みんなの力で、みんなの幸せを | 設立から半世紀を超え、次世代へ理念をつなぐ
日本初の認知症専門病院として、存在感を増しています。
山本孝之理事長=開業当時は脳卒中(脳出血)の患者さんが多く、脳出血は「寝たきりになるか亡くなるか」という時代でした。しかし、私には独自の人生観があって、「自立して自由に生きること、自分ができることで周囲の役に立つことこそが幸せなのだ」と思っていましたので、患者さんを寝たきりにさせることが忍びなかった。そこで、脳卒中の方にも自立した生活を送っていただくために、豊橋で最初のリハビリ病院を開設しました(1962年)。リハビリ学会ができたのが1963年ですから、非常に珍しがられましたね。もっとも、病院運営は一筋縄ではいきませんでした。理学療法士にしても愛知県内では名古屋に2人いただけですので、自分たちでなんとかするしかない。病院の初期は私が独学で学んだリハビリのノウハウをスタッフに教えていました。専門書もない時代ですので、海外から原書を取り寄せて歩行器も作りましたよ。
そのような手さぐり状態を経て、幸いなことに瞬く間に「山本病院に行けば歩いて帰ることができる」という評価をいただくことができました。
認知症についても、アルツハイマー型認知症は完全に治すことはできないにしても、脳血管性認知症ならばリハビリをすることによって症状が改善するのです。当院では、①いつも温かい愛情と笑顔で、②決して叱らず、制止せず、③今できることをしていただく、という認知症介護の3原則をもとに認知症患者さんに接しており、楽しく日常生活を送ることを最優先しています。その理念を一歩進めたのが福祉村構想で、ここでは認知症の高齢者だけではなく、障がい者も自立した自由な生活を送っています。
山本左近副理事長=私たちは、「みんなの力でみんなの幸せを守る」という基本理念のもとに活動を続けてきました。長寿医学研究所や神経病理研究所などの研究機関も有していますが、それだけではなく、身体障がいの方が保育園に花を送ったり、知的障がいの方が福祉村内の仕事を任されるなど、「みんなの力でみんなの幸せを」という理念を徹底して追求しています。
高齢の方に「幸せとは?」と訊ねると、健康であることのほかに「ボランティアなどで役に立ちたい」という声があがります。これまでも、地域の健康教室やレクリエーションなどを「さわらび大学」として提供していますが、これからは地域の65歳以上の方が力を発揮する場としてもニーズが拡大するのではないでしょうか。
地域の高齢者と話すと、仕事なし、友達なし、やる気なし、という、3「なし」状態の方がけっこういらっしゃいます。さわらび大学で勉強して、友達ができて、地域での役割もできる、そのように生きがいを持っていただけると、QOLも向上すると思うのです。元気な高齢者を増やすことがこれからの日本の課題でしょう。
私たちがするべきことは、社会が何を求めているのかを常に把握して提供し続けることです。今後も職員全員で力を合わせ、すべての方が幸せになるためのお手伝いをしていきます。