成長した姿を見るのが喜び
■未来ある子どもたちのために
当科は大学での講座名を小児外科学、病院での診療科名を小児成育外科と呼称していますが、中四国では数少ない小児外科学講座の一つです。
一般に「小児」とは0歳から15歳までの子どものことを指しますが、小児成育外科はもっと広く、胎児期から成人を過ぎてもその患者さんを一貫して診ていく、という意味合いが込められています。
小児外科診療においては他科との連携が欠かせません。香川大学医学部附属病院ではカンファレンスなどを通じて小児科、産婦人科、外科、麻酔科などと密な連携を取り合って診療を行っています。
大学では、小児外科の診療だけでなく、臨床上の難問解決のため、研究にも力を入れることが求められています。現在、当講座では、臨床研究では胃食道逆流症や腸管内フローラの研究を、基礎研究では低酸素虚血性脳症の動物実験モデルを使った多臓器障害の研究をしています。
本日、胎便性腹膜炎を患っていた1歳9カ月の患者さんがお母さんと外来に来てくれました。この病気は、お母さんのおなかの中にいるときに消化管に穴が開き、 胎便がお腹の中に漏れて起こるものです。生まれた直後はショック状態で手術を10回以上行いました。
かなり重症だったので、障害が残るのではないかと心配していましたが、元気に育っているようなので安心しましたね。
小児外科は、自らの技術で患者さんを治すことができます。体にハンディを負った子どもさんを自分の手で助けて、その子たちが成長していく姿をみることが小児外科医の最大の喜びで、この仕事を続けていくモチベーションになっています。
少子高齢化社会が叫ばれて久しい日本ですが、小児外科は未来ある子どもたちを救うことで、社会に貢献できる科だと自負しています。
■小児外科医に求められるもの
小児外科医に求められる資質は、何よりも子どもが好きなこと。小児科と小児外科のどちらを選ぶかは、治療手段の違いだけなので、自分に合っていると感じた方を選べばよいと思います。
若い医師は、自分が興味を持ったことをとことん追究する姿勢を持ち続けることが大事だと思います。疑問に思うことがあれば、調べたり、先輩に聞いたりする姿勢を忘れないでください。その経験が財産となり、10年後、20年後には大きな花を咲かせます。
■自分の手で患者さんを救いたい
私が小児外科を選んだ理由は、手を動かすことが好きだったこと、将来のある子どもの診療に関わりたかったこと、それに、当時は小児外科が世間であまり浸透していなくて、選ぶ人が少なかったこと、などがあげられます。
将来を決める際、夢や希望も必要ですが、自分に合っているかどうかも大事な要素だと思います。私自身、これまで悩み、迷いながらも、最終的には「自らの手で目の前の患者さんを救いたい」との思いが自分の中にあることに気づき、今日に至っています。
■優秀な人材を全国に、世界に送り出したい
小児外科は、小児科や外科が手の届かない範囲を担当しています。香川大学の先生たちは重要さを理解してくれていますが、全国的にみるとまだ認知されていないのが現状かと思います。
小児外科ほど大学に講座が少ない科はあまり例がないので、小児外科を創設してくれた香川大学には感謝しています。
今後は、多くの人に小児外科の魅力を知ってもらい、実際に当教室の門を叩いてもらうこと、教室員を国内や国外に派遣し、幅広く勉強してもらうことを目標にしていきたいと思っています。