第119回 日本循環器学会九州地方会|2015 年12月5日(土)/会場:アクロス福岡

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学会長 上野高史久留米大学病院循環器病センター教授

 12月5日、第119回目となる、日本循環器学会九州地方会が、アクロス福岡(福岡市中央区)で開催された。会長は久留米大学病院循環器病センターの上野高史教授が務めた。九州各県の医療機関を中心に集まった769人が、6会場に分かれて、研究の報告に参加した。あわせて各セッションや教育セミナーも行われ、最新の研究報告を基に活発な討議も行われた。

 開会式では上野会長が「今回の九州地方会は、座長やコメンテーターに若い人を登用し、なるべく早くひのき舞台に立ってほしいという思いで企画した。九州の若手が今後活躍していけるような場を作っていくのがわれわれの仕事だと思っている」とあいさつした。

 本紙では男女共同参画講演、研修医セッションそして、教育セッションの模様をレポートする。

男女共同参画講演

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男女がともに輝く職場環境をめざして―働き方の多様性を考える―

座長:吉田典子・久留米大学健康スポーツ科学センター教授、深水亜子・久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科助教

演題①:健全な循環器治療を運営して行くために女性医師の活躍は不可欠である

演者①:挽地裕・佐賀大学医学部循環器内科准教授

 挽地准教授は、まず、佐賀大学医学部は入学者の女性の比率が50%を超える年もあることを紹介。循環器内科では、医局長や医長といった責任ある立場で数多くの女性が活躍しており、女性責任者が働く姿を、同大学のTAVI(経カテーテル大動脈弁治療)の術中の動画を紹介しながら示した。産休中、あるいは産後復帰している医師も多数いるという。

 その一方で、新専門医制度によって、従来はすでに取得した循環器専門医の更新については学会等の点数があれば可能だったものが、診療が必須になることを挙げ、「考える必要があるのでは」と問題提起した。

 挽地准教授は「高齢社会の中では、女性の参画は不可欠。このためにも画一的でない、さまざまなキャリア取得方法を考える努力が必要です」とまとめた。

演題②:今、男女共同参画に取り組む意義―久留米大学元気プロジェクトについて―

演者②:守屋普久子・久留米大学医学部病理学講座助教

 守屋助教は、久留米大学病院が男女共同参画を進めるために昨年5月に発足した「元気プロジェクト委員会」のメンバーとして、その活

 同委員会の取り組みの柱にあるのが、パート医師制度など。今年4月から、パート医師が一部の診療科に登場、これによって、女性医師が活躍する場もでき、その診療科では収益が上がったほか、患者さんの待ち時間も短縮したという。

 また、カンファレンスの時間を把握する目的で、先月、院内で行った調査の結果も紹介された。それによると院内のカンファレンスのうち午後6時までに終了するものが約60%ともっとも多かったが、6時以降に開始されるケースもあったという。

 守屋助教は、男女共同参画社会を進める意義は、人"財"確保、病院としての経営戦略の一環、環境の見直しや個々人の自己啓発にもつながり、キャリアの積み重ねのきっかけとなると述べた。

演題③:働きやすく、働きがいのある職場環境を目指して〜医療法人寿芳会 芳野病院におけるWLBへの取り組み〜」

演者③:小川美里・医療法人寿芳会芳野病院総務課長兼ワークライフバランス・ダイバーシティ推進室室長

 最後に、芳野病院の小川総務課長兼ワークライフバランス・ダイバーシティ推進室室長が、120年の歴史を持つ同院の10年あまりにわたるワークライフバランスへの取り組みについて報告した。

 この取り組みは、2004年に福岡県の「子育て応援宣言」に登録したことをきっかけにスタート。結婚・出産後も働き続けたいという職員の声を受けたものだという。

 具体的な内容として、男性も取得できる育児休業や、子育てと介護をする職員のための短時間勤務制度などが柱。制度の導入時、運用時のそれぞれの課題を解決しながら、ライフステージに応じて働き続けられる環境作りを目指したという。同院の先進的な活動に、会場からは多くの質問が寄せられた。

 また、この活動が評価され、今年10月、厚生労働省主催の「イクボスアワード2015」でグランプリを同病院院長が受賞したことも小川室長によって報告された。

研修医セッション

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 九州各県の医療施設で臨床研修に励む、若い研修医による研究発表が行われた。4つのセクションに分かれて各6人が登壇。計24人がそれぞれのグループを代表し、日ごろの研究結果を発表した。

■研修医セッション1座長:上野高史・久留米大学病院循環器病センター教授、明石英俊・久留米大学医学部外科学講座血管外科教授

■研修医セッション2座長:冷牟田浩司・独立行政法人国立病院機構九州医療センター副院長、河野浩章・長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学教授

■研修医セッション3座長:福本義弘・久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門教授、北村和雄・宮崎大学医学部内科学講座循環体液制御学分野(第一内科)教授

■研修医セッション4座長:大石充・鹿児島大学心臓血管・高血圧内科学教授、田村彰・天心堂へつぎ診療所・病院循環器内科・睡眠時無呼吸センター長

 演者の持ち時間は各5分。発表に続いて活発な質疑応答が行われた。審査員からは、「持ち帰ってディスカッションの必要性があるのではないか」といった厳しい指摘もあり、会場に緊張感が漂う場面も。

 一方で向川原充・沖縄県立中部病院内科研修医(写真①)による「急性心外膜炎を初発症状とした急性大動脈解離の一例」の演目などには、「難しい症例だがみごとな診断だった」と評価の声もあがった。

 「とても丁寧にまとめられた報告だった」といったねぎらいの言葉がかけられると、緊張の糸が解け、笑顔をみせる演者たちの姿が印象的だった。

教育セッション

■教育セッション1題:DES留置後の抗血小板療法について演者:中村正人・東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授座長:上野高史・久留米大学病院循環器病センター教授

 中村教授は、DES(薬物溶出性ステント)留置後に行う抗血小板療法、特にDAPT(2剤併用療法)について講演。至適投与期間について、「個々の症例に応じた対応が必要だ」と、海外の臨床試験の結果を示しながら語った。

 中村教授よると、長期の抗血小板薬投与が必須とされてきた時期があったものの、最近になって6カ月以上の投与にはメリットが少ないとする臨床試験の結果報告も。そんな中、最近、患者に応じた抗血小板薬療法の期間を判断するための指標「DAPTスコア」が米国心臓協会学術集会(AHA)で発表された。

 中村教授は、このスコアの有用性を含め、国内での大規模な臨床試験データが必要な段階とした上で、カテーテル治療をする際に「長期DAPTが難しいと想定される人の場合にはDAPTの中断が可能なようなシンプルな手技を用いることもわれわれの重要な仕事」と述べた。

■教育セッション2題:重症下肢虚血の治療戦略
演者:宮田哲郎・山王病院/山王メディカルセンター血管病センターセンター長
座長:田中啓之・久留米大学心臓血管外科主任教授)

 下肢の血管が閉塞し、壊死や切断にもつながりかねない重症下肢虚血(CLI)。その治療の第一人者である宮田センター長は、バイパス治療と血管内治療(EVT)後の生命予後や下肢切断の有無を比較しながら、「安易に血管内治療を先行するのは危険」と警鐘を鳴らし、相互連携の重要性を語った。

 宮田センター長は、CLIの定義はいまだ不十分で、予後が良いものと悪いものがあることや、CLIの治療には患者側と術者側それぞれの因子を考慮した手段選択が重要であることを強調。「下肢切断は免れても、足の一部を失う人が多くいる。やはり発症を予防することが大切だと実感している」とまとめた。

 「バイパスとEVTは相補的役割を持つ」と述べた宮田センター長。「内科、外科と分けるのではなく、それぞれの特徴と適応を知ることが大切。キーワードは連携であり、融合である」と締めくくった。


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