患者の側に立った全人的医療を目指して
―院長に就任されていかがですか。
以前勤めていた藤田保健衛生大学で外科と救急医療を担当していたのですが、そのときにお世話になった先生から打診があり、2012年に当院の副院長に着任し、今年4月、院長に就任しました。
患者さんを診て、手術をして、外来で診察して、というのが私の性には合っています。急なお話ではありましたが、外科の現場に戻るには良いチャンスかなと思って当院に来ました。
これまで病院の経営・運営についてはほとんど経験がなかったので、職員の協力のもとやって来ました。忙しくはなりましたが、できるだけいろいろな会議に出席して現状を把握し、みんなの意見を取り入れながら、その場で決められることは決めていく、という運営を心がけています。
若い人たちがやりがいを感じられる職場にしたいですし、口を出すところは出して、顔が見える組織にしたいですね。
院長に就任後すぐに電子カルテを導入しましたが、副院長の時から関わっていましたし、職員も医師も頑張ってくれたので、比較的スムーズに移行できました。
―「患者さま側に立った全人的医療を目指す」が理念ですね。
この地域は豊川市と合併する前は小坂井町という町だったのですが、そこで開業した青山医院から規模を拡大して現在に至っています。比較的昔から「青山さん、青山さん」と来院される患者さんが多いのが特徴です。
当院には急性期病棟、回復期病棟、慢性期病棟というケアミックスにくわえて検診センターもあります。予防、診断、治療から最後の看取りまで一貫して行うということが理念です。
予防医療という意味では、2012年に検診センターを開設して以降、豊川市や企業の検診、脳ドックなどを積極的に行っています。くわえて、地域の方々に向けた市民公開講座を定期的に行うなど、啓蒙(けいもう)と検診をひとつの柱と考えています。
内科、外科、脳外科、整形外科、サイバーナイフセンターなど、各科においてさまざまな治療を行っています。中規模病院ですので、すべてにおいて完璧にとはいきませんが、できる範囲でなるべく高度な医療を続けていくことが一つの使命と考え、地域に貢献していきたいと思っています。
―院内でのイベントが多い印象です。
当院1階の外来ホールでは、地域の方が描かれた絵や写真を展示したり、院内コンサートを定期的に行うことで、地域の方がたに親しみを持っていただけるよう取り組んでいます。
広報担当者たちだけでなく、職員みんなが自分の役割としてやってくれていることは非常にありがたいですね。
この規模の病院で、やれることに限界はあるかもしれませんが、理念にもあるように「患者さま側に立った医療」をこれからも継続していきたいと思います。
―人材の確保が難しいと聞きますが。
名古屋市内からこの地域へは人材が集まりにくい状況です。そこで、外科と循環器内科については、今年4月に新たな研修システムを作りました。後期研修の3〜4年目であれば、大学に籍を置いたまま6カ月以内は当院で勤務できるというものです。
若い先生にたくさん来てもらえれば、職員の刺激にもなりますし、病院だけでなく、地域全体の活性化にもつながります。そのためには、それなりの知識や技術をもって指導できる医師も含めた人材確保が必要です。
藤田保健衛生大学での経験は非常に役立っていますし、そのときにできた院内の人脈もうまく活用しながら、ここに人を集められるよう努力したいと思います。
―今後の展望をお聞かせください。
10年後には医療制度の大きな編成があるでしょうから、病院の運営・経営側としてはそれに向けた準備や、基準をクリアすることが必要になります。
慢性期病床を減らして在宅医療にするような時代の流れについていかないといけない。その一方で、医療難民や介護難民と呼ばれる人たちを出してはいけません。
医師会の先生たちとも話すのですが、往診や在宅医療をやってくれる先生が以前に比べると増えてきました。しかし、まだまだ充分ではないので、周辺の医療・介護施設と連携をとりながら、病院としては患者さんを集めなくてはいけないし、なおかつ制度にあった医療を行っていかなくてはいけない。状況はますます難しくなっていくでしょうね。
地域包括ケアシステムのことについても、院内・外での会議にいろいろと話題に出ていますが、それもどうなるかわからない。
病床を減らすことによって、老老介護・孤独死が増えて、本当にそれでいいのか疑問ですが、状況を見ながら病院の体系も変えていく必要があるのかなと感じます。
地域に貢献するにはまず、職員がハッピーでないといけません。双方が充実するように、院長としてできることをやっていきたいですね。