地方独立行政法人 筑後市立病院 吉田 正 理事長・院長

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「あってよかった」と言われる病院に

よしだ・ただし【略歴】1980 埼玉医科大学医学部卒業1981 久留米大学医学部第2 外科医局 1999 久留米大学医学部助教授 2005 久留米大学医学部臨床教授 2010筑後市立病院病院長 2011 地方独立行政法人筑後市立病院理事長兼病院長【学会など】医学博士 日本内視鏡外科学会評議員 日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医 日本内視鏡外科学会技術認定医 日本消化器病学会 日本臨床外科学会日本胆道学会 日本救急医学会、全国公立病院連盟副会長【専門分野】内視鏡外科、消化器外科、胆道外科

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■病院のモットー

 「あってよかった病院」「かかってよかった病院」「働いてよかった病院」。

 私が病院長になってからは、ずっと、この3つを掛け声にしてやってきました。

 これを実現するための取り組みとして、まず、月に1度、経営戦略会議を行い、病院全体のバランス・スコアカードを作りました。このカードは、病院の業績を4つの視点(患者・財務・内部プロセス・学習と成長)から、多面的かつ関連づけて捉え、表にまとめたものです。これによって、病院の進むべき方向性を組織の末端まで浸透させることができ、目標の実行・達成にもつながります。

 そして、地域との連携を深め、中核病院としての機能を充実させるため、戦略マップを職員全員に示し、経営計画を立てさせます。毎年12月の運営方針発表会で、優秀な計画を立てた職員の表彰も行っています。

 職員の意識がバラバラでは前に進むことができません。私は方向性だけを示して、それをみんながどう考えて、どう行動するか。トップダウンではなく、ボトムアップでやっていくことも大切だと思っています。

 実際、回を重ねるごとに職員たちが病院の方向性、やるべきことを理解して計画を立ててくれるようになりました。

■病院機能の充実に向け

 筑後市の現状においては、高度急性期・回復期の病床数は足りていませんが、急性期・慢性期はオーバーしています。地域医療構想によって、ある程度の目標が決められるので調整が必要となるでしょう。

 患者さんには「なぜ、遠い病院に転院しないといけないの?」という不満がある一方で、急性期病院は、患者の総数は変わらないのに、在院日数は減っているから、なんとかして、空いたベッドを稼働させなければならない。

 この状況を踏まえ、当院では、4つある7対1急性期病棟のうち1つの病棟を地域包括ケア病棟( 57床)に変更し、ポストアキュート(急性期経過後に引き続き入院医療を要する状態)と、サブアキュート(在宅や介護施設で症状が急に悪くなった場合)に対応できるようにしました。

 また、当院では、さらなる病院機能の充実に向けて、幹部職ポストに他業種の経験者も積極的に採用するようにしました。

 これは、市立病院には市から派遣された職員が多く、せっかく専門知識を習得しても、2、3年で元の職場に戻ってしまうという問題を解決するのが目的でした。

 どの職種にも言えることかもしれませんが、責任ある仕事になればなるほど、1、2年で習得できるものではありません。また、他業種からの視点やノウハウを取り入れることで、さまざまな業務が効率よく、スピーディーに処理できるようになりました。

 医療機能評価機構の受審に向けた準備についても、コンサルタントに頼らず、すべて自前で行っています。

 院内に病院機能改善委員会を作り、第1回目受審時には準備委員長は私が務めました。その後は副院長が引き継いでいます。今年4回目の受審に向け、月に1度集まって会議を行っていますよ。

 また、病院運営委員会には、すべての医師と各部署の室長・主任が出席して現状報告を行い、情報を開示します。そして、その情報をデータ化し、共有するわけです。病院運営に関わるさまざまな項目を、数字やグラフで表すと、非常にわかりやすく、改善に向けた行動計画も立てやすいのです。

 ただ「がんばれ」という指導だけでは、具体的な行動につながりませんからね。

■外科医として思うこと

 私は日本で最初に胆のう摘出を内視鏡手術でされた帝京大学の山川達郎教授のもとで学び、1991年から内視鏡手術をしています。久留米大学で行われた第1例目の腹腔鏡下胆のう摘出手術を執刀しました。

 また、当時、佐田病院で内視鏡手術を導入すると聞き、佐田正之先生(佐田病院理事長)、山下裕一先生(福岡大学医学部消化器外科教授)と共に、同院における1〜20例目までの手術に参加しました。

 内視鏡手術は、開腹手術に比べると傷も小さく、術後の回復も早いものです。しかし、同時に高度な技術を要求されます。2次元で術野を見ながら3次元の手術をしなければならず、訓練にも時間がかかります。助手をしたり、カメラ持ちをしたりしながら、地道に感覚をつかんでいくんです。

 昔の内視鏡装置では画像が荒く、細かいところまで見ることができませんでしたが、最近では立体観察が可能な3Dの装置ができ、画面もハイビジョンですごく鮮明です。4Kのものも開発されているそうで、今後ますます発展していく分野だと思います。

 その半面、「腹腔鏡手術数の増加に反比例して外科医が減った」という先生もいらっしゃるぐらい、外科医が不足しています。

 確かに、外科医の仕事はきつい。ひと昔前までは、厳しい徒弟制度の中で叱られながらも我慢して学び、一人前の外科医として成長していったものです。それが今の若い人には難しいのかもしれませんね。今は医者に限らず、ちょっと怒ったらすぐ居なくなってしまう。気を使ってあげないといけないから、育て方には工夫が必要だと思います。

■今後の展望

 今後予定されている診療報酬改定の動向を見ながら、対策をしなければいけないし、地域医療構想の中で必要とされる方を向かないといけないかもしれません。病院機能をさらに変更させないといけないかもしれません。

 しかし、当院の立ち位置としては、地域の中核を担う病院としての機能を持つことがもっとも重要なことです。

 筑後地域の方がわざわざ遠くの病院に行かなくてもすむようにしたい。地域に必要とされる医療を、きちんと行える体制づくりを続けていきたいと思っています。

 これからも、「あってよかった」と思っていただける病院でありたいと思います。

筑後市立病院筑後市大字和泉917・1
TEL:0942-53-7511(代表)


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