巻く家族にもいろんな意味での成長が見られるのが一番の魅力です。
佐賀大学医学部附属病院佐賀市鍋島5の1の1
TEL:0952(31)6511(代表)