在宅移行とチーム医療強化をよりいっそう推進したい
―10月の理事長就任で変化したことは。
これまでの院長職というのは、8~9割が「医療の目」。患者さんと接し、医療的な視点で病院を見てきました。
経営は、完全に前理事長。しかし、この10月に理事長となり、そうもいかなくなりました。200人近くいる職員を路頭に迷わせるわけにいきませんから。とはいえ、まだまだわからないことだらけです。今は、いろいろな方に助けていただいています。
理事長になり、少し減りましたが、今も週に1回は当直をします。外来も週に2回、ベッドの管理もこれまでと同じようにしています。
これからは、少しずつ経営的な面へとシフトしていかなければなりませんね。甘いと言われるかもしれませんが、医療的な面から完全に離れたくはないのです。理想は、医療と経営が5対5ぐらいでしょうか。
―宇部第一病院の特徴を聞かせてください。
病床は全部で160床。うち医療型療養病床が128床、回復期リハビリ病棟が32床です。
山口大学医学部附属病院(宇部市)や山口労災病院(山陽小野田市)、宇部興産中央病院(宇部市)といった急性期病院での治療が終わり、状態が安定してきた方の受け入れが中心。当院での治療を経て、7割ほどの方が自宅へ戻られています。
ただ高齢者の場合は、どんどん回復するというわけにはなかなかいきません。筋力の低下などもあり、転倒して再び入院ということもしばしばあります。そして、入退院を繰り返すことで、状態は次第に悪くなっていってしまうものなのです。
そこで、当院では患者さんが自宅に戻られてからのフォローにも力を入れています。訪問看護、通所リハビリ、訪問リハビリがあり、職員が一生懸命に取り組んでくれています。病院が市街地から離れた場所にありますので、病院までの送迎バスを出すなどの対応もしています。
職員個人個人のレベルは高いと思います。患者さんから「よくやってもらった」という声をいただくと本当にうれしいですね。
院内での勉強会や接遇研修に力を入れていますし、学会への参加も奨励。学会に参加する医師、看護師、メディカルスタッフに、年に1回ですが、病院から旅費などを出すようにしています。
自分自身の経験からも、人は、外に出て揉(も)まれた方が伸びる気がします。大阪や東京で開かれる大きな学会にも参加して勉強しているメディカルスタッフもいます。
―今後は。
回復期リハビリにさらに力を入れていきたいと思っています。この病床が常に満床に近い状態になればいいですね。
これまで前理事長が進めてこられた基本的な方向性を踏襲し、在宅への移行とチーム医療の強化を、さらに推し進めていきたいと思います。
―若い人へひとこと。
私は山口県美祢市の出身で、埼玉の大学に進みました。若いころは循環器内科の医師として、カテーテル治療などもしていましたね。当時は毎日ハードで、夜中に起こされることも多々ありました。でも、若さゆえに体力があり、専門性の高い医療をやっているというおもしろさもあって、なんとかやっていられたと思います。
この病院では専門性にこだわると、疾患を見落としてしまいます。専門性は薄れましたが、どんな患者さんでも診ることができる。それはそれで、おもしろいものです。
今の若い人たちは、よくやっていると思いますね。しっかりしていて、まじめで知識があります。
ひとつ言えるとしたら、無理をしすぎないように、ということでしょうか。淡々とやっているように見えますが、これだけ多くのことを知っているということは、かなり詰め込んで勉強しているのでしょう。息抜きも大事、忘れることも時には大事。そうしないと、心身に不調をきたしてしまいます。
繰り返して言いますが、若い人たちは、本当によくやっていると私は思っています。