医療法人ゆうの森 永井 康徳 理事長

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医療から「支える」医療へ

【略歴】1992 年 愛媛大学医学部卒業後、愛媛大学医学部附属病院、自治医科大学地域医療学教室を経て、愛媛県南部の 明浜町(あけはまちょう)国保俵津( たわらづ) 診療所所長に就任。 2000 年 在宅医療専門診療所「たんぽぽクリニック」を愛媛県松山市に開業。2012 年~ 市町村合併の余波で閉鎖となった愛媛県南部のへき地診療所を西予市から民間委譲して引き継ぎ、医師複数体制でのチームで循環型地域医療を実践している。

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【全国在宅医療テストに関する問合わせ先】
電話:089-911-6333(医療法人ゆうの森)

■24時間在宅医療に特化

 2000年10月に「たんぽぽクリニック」を開設して15年になります。初めは医師1人、看護師1人、事務員2人でのスタートでした。

 もともと私は国保の診療所でへき地医療に従事していました。その地域では30〜40人の在宅患者さんを診ていて、地域の約3分の1にあたる人数を看取っていたんです。在宅医療をしながら看取りまでやるような医療がこれからは必要になると感じていました。ただ、看取りまでとなると片手間ではできません。患者さんとそのご家族に安心してもらうためには、24時間対応が求められるし、頻回な訪問も必要になる。そこで、在宅医療に特化した形で開業しました。

 24時間対応というのは絶対必要だと思って始めたのですが、私が病気になったり、死んでしまったりしたら、診療所自体がなくなってしまう。いくらいい医療をしても、継続できなければ意味がない。それなら医師が3、4人いて、コンビニみたいに交代しながら診療すれば、医師も疲弊せずに済むのではないかと考え、複数体制にして、一定の規模の診療所にしようと決めました。そのためには人が必要だし、育成もしなければなりません。しかし、患者のニーズがあれば、それにシステムで答えていく。それがこれから求められる医療だと思います。

■質を高めるために

 当法人では、24時間診療は必要最低限の条件であって、もっと質を高める努力をしています。

 もともと私は在宅医療の質を高めるために必要なのは、「理念× システム× 人材」だと思っていて、その中でも人材は特に重要です。最初から「在宅医療をバリバリやってます」という医師はなかなかいないので、入ってから研修をしっかりやるようにしています。

 在宅医療制度の知識について、当院では、「在宅医療テスト」というものをやっていて、2015年は全国で1700人が受験しました。私たちが問題を作り、発送し、採点して、成績表を返す。すべて無料で行っています。「医療者の無知は患者にとって罪だ」という思いがありますので、年に1回はそうした勉強もしっかりして、院内でも全員が受験しています。

 また、クレド(信条)というものを作り、毎週金曜日に職員全員で読み合わせをしたり、自分の患者さんとのエピソードを発表しあったりして、常に理念について考える工夫をしています。

 研修医は月に2人ずつ来ていますので、職員みんなが常に教えてあげられるような体制も作りました。全国から見学にも来られますので、そうした方々とも時間を作ってしっかりお話をするように心がけています。

 先ほどお話しした在宅医療テストもそうですが、これらの無償の取り組みを続けていくことが、いろんなものにつながって行くのかなと思うんです。

 というのも先日、10年以上前に当院に来た最初の研修医から連絡があり「今、呼吸器外科として頑張ってるんですが、医者になって最初にゆうの森で経験した在宅医療を、やっぱりやりたいと思うので、4月から行かせてください」と言ってくれたんです。そして昨日も、当院が全国に発信しているテストや書籍を見て、研修先を探していた先生が1人見学に来てくれました。どちらも本当にうれしかったですね。日々しっかり活動していることが、いつか巡り巡ってつながってくるんだと実感しました。

 くわえて、職員たちのモチベーションを上げることも重要です。今年は台湾から見学に来られたり、講演に行ったりということが2回ありました。その際、中国語が話せる職員を一緒に連れて行ったところ、その職員はすごくやりがいを感じたそうです。2回とも大活躍してくれましたよ。

 3年前、松山市内で日本在宅医学会(大会長=永井康徳理事長)が開催された時、一般の方向けに公開講座として「胃瘻(いろう)をすべきか」をテーマに劇を上演しました。地元の50歳以上の一般人で構成する完熟劇団「一期座(いちござ)」のみなさんがボランティアで協力してくれて、私や職員も参加しました。当院の患者さんのエピソードをもとに、プロに書いてもらった脚本で演じたのですが、参加した職員が「もっとやりたい」と劇団に入ったりして。その後も何回か上演しましたが、人手もお金もかかる。それならドラマを撮って上映しようということになり、誕生したのが「たんぽぽ劇『半熟座』」です。毎年1本ずつ、これまでで3本のドラマを撮りました。私の講演とセットで上映しています。年中いろいろなことに取り組んでいるので、みんなのやりがいは着実にアップしていますよ。

■たんぽぽのおうち

 私が診ている患者さんに、ご主人と2人の子供がみんな精神発達遅滞という、がん末期の女性がいらっしゃいました。私たちは、その方が亡くなった後の生活のことも含めて考えながら、その家族にかかわっていたのですが、自宅で看取るのは難しいかもしれないと、ホスピスへの登録を勧めたんです。すると、普段は頼りなげだったご主人が「入院したら先生や看護師さんが診てくれるわけじゃないやろ。人間関係が変わるのが嫌なんや。家で最期まで診てほしい」と、はっきりした口調で言われたんです。人間関係が変わることがそんなに大きいことなんだと、改めて思い知らされました。

 2月に開業予定の有床診療所「たんぽぽのおうち」は、患者さんが、自宅のような感覚で入院ができる場所にしたいと思っています。入院ができない場合でも、医師や看護師がその延長で診られるようにしたい。一時的に預かる場合でも、できるだけ自宅と同じように診られて、自宅でのやり方を維持してあげる。家と行ったり来たりできるようにしたいですね。

 僕自身はこれ以上何かをつくりたいとは思いませんが、「質を高める」ことはとことんやっていきたい。今後は有床診療所をベースにしながら、外来診療も始めます。

 若い医師や看護師がたくさん集まってきて、研修して巣立っていく、ということに力を入れていきたいと思っています。


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