日本統合医療学会 宮崎支部 森 憲正 支部長(宮崎大学名誉教授)

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西洋医学一辺倒から統合医療の観点へ

1955 熊本大学医学部卒業 1960 熊本大学大学院医学研究科修了 熊本大学産婦人科学助手(医学部) 1962 ~ 1964 米国オレゴン大学医学部産婦人科学教室へ留学 1975 宮崎医科大学教授(医学部) 1990 宮崎医科大学副学長 附属病院長1996 任期満了により宮崎医科大学退職 宮崎医科大学名誉教授 1999 順正学園九州保健福祉大学教授、附属図書館長 2002 九州保健福祉大学副学長 2004 九州保健福祉大学総合医療専門学校校長 2011 九州保健福祉大学総合医療専門学校退職 宮崎統合医療研究会代表世話人 2012 日本統合医療学会宮崎支部長 現在に至る

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―まず、統合医療についてお話しください。

 医療はもともと、人の苦痛を取り除き、あるいは病気を治すために、世界の幾つかの地域で発祥したものです。その中のギリシャの医療が天文学や物理学が発達していた欧州でサイエンス化して西洋医学となり、医学、医療の主流となったと言われています。その結果、現行の医学教育を受けたものには西洋医学を基調とした医療以外は受け入れ難いようです。

 医療の中のごく一部である西洋医学でありながら、科学化してしまった考え方でいくものですから、西洋医学以外の医療はなかなか理解してもらえない。

 明治維新以降、明治政府は範をドイツ医学に求め、現行の医療制度の基礎を築きました。それ以後、西洋医学以外の医療は異端視され、阻害されてきたわけです。自然科学化した西洋医学はますます細分化、可視化して、化学・物理学・生物学的手法で疾患のみを追求し、病人を見ない医療になったといわれています。

 もちろん西洋医学を主軸として進歩してきた制度的医療の恩恵は計り知れず、私自身もそのおかげで現在まで存命出来ていると信じています。初期がん、甲状腺疾患の治療がなかったら、とっくにこの世から去っていたでしょう。でも、進歩した現行制度的医療による治療を受ける患者には、身体の外に、精神、霊もあることが忘れられていると思います。

 西洋医学が目覚ましい進歩を遂げている現在でも、医療と医学の定義は昔のまま曖昧に使用されている。その進歩に応じた医学と医療をより判りやすいように定義されることが望まれます。

―いつから統合医療に。

 かく言う私も大学で教鞭をとっているあいだは西洋医学にどっぷり浸っていました。宮崎大学を退任したあと延岡の九州保健福祉大学の創設に加わり、さらに宮崎市内に看護師と鍼灸師を養成する専門学校を立ち上げました。そこで私は「医療概論」を担当しましたが、まったく世界が違うんです。同じ国家資格の医療職でも、看護師養成は西洋医学に、鍼灸師の養成は東洋医学に準拠しています。医療概論の内容も異なっていることに気付き、宮崎大学に在職中は不勉強だったと、初年度に思い知らされました。

 困っているところに、宮崎中央眼科(宮崎市清水3町目)の土屋利紀理事長から、統合医療を学んではどうかと勧められ、そこで研究会を立ち上げたという経緯があります。中川米造監修「医療概論」との出会いも契機となりました。5年くらい前のことですね。

―宮崎支部の現状は。

 会員数は、21人の世話人もふくめて69人ほどで、まだまだ小さいです。

 世話人会には医師が6人いるほか、歯科医師、看護師や鍼灸師、ヨガ、アロマセラピー、臨床心理学、栄養、運動療法などの専門家が参加しています。世話人会は毎月1回、そして勉強会と称して3カ月に1回みんなで集まって、2人の講師に、各専門医療分野の総論的解説やトピックスを話してもらっています。今は啓蒙の時期だといえるでしょうか。

―統合医療が広がらない理由は。

 問題点として、いろんな分野があってそれぞれに資格や免許がいりますから、一人では「統合医」になれないことです。そこに限界があるんですね。一人ではできないことがいちばんのネックです。

 だから宮崎支部が目指しているのは、各分野の医療について勉強し合うことと、臨床的には医療効果が認められない、あるいはQOLをたかめたい患者さんの症例を、医療機関から支部に提示してもらい、世話人会で検討し、各分野の専門家からのコメントを紹介された医療機関へ返して、医療に反映してもらう。各医療機関からの相談に応えられるモニター的役割を果たし得る支部へ発展することを考えているわけです。この成果を日本統合医療学会に広げられないかと思っているところです。統合医療の実践として提案していきたい。

 なお、この場を借りて、医療者とそれに準じる仕事をしている方は、統合医療について関心を持っていただきたいと伝えたい。そのことで自分自身がいっそう成長し、新たな出会いにもつながると思います。

―これまでを振り返って。

 私は宮崎医科大学産婦人科の初代教授でしたが、今の産婦人科の状況を統合医療の観点から見ますと、妊婦さんに対してサイエンスしか持ち込まないから、母体が感情のある人間であることを忘れているような気がしています。不妊症治療の体外受精法では受精卵を子宮内にかえすまでは生物学的操作で、受療者にとっては相当のストレスになっています。移植後着床するかしないかはヒトの体内です。これからの産婦人科医は、母体の保護と精神の安定のために、ヒトを看る統合医療的なものも知って取り入れたほうがいいではないかと思っています。

―今の趣味は。

 週に一回絵画教室に通い、油絵を描くことです。グループで写生にでかけたりして、完成したら宮崎市主催の美術展に出展しています。


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