医療法人仁祐会 小鳥居諫早病院 小鳥居 湛 理事長/院長
■精神保健指定医 日本睡眠学会認定医 日本精神神経学会専門医および専門医指導医 卒後研修指導医 日本精神神経学会元評議員 日本睡眠学会元評議員 Sleep Research Society
小鳥居諫早病院のある諫早市栄田町周辺は、市の条例で、自然景観に富んだ風致地区に指定されている。なるほどそれで家々の間にも緑が多いのだなと思いながら、病院までの長い坂を上がった。
「ロータリークラブで2回、甲子園球場で親善試合をしたことがあるんですよ。ポジションはセカンドとライトでした」と小鳥居理事長。下の写真は左がデイケアセンター「ヒュッゲ」。右は西病棟玄関そばにある小さな像。心が和らぐようにとの配慮だそうだ。(9 月25 日)
精神科医療では、やさしく接することが特に大切で、当院では「患者さんに心の平和を与えられるような医療・看護をやろう」を基本心情としています。
患者さんによっては、心の中は闇や戦場のような状態ですからね。
―でも相手の内面は見えません。どう近づくのですか。
経験上、病気のタイプや状況は察知でき、それに従って対処していくわけですけれども、日ごろからスタッフには、精神科の感性を磨くようにと言っています。
それは患者さんのつらさや悩み、不安などを察知して共有する能力、そこから起こる、対処に向かう心の動きということですが、それができれば、安心感を与える気の回しとさり気ない行動が生じ、やさしさとなるのではないでしょうか。
―出口の見えない人にどう出口を指し示すのですか。
共に歩くというようなことでしょうか。後戻りしたり横道にそれたりしながら、常に寄り添っているというような感じで、ずっと一緒にいることはできませんが、連続性のあるような接し方をすることだと思います。
―専門の睡眠障害について話してください。
精神科の病気の急性期はほとんど睡眠障害を伴います。
不眠は精神疾患の前兆であったり、症状を余計に悪くするので密接な関係にあります。したがって睡眠を研究することは、精神科全般に関わることになるし、ひいては精神疾患の究明にもつながるのではないかとの思いで携わりました。
睡眠障害は国際分類では100種類くらいあります。よく知られている睡眠時無呼吸症候群は、最近は内科や耳鼻咽喉科の先生が診るようになりました。
我々のところに来る人は、うつ病に伴う不眠など不眠症が多いのですが、ナルコレプシーなどの過眠症―眠くなる病気や、朝の起床困難を訴えて受診する若者が増えています。学生は学業成績に影響するし、社会人になって居眠りや遅刻が多ければ、仕事のミスや事故につながるし、不眠症以上に深刻な問題です。
ほかにも睡眠中の夢が危険な行動になって現われる病気や、夜になると下肢の異常感覚のため不眠を生じる病気も少なくありません。
こうした病気はもちろん昔からあったのでしょうが、睡眠について客観的に多くの情報を同時に測定できるようになり、1978年に初めて睡眠障害の国際診断分類が作成されました。1981年に久留米大学病院精神科で、日本で最初の睡眠外来が開設されましたが、私は立ち上げの時からのメンバーの1人でした。
―日常生活で睡眠について知っておくべきことは。
わが国ではアルコールを睡眠薬代わりに服用している人が多いのですが、4〜5日続けて飲むと、主観的にはよく寝たつもりでも、脳波的な睡眠の質はとても悪くなります。アルコールに比べると、睡眠薬のほうが自然の眠りに近いし、依存の問題も含めて、連用するなら睡眠薬のほうがまだいいですね。
ところで、人間の体には約1日周期のリズムがありますが、体温も夕方が1番高くて、早朝が最も低くなります。睡眠をとる時間帯もそのリズムに同調させたほうがいいわけで、時間でいえばセブンイレブン=7時に起きて11時に寝る。この時間帯に寝れば、質のいい睡眠がとれることになります。
―なぜ医者になろうと。父親が精神科の医者
父親が精神科の医者で、2人の兄も精神科医です。私は小児科医になろうとも考えましたが、精神科のほうが父や兄とも話が合いますからね。
わが家は医業として10代続いているんですよ。長崎県の波佐見町で、記録によれば1728年からのようです。そうした環境背景もあったと思います。
精神科は人間にしかない心、高度の脳の領域を扱う医学の分野で、それは広いし深いし、今でもわからないことだらけで、そこも魅力です。
―趣味は。
野球観戦で、子供のころからの阪神タイガースファンです。バース、掛布、岡田の前、村山、小山の時代からで、兄が2人とも巨人ファンでしたから、私は阪神ファンにさせられていたんじゃないでしょうか。