社会医療法人 共愛会 下河邉 智久 理事長

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常に患者視点に立った医療・介護の提供を職員に徹底していく

しもこうべ ともひさ
■日本外科学会指導医(1996 年)、同認定医(1990 年)、同専門医(2002 年)、日本消化器病学会専門医(1990 年)、日本臨床外科学会評議員(1989 年)、日本プライマリケア学会認定医(2002 年)、日本医師会認定産業医(1998 年)

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―2025年問題に向けてさまざまな社会保障制度の改革案が提案されています。

 官邸や内閣府、財務省などが中心となって、経済財政諮問会議や財政制度等審議会、規制改革会議などを通して、いろんな社会保障制度の改革案が示されていますが、いずれも財政至上主義の観点から医療を機械的にとらえたもので、行き過ぎた医療費削減は医療の根幹を成す安全性を脅かすことにもなりかねません。

 これは、過去に実施された過度の医療制度改革の結果を見ても明らかで、財政のみの観点から医療を捉えていては、安全性が最優先される医療の世界において、その本質を見誤ることになると思います。

 一方において、政府の国際公約になっているプライマリーバランスの黒字化に向けては、政府として収入の確保に本格的に取り組むべきではないかと思います。収支は文字通り表裏一体ですから、医療に限らず無駄な支出を省くのは当然のことで、より多くの収入を確保することで、本来必要な支出のカットを避けなければなりません。

 たとえば、企業に新たな費用負担や手間を与えると評判の悪いマイナンバー制度ですが、これまでアングラマネーとされていた部分からの税収増が期待されます。また、ようやく俎上(そじょう)に載ってきた議論として、日本企業の多くが利益を内部留保し過ぎるために、新たな設備投資や個人消費に回るはずの資金が眠ってしまっているという事実があります。

 そのほかにも本気で知恵を出し合えば、良い案はたくさん出てくるはずです。公平な負担が税の大原則ですから、今後も生産性人口が激減していく日本にとって、抜本的な税負担のあり方は早急に論議すべき問題だと思います。

―最近の医療を取り巻く問題について思うことは。

 病院の関係者にとって、いま一番の関心事はやはり地域医療構想の問題です。区域ごとの地域医療構想調整会議から始まりましたが、厚生労働省自身や関係審議会の主要メンバーらが再三にわたって「病床削減ありきの制度ではない」と言ってきたにもかかわらず、行政関係者の中に「地域医療構想の最終目的は病床の削減・転換だ」と言う人がいるのには驚きました。医療関係者が自院に犠牲を強いてでも、限られた医療資源を地域でいかに有効に機能させていくかについて真摯に取り組もうとしている時に、このような考え方の行政マンがいることは残念です。

 協議の末に必要となった結論と、初めから結論ありきで、その着地点に向けてすり寄せをするのとは全く別であり、医療関係者の気持ちを逆撫でするようなことは厳に慎んでいただきたいと思います。

 地域医療構想に関してはもうひとつ気になる点があります。

 最近、高度急性期を担う大病院が相次いで、病床の一部を地域包括ケア病棟に転換している点で、その多くから「生き残りのため」という発言を耳にします。

 大病院は財政や人材確保の面で、中小の私的病院と比べたら、まだまだ余裕があるほうです。地域の中小病院は行き場のない患者さんを、社会的入院患者などと揶揄(やゆ)されながらも、患者さんの家庭事情などの背景も考えながら、赤字覚悟で対応しているところがほとんどで、本当に厳しい状況です。

 大病院による地域包括ケア病棟化で一番問題なのは、見通しの立てやすい、自院をはじめとした急性期からの患者の受け入れが中心で、地域包括ケア病棟に課せられる本来の機能である、在宅や他施設からの急変患者の受け入れが進んでいないという弊害が現われている点です。

 大病院のケアミックス化は、短期的には自院にとって良いことでしょうが、地域医療を担ってきた中小の私的病院がなくなってしまうことになれば、大病院にとってもメリットのあることではないと思っています。中長期的視野に立った地域完結型医療を進めていくうえでも、中小の私的病院との医療連携を促していくべきだと思います。

 こうした懸念は全国的な問題となっており、日本医師会の鈴木常任理事が中医協の場で孤軍奮闘されておられます。私も日医が提案している、大病院による転換には一定の条件を付して制限を設けることや、逆に中小病院には算定しやすい基準に改めるといった、新たな報酬体系が必要だと考えています。

―共愛会の今後の方針や取り組みを聞かせてください。

 全国的に高齢化が進む中で、北九州市はその代表的な都市です。

 現在、各地で地域の特色を生かした地域包括ケアシステムづくりがはじまっていますが、そこで医療・介護関係者を束ねて中心になっていくのは、地域におけるかかりつけ医の先生方です。

 病院はそのかかりつけ医の先生方の患者さんを、高次検査や急性期治療、救急、リハビリ、入院と、あらゆる対応を通して、かかりつけ医の先生方を支援していく役割に徹していくべきだと考えています。当グループではそのために、常に患者さんの視点に立った医療・介護の提供を職員に徹底しています。

 たとえば、がん治療で言えば、忙しいサラリーマンやOLの方々もたくさんおられます。患者さんの肉体的・精神的負担をできるだけ軽減するために、窓口を一本化したワンストップで、患者さんに応じた多様な治療メニューを提示し、きめ細かな相談を行いながら、一人ひとりに合った治療方針を決め、集学的がん治療に取り組み、多くの時間や手間を要するような複数受診をしなくてすむように配慮しています。

 また、リニアックやサイバーナイフといった最新機器を導入し、身体に負担の少ない治療を実施すべく、新たな設備投資も行い、職員の教育にも注力しています。

 6月から最先端の治療に特化した放射線治療装置トモセラピーを導入し、臨床を開始します。本格稼働する7月にはウェルとばた(北九州市戸畑区汐井町)で市民公開講座も開催することにしています。

 混沌とした難しい時代のなかで、患者さんの信頼を得て期待に応えていくために大切なことは、やはり人間づくりだと思います。職員には、若いうちに世界を感じてもらいたいとの思いから、海外研修にも積極的に参加させています。これからも職員一同、医療提供者として必要な心技体を整え、社会医療法人としてふさわしい医療を、患者さん目線で実践して参りたいと考えています。


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