医療法人 玉昌会理事長 加治木温泉病院 院長高田昌実
―今年7月の日本版CCRC構想有識者会議で「姶良JOYタウン」構想が紹介されました。
CCRC(継続介護付きリタイアメント・コミュニティ)を使って街づくりをする、地方創生に協力をする、というのは2007年ごろからずっと考えていました。
病院移転を前提にしているものの、計画が進まない理由がいくつかあります。診療報酬改定と介護報酬改定がひんぱんにあることも大きな原因です。最近の改訂は根本をひっくり返すような形で行われていますから、小手先の対応はできない状況です。
病棟再編をグループ内の高田病院と加治木温泉病院で行っていますが、そうすると、設計図を描いている余裕はないし、時代に合った、国が求めるようなものに変換していかざるをえない。
現在、私が院長をしている加治木温泉病院のことからお話ししますと、リハビリに関してはどこの病院にも負けない自信があります。地域包括ケア病棟も取得しておりますし、在宅復帰強化型病床も2病床置いています。
さらに、2年後に廃止が決まっている介護療養病床もありますので、その病床をどのように転換させるべきか、そういったことに取り組んでいると、なかなか新病院建設が進まないですね。
―医療という枠を超えて町づくりに力を貸していくのでしょうか。
姶良・伊佐2次医療圏(人口25万人)の中で、350床の回復期・慢性期病院として機能してきたのは、やはりそれなりのニーズがあったんだろうし、これからもあると思います。
2040年には姶良・伊佐地区は人口が5万人ほど減少して20万人になります。そのときに、地域医療ビジョンの中で、私たちにどのような役割があるのか、あるいは役割を果たせるのか協議しているところです。
―人口減少について、真剣にビジョンを出す時期でしょうね。
私がなぜこんなことに気付いたかというと、2013年に増田寛也さんが『中央公論』の「壊死する地方都市」という特集に書いた論文を読んだからなのです。それからずっと追いかけていて、この論文があったからこそ地方創生事業が動いていると言っても過言ではないと思います。
地方に高齢者だけが帰ってきてもらっても困る、と言う人もいますが、そうでしょうか。60歳くらいで帰ってきて、将来は介護保険を使うかもしれないけど、それまでは働いたり、地元にお金を落としたりするのです。
日本中で高齢者が街に集まってきています。これは避けられないことで、それを前提にして医療、介護を含めた街づくりを考えなければならないでしょう。