社会医療法人 財団新和会 八千代病院 松本 隆利 理事長

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

地域のニーズに応じた医療の提供を

松本 隆利(まつもと たかとし)  1971 年 名古屋大学医学部卒、名古屋掖済会病院、名古屋大学附属病院、東海市民病院、名古屋第二赤十字病院などを経て、1997 年6 月に八千代病院院長に就任。2006 年4 月より理事長併任、2013 年4 月理事長専任に。

 八千代病院は、地域住民がそれぞれの状態に応じて適切な医療・介護を切れ目なく受けられるように、院内に救急・急性期から在宅までの、切れ目のないスーパーケアミックスを整備。地域との連携も深めてきた。

 この取り組みが評価され2015年10月に国際病院連盟主催第39回世界病院会議において「国際病院連盟賞優秀賞」を受賞した。

c15-1-1.jpg

◆医療の最適化

 私が院長に就任した1997年当時の愛知県安城市の人口は15万人ほどでしたが、現在は18万5千人と増加傾向にあります。また当時の高齢化率は12%。現在は18.5%です。全国平均よりは低いですが、その分、ほかの地域から遅れて高齢化するのは言うまでもありません。

 高齢者が増加すると状態に応じたリハビリが必要になるし、療養病床が必要になる。求められる医療は時代とともに移り変わっていきます。

 安城市北部の急性期は主に当院が担い、南部の急性期や災害医療などは安城厚生病院が担っています。

 当院は、もともと急性期病院でしたが、地域の医療需要に応えるうちに慢性期、在宅など徐々に守備範囲が広がってきました。

 私の地域医療の考え方は、十分な連携をとったうえで医療を最適化すること、つまり患者さんから見て穴がない医療を提供することなんです。

◆顔の見える関係の構築

 高齢になると病気を併発し、介護が必要になる人がいます。そのような人は生活の支援が必要となってくるので、医療、介護、支援といった3つの要素がからんできます。すると施設との連携、最適化が求められます。

 そこで安城医療福祉ネットワークをつくりました。このネットワークは120以上の施設が会員になっていて、安城市だけでなく、周辺の刈谷市、豊田市、知立市の施設にも参加してもらい、顔の見える関係を構築しています。

 病院運営においては市長、町内会長、議員などに参加していただき運営会議を開いています。当院は社会医療法人であり、病院は理事長や院長のものではなく地域のものだという考えから、地域全体での病院運営を考えているんです。

◆スローガンは「いきいきと豊かに」

 患者さんをいつでも受け入れられる体制が「スーパーケアミックス」と呼ばれるものです。しかし、何でも診ますという意味の取り組みではなく、地域の医療事情に応えて医療を提供していくうちに出来上がった仕組みなのです。

 高齢者医療を行う上では、いろいろな分野を扱う必要があり、診療科を増やす必要があります。経営的には選択と集中が最も合理的なのですが、患者さんの立場からすると遠くの病院に行かなければならず、不便です。

 われわれは患者さんの立場からみて使い勝手の良い医療機関であり、介護・福祉とも切れ目なくつながった医療機関でありたいと思っています。同時に予防的な啓発や早期発見という意味で健診センターも充実させました。また、地域の健康に関する市民公開講座などで話をさせてもらっています。

 当院のスローガンは「いきいきと豊かに」です。この言葉には健康寿命とその人の寿命を限りなく近づけたいとの思いが込められています。当院ですべてをできるわけではありませんが、可能な限り、そのお手伝いをしていきたいと思っています。

 東京、大阪、名古屋などの大都市は専門に特化した病院が成立しますが、地方では、いろいろな機能を持った複合的な病院が必要です。個人的には介護、福祉領域が病院内にあってもいいのではないかと思うのです。

◆地域のニーズに応える

 この地域は昔、農村地帯で、病院が不足しており、住民は病院にかかりたくてもかかれない状況でした。それを憂えた地域の有力者、田中純平氏が、1900年に私財を投じて開業したのが当院の前身の田中病院です。

 戦時中は軍需工場の付属病院、戦後は紡績会社が所有していた時期もありました。紆余曲折がありましたが、その間も一貫して地域の病院でありましたし、これからもその姿勢は変わりません。

 安城市は広大な平野を有し、昔から農業が盛んな地域でした。養鶏業も盛んで、かつては「日本のデンマーク」と評されたこともありました。明治用水もこの地域の先人たちが苦労してひきました。自分たちの住む地域は自分たちで守っていく、未来に向かって育てていくという気概が強い地域なんでしょうね。そういう意味では医療も同様だと思っています。自分たちで地域に必要な医療を提供していき、地域のニーズが変われば必要に応じてわれわれも変化していきます。

◆人口構成を鑑みた医療の提供を

 現在、医療費は高騰し、人材確保も困難な時代です。そこを地域全体で足並みをそろえて最適化していくことが求められます。キーワードは「ニーズ」です。経営においても収益をあげる部門とそうではない部分がありますが、地域のニーズをしっかり把握してトータルでみて赤字にならないようにしながら全体を最適化する努力が必要です。

 地域に必要な医療、介護、福祉を提供するために何が求められるか。重要なポイントは高齢化です。人口推計は日本創生会議が出しているように地域によってばらつきがあります。

 人口には流入流出の問題が大きくかかわってきます。たとえ出生率が高くても、ほかの地域への流出が高ければ人口は減る。東京で出生率が1.1%ほどでも人口が増えているのは流入が多いからです。

 人口の流入と流出においては産業の動向が大きいですね。安城市もトヨタ自動車の影響は無視できません。もし工場を海外に移すことになれば、もろに影響を受けてしまうでしょう。

 少子化対策といってもどの年代がその地域に多いかで対策が変わります。高齢者が多い地域で子供を増やそうとしても、出産できる年齢層が少ないのでは何の効果もないでしょう。同様に人口構成を鑑みた医療の提供が必要なので、今後も人口推計や産業の動向を注視していかなければなりません。

◆いろいろな角度から物事を見てほしい

 医療従事者だけでなく、今の若い人には一つの事象に対して様々な角度から見る目を養ってほしいと思っています。

 教科書や新聞に載っていることがすべてではありません。歴史の闇に埋もれた真相を解き明かす知的探究心を持つことも大事です。

 病院運営も同様です。いろいろな角度から、いかに今後の地域医療を提供していくかを真剣に考えなければならない時期に来ています。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る