「よい終末期」を時代が求めている
新年あけましておめでとうございます。
正月早々、全国紙3紙に載った出版大手、宝島社の2頁見開き広告が話題になりました。女優、樹木希林さんが草花に囲まれた小川に横たわり、不思議な笑みを見せるビジュアルが圧巻でした。
キャッチコピーはひと言、「死ぬときぐらい好きにさせてよ」。
平均寿命が伸びるなかで「いかに長生きするか」が注目される日本で、「いかに死ぬか」という死生観の尊重を、が広告のテーマということでした。
日本尊厳死協会は今年、設立40年を迎えました。終末期医療に備えた意思表明書であるリビングウイル(LW=尊厳死の宣言書)を発行して40年の節目の年にこうした広告が掲載されるのも、時代が求めるものを企業の感性がとらえたのだと感じました。
協会が発足した1976年は、自宅で亡くなる人と病院死亡者の割合が逆転した年でした。かつて生老病死という出来事は、家庭や家族のいる生活空間で当たり前に起こっていたのです。病院死が増えるにつれて、本人が望む平穏な死が遠のくようになり、終末期医療のあり方が長年議論されてきました。
いま、10年後の日本を見据えた「よい終末期」の実現が社会の課題になっています。
団塊世代がすべて75歳入りする2025年は高齢者人口が約3500万人とピークに達し、年間死亡者は現在より40万人増の160万人と予測されています。10年後の日本は「超高齢多死社会」のなかにあるのです。
死が避けられないなら、最適の医療を受けながらも無用な延命措置を排除し、納得、満足のいく最期を迎えたい。そのスタートラインにあるのがLWです。
認知症者や独り住まい高齢者が増え、終末期の備えにも新たな視点が必要です。病院でも、介護施設でも、自宅でもよい終末期を迎えることができる環境が整えられる社会をと願っています。