鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 腫瘍学講座 放射線診断治療学 吉浦 敬 教授 / 中村 文彦 助教

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放射線科で、切らずに診断・切らずに治療

吉浦 敬(よしうら たかし)
1989 年 九州大学医学部卒業 2014 年3 月から現職日本医学放射線学会 放射線診断専門医 医学博士■専門分野:放射線医学 特に神経領域
中村 文彦(なかむら ふみひこ)
2001 年 鹿児島大学医学部卒業 2010 年9 月から現職日本医学放射線学会・日本放射線腫瘍学会 放射線治療専門医 ■専門分野:放射線治療全般

 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科に、吉浦敬放射線診断治療学教授(下の写真=右)と、中村文彦同助教(同=左)を訪ね、放射線科の仕事について自由に語ってもらった。

「画像」がキーワード

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 放射線科の分野はとても幅が広く、画像診断だけでなく、がんなどの病気の治療も含まれています。「画像」というキーワードでいろいろな仕事が結びついているのが放射線科の特徴です。

 今の診療は、画像なしでは成り立ちません。まず病気を見つけ、次にその病気を診断して治療の判断をする。これらは画像診断の基本的な役割です。さらに治療自体も画像に基づいてやっているのが昨今の状況です。手術でも放射線治療でも画像は欠かせませんし、治療後の経過も画像で見る。つまり、診療の流れのすべてが画像に基づいて行われているということです。

 患者さんに対しても画像で状況を説明し、どんな治療があるのかを伝える。そして結果も画像を見てもらうと、非常によく理解してもらえます。

 最近の画像は、鮮明なうえに3次元の技術などもあり、誰が見ても一目瞭然で、ますます分かりやすい医療となっています。

 画像診断の具体的な方法として、CT、MRI、PET、血管造影などの技術がありますが、ここで大事なのは、得た画像から必要な情報を取り出すことです。画像と病気に関する知識の両方がなければ評価ができません。そこに私たち放射線科医の専門性が発揮されることになります。

 画像診断の歴史は、最初は輪郭だけ、そのあと輪切り(断層像)や3次元でわかるようになり、形のほかに血流や腫瘍の代謝まで見えるようになりました。これからは病変を取らなくても病変の状態が詳細にわかり、治療に反映されるようになると思います。

 放射線科が関わる治療は大きく2つに分けられます。

 1つ目は、いわゆる放射線治療です。最近では的確な治療を担保するために、画像に基づいた高精度の治療計画を行います。もう1つ、IVR=Interventional Radiologyという領域があります。画像診断の技術を使った低侵襲の治療という意味で、例えば血管にカテーテルを入れて抗がん剤を流すとか、血管内だけでなくCTの画像を見ながら病変に針を刺して組織を持ってくる技術など、これも放射線科がカバーしている領域です。

 放射線科は、画像を通じて診療の方向付けを担っていることが大きな特徴で、診療の中でキーになります。診断から治療まで幅の広い仕事を担当していますから、放射線科の中で興味のある領域を選択して、さらに自分を磨けるという魅力があります。

鹿児島県内唯一のIMRT認定施設

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 日本人の死因の第1位であるがんの治療には、手術、化学療法、放射線治療の3種類があります。

 治療戦略としては、組織型や臨床病期、患者さんの全身状態や背景にもよりますが、放射線療法は機能や形態を温存でき、高齢者や基礎疾患のある人にも比較的安全に行える治療法です。

 放射線治療技術の進歩に伴い、照射形状の変化や強度の変化など、さまざまな状況に合わせた治療が行えるようになっています。

 その中で近年、画像誘導放射線治療と体幹部定位放射線治療、強度変調放射線治療=IMRTなど(※)、いわゆる高精度治療と呼ばれる技術が開発され、治療成績の向上と副作用の軽減に大きく寄与しています。

 県内唯一の大学病院である鹿児島大学病院では

このほか、前立腺癌I―125永久挿入術などの内照射も県内に先駆けて行っています。

 画像誘導放射線治療技術は精度・再現性の担保としてほぼ全例に用いられ、体幹部定位放射線治療に関しては、肺・肝における小腫瘍に対して、高齢者や、基礎疾患などがあって手術の困難な場合に行われています。

 IMRTに関しては、鹿児島大学病院は県内で唯一、保険上認められた認定施設で、腫瘍の形に単純に合わせるのではなく、段階的に変化させて照準野内で線量に強弱をつける方法で、不整形な腫瘍で特に照射をしたくない臓器が近接している腫瘍への照射に威力を発揮する治療法で、前立腺や頭頸部領域などで用いられます。当院でも前立腺を主体に、そのほか頭頸部領域や脳腫瘍などでこの治療を行っており、特に前立腺癌では、術後を除いてほぼ全例に、このIMRTを用い、直腸や膀胱は線量を減らすことで副作用の軽減を図り、前立腺には、抗腫瘍効果につながる線量増加を行っています。最近では脳腫瘍領域も増加傾向にあり、特に脳幹部や視神経などに隣接する場合は考慮して行う場合もあります。

 鹿児島県内の鹿児島市立病院、鹿児島医療センターをはじめ、さまざまな病院と交流しながら、X線感受性の低い腫瘍などに対しては、メディポリス指宿の陽子線治療の紹介など、難治がん治療のサポートも行い、さまざまな面から放射線治療という、がん治療を考えています。治す治療とともに症状を和らげる治療という側面も持つ放射線治療はがんの効果的な治療法の一つであり、高齢化社会やがん罹患率の増加を考慮すると、今後さらに放射線治療の役割は増えるでしょうから、その一端を担うことでがん治療に貢献したいと思います。

※画像誘導放射線治療=治療機に透視装置が搭載されるなどにより、これまで以上に鮮明な2 D 画像やCT 画像を撮像することが可能。この画像を毎回の照射の際に撮像し、照射する部位の修正を行なうことによって、これまでよりも高い精度での照射が可能な技術。体幹部定位放射線治療=肺がん、肝がんなどの小腫瘍に対し、数㍉以内の精度で他方向から大線量、少数分割の放射線を集中させる治療。従来と比べ、副作用を軽減し、かつ局所制御率を上げる方法。ピンポイント照射。強度変調放射線治療(IMRT)=ビームの中の放射線の強さを変え、腫瘍の形状に合わせて放射線を照射する治療法の一つ。この方法により正常組織の線量をさらに低減することが可能。


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