掛川市・袋井市病院企業団立 中東遠総合医療センター 名倉 英一 企業長兼院長

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

統合から今年で4年目、さらなる高みを目指す

 2013年5月1日に、掛川市立総合病院と袋井市立袋井市民病院が統合。日本初の異なる2つの市の病院として中東遠総合医療センターが開院した。

 名倉英一企業長兼院長に統合までの経緯と今後の展望を語ってもらった。

なぐら・えいいち 1975名古屋大学医学部卒業大垣市民病院研修医 1976安城更正病院内科 1977財団法人癌研究会癌化学療法センター臨床部 1980愛知県職員病院内科 1982佐賀医科大学内科学文部教官助手 1983国立療養所中部病院内科 2004常滑市民病院副院長 2010掛川市立総合病院長 2013掛川市・袋井市病院企業団立中東遠総合医療センター企業長兼院長

c17-1-1.jpg

■統合までの経緯

 かつて、掛川市立総合病院(450床)と袋井市立袋井市民病院(400床)には、ともに優れた経営実績がありました。

 しかし建物は老朽化し、また内科系医師退職後の欠員不補充などのため医師不足が生じ、診療機能が低下して徐々に経営が悪化してきました。

 そのため、両市は2006年、「市民病院の今後の在り方」を考える検討会を設置しました。さまざまな角度から議論した結果、医師を派遣してくれている大学の意向もあり統合することに決まりました。

 翌年から統合に向けた協議を始めましたが、議論は必ずしも円滑には進みませんでした。最大の問題になったのは、病院の立地です。両市ともに「自分たちに近い」場所を主張し、なかなか意見がまとまりませんでした。

 ちなみに袋井市は磐田市に隣接しており、そこには500床の磐田市立総合病院があります。旧袋井市民病院からは5kmほどの場所にあり、その近辺での建設は、新病院の経営を最初から困難にすることを意味します。

 最終的には、掛川市・袋井市新病院建設協議会の正副会長裁定により、迅速性を考慮し、両市の境界に近い掛川市のゴルフ場の跡地に決定。病床数は診療圏の医療需要から500床とし、両病院の許可病床数の合計である850床から350床を削減しました。また、経営形態は、地方公営企業法全部適用の企業団立

 2009年1月に「新病院建設に関する協定書」が締結され、日本初となる異なる2つの市の市民病院の統合が正式に決定したわけです。

 開院するにあたり、最も困難が予想されたのは医師の確保です。幸いなことに名古屋大学、浜松医科大学、岐阜大学、名古屋市立大学、愛知医科大学の積極的な支援により、開院時には80人の常勤医師を確保できました。

 看護師も7対1を維持するだけの人員を確保できました。病院の統合において看護スタッフの確保は医師確保と同じくらい重要です。

 メディカルスタッフは、現給保障したこともあり、ほぼ全員が新病院へと移ってきてくれました。

■地域医療における病院の再編

c17-1-2.jpg

中東遠総合医療センター(航空写真)

 静岡県に2次医療圏は8つあり、われわれの中東遠医療圏は5市1町で成り立っていて、それぞれが自治体病院を持っています。

 この統合計画は地域医療における病院再編という側面もあります。2つの中規模病院を統合して500床の基幹病院にすることで、中東遠医療圏のなかに当センターと磐田市立総合病院の2つの基幹病院ができ、この医療圏は2極体制となりました。

 2つの基幹病院が高度急性期医療を担い、ほかの3つの中規模病院がその地域の2次医療に加え、回復期や療養などの後方支援病院的な性格を有しています。地域医療再生の視点からみると、この中東遠医療圏は理想的な医療環境になったと言えるのではないでしょうか。

■3つの運営目標

 2013年に当センターが開院。われわれは運営目標に3つの柱を掲げました。1つは医療の質の向上、次に健全経営の構築、最後に臨床研修の充実です。

 開院当初は、救急体制のひっ迫や、外来業務の混乱などもありましたが、それも3カ月ほどで落ち着きました。

 1日あたりの平均入院患者数、外来受診者数のいずれも統合前の両病院の合計数よりも多い診療実績を上げています。また救急部門の実績も素晴らしく、2015年8月には、県下で10番目となる救命救急センターの指定を受けることができました。

■組織文化の融合

c17-1-3.jpg

(上写真)天気の良い日は病室から
富士山が見える。
(下写真)病院敷地内にあるヘリポート

c17-1-4.jpg

 2つの病院が統合する際、テーマとなるのは2つの組織文化の融合です。看護記録の取り方ひとつをとっても病院ごとの文化があります。統合に当たっては、そうした点にも配慮し、業務手順、文化の足並みを揃える必要がありました。

 私は統合時に「AとBを足して2で割るのではない、新しい500床の高機能病院をつくるのだから、それに見合った診療と運営を考えましょう」と何度も職員に話しました。その姿勢を貫いていった結果、良い循環になってきたように感じています。

 より一層の組織の融合を進めるために毎年、各部門ごとに行動計画の目標及び成果発表会を行っています。目標発表会では27部門が、それぞれ3分間で目標を発表します。SWOT分析(組織を、『強み(Strength)』『弱み(Weakness)』『機会(Opportunity)』『脅威(Threat)』の4つの軸から評価する手法)をして、前年度の目標と成果を発表。現状や取り巻く環境を述べて、今年度の目標を発表し、最後に決意を述べてもらいます。

 組織の融合の集大成となったのが、2015年11月末に受審した病院機能評価です。すべての業務を見直して、業務の適正化と効率化を行った結果、サーベイヤー(調査評価者)からは高評価の講評を受けることができました。

■高い運営評価

 直近の機能評価係数Ⅱは0.0657で、県内のⅢ群病院(一般病院)で2位、全国でも66位です。また雑誌「日経ビジネス」の病院経営力ランキングではDPC導入・準備病院1798病院中、22位との高い評価を受けることができました。

 両者とも外部の独自の基準による第三者評価なので、われわれの取り組みは間違っていなかったと再認識できました。

 当センターを今後も、より向上させるためには、一層の医療の質の向上をはかり、スタッフ、特に医師のさらなる確保と研修機能を充実させていかなければならないと考えています。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る