これからの医療の動向
明けましておめでとうございます。
名古屋市立大学理事長・学長の郡健二郎でございます。
はじめに、本学のことをご紹介いたします。131年前創立の名古屋薬学校と72年前創立の名古屋市立女子高等医学専門学校を源流とする本学は、これら2校が1950年に統合して開学されました。その後、経済学部、人文社会学部、芸術工学部、看護学部、システム自然科学研究科を加え、現在では6学部7研究科からなる総合大学に発展してまいりました。これも偏(ひとえ)に市民を始め多くの方々のご支援の賜と深く感謝いたしております。
この歴史を踏まえ、本学では昨年、開学65周年記念事業をささやかにおこないました。その一つは本学の理念と使命を明確にした「大学憲章」の制定で、それをもとに15年後を見すえた「名市大未来プラン」を策定しました。名市大未来プランは4つのビジョンと52の項目からなり、さらに附属病院が掲げる「サクラ咲くプラン」が示されています。それらのプランの中から本日は、「これからの医療の動向」についてお話しします。
私は、一学年約280万人の団塊世代です。私の大学入学時の医学部定員は約3000名なので、「同世代の約1000名に1人」が医師になったことになります。一方、昨年生まれた人数は約100万人で現在の医学部定員は9000名、さらに医学部の新設などにより約1万人になると予想され、「同世代の100名に1人」が医師になる時代が20年後には来ます。人口比率で言えば10倍もの増加です。
しかも超高齢少子化社会が進むことから、従来までは急性期医療に目が向けられていましたが、「これからの医療はゆりかごから在宅医療まで」が重要になることは明白です。行政や医療界はその対応に追われていますが、医学教育界では大幅に後れをとっています。医学教育カリキュラムの一部には地域医療が組み込まれるようになりましたが、それらはまだ部分的で表面的です。
本学では、3年前から名古屋市の緑区で、文科省から5年間で約10億円の支援をいただきながら、未来医療人を養成するプランを進めています。未来医療人と聞くとロボット手術とか遺伝子治療とかを思い浮かべられたことでしょうが、その実態は入学直後の医学・看護・薬学の医療系3学部の学生が、緑区の高齢化率が50%を超えた団地で、介護や在宅医療を体験し、その重要さをフレッシュな時に身につけてもらう教育プランです。
この教育は、医療系3学部の教員が連携して行っています。しかし当初の目的を達成するには地域医療人、地元住民、行政などの方々のご理解とご支援が必要です。しかもこのような教育プランは全国でも珍しいことから暗中模索の時もありますが、これからの医療モデルを築くのだとの心意気で取り組んでいます。
「これからの医療の動向」を別の言葉で言うならば、「予防医学から先端医療まで」あるいは「身体も社会も健康」になるかと思います。私たちが学んだ時代の医学・医療とは大きく変貌していることを肌で感じながら大学運営に取り組んでおります。引き続きご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。