三好市国民健康保険 市立三野病院 中西嘉巳 院長

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「安心して生きる」そして、「安心して死ねる」ために地域を守る | 心豊かな老後を送り、次世代へバトンタッチする

なかにし・よしみ▶大阪府立和泉高等学校卒業、徳島大学医学部医学科 卒業/ 1981 年 徳島大学医学部第3内科研究生、同科研修医 1982 年 中村市立市民病院内科医員 1983 年 社会保険栗林病院内科医員 1984 年 徳島大学医学部第3内科医員 1987 年 徳島大学医学部第3 内科助手 1988 年 三木病院内科 1989 年 町立三野病院院長 2006 年 市立三野病院院長(町村合併により名称変更)

●地域医療との出会い

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 徳島県三好郡の三野町で減塩食についての研究などに取り組んだ際、住民の摂取塩分を調べると、1日の摂取量が22gにもなりました。驚いたことに、摂取量が多いことで有名な青森県と同じ量なんです。公民館などで高血圧予防の話をしたりしているうちに、「こういう医療もあるんだ」とだんだん面白くなって今に至ります。

●人生を堪能して大往生

 人間にとって大事なものは人生を楽しみつくすことでしょう。十分に人生を堪能したある日、ストンと死ぬ。つまり、安心して生まれ、安心して育って、心豊かに暮らして、安心して余生を過ごしたうえで、心安らかに最期を迎える。そのお手伝いをするのが理想の地域医療でしょう。

 当院の役割は、超急性期を経て、まだ自宅に帰ることができない方を診ることです。そのため、退院後に入居する介護保険施設とは密に連携をとっています。職員を派遣する仕組みなどは10数年前から始めています。「地域包括ケアシステム」などを見ると、やっと時代が追い付いてきたという感じですね(笑)。

●最後の砦として

 また、徳島大学総合診療医学分野の谷憲治教授の助言をいただきながら西阿波の3病院で後期臨床研修医を受け入れるプログラムを作りました。当院でも、新専門医制度の総合診療専門医が取得できる体制を整えました。また日本リウマチ学会認定施設であり、呼吸器協力病院に認定されています。2年前には、各病院と地元開業医のネットワークを構築し、カルテ写真、所見などを共有しています。

 当院は、住民が「安心して死ねる」最後の砦にならなければならないと考えています。住民が安心して"生きる"事も大事ですが、安心して"死ねる"事も大事なのです。これも地域医療の本質なのかもしれません。

 都会の死と過疎地の死には格差があります。着任した頃の死体検案書は事件性が高いものでしたが、最近では自宅での孤独死が多くなりました。そこで進めているのが在宅医療です。医師が診療に赴く訪問診療も行いますが、医師が少ないと病院の診療ができなくなるので、看護師が行う訪問看護および理学療法士や作業療法士が行う訪問リハももっと増やしていこうと考えています。

 2025年の超高齢化社会の到来に向けて、厚労省は病床数を削減するという方針を打ち出していますが、そうすると団塊の世代を受け入れる施設はあるのでしょうか。このままでは病院は死ぬ場所となりかねません。

●生きる、死ぬ、こと

 高齢者の増加や、無理な延命措置を見るにつけ、改めて尊厳死について考えています。尊厳死、つまり安らかな最期というのは苦痛がなく、みじめな姿でもなく、大切に扱ってもらえていたという思いで亡くなっていくということです。本人も、家族も満足、そして、世話をするスタッフも満足できる、3者が満足するのが尊厳死なのです。

 厚労省に勤めていた方の講演で印象に残っていることがあります。

 ヨーロッパの病院を見学した際、点滴をする高齢者がいないので尋ねると「自分でスープを食べられなくなったら、それは神に召される時なのです」という答えが返ってきたそうです。

 49年前に亡くなった祖父の事を考えましたが、日本でもそうだったのです。みそ汁が自分で飲めなくなったら御仏の元へいく覚悟をして、家で看取っていた。IVH(中心静脈栄養法)も胃ろうも、経管栄養もする必要はないのです。安らかに亡くなる医療の世界を作らなければならないのです。

●食いつぶされる世代

 東北の民話でこういう話があるそうです。

 ある親孝行な息子が年取った母親の面倒を一所懸命に看ていた。それなのに、息子は鬼婆になった母親に食い殺されてしまう。

 私が知るケースでも、認知症の介護で疲労した息子が心筋梗塞で急死したケースがありました。長期の介護は介護する者を経済的に、体力的に破たんさせます。次の世代をつぶさずに生きる、死ぬということをもう一度考える責任があるのではないでしょうか。

 高齢者が若い世代や国家を食いつぶしてはならない。2025年には私も70歳を越えていますので食い殺す立場なのですが(笑)。


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