サイエンスは思いやり

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福岡大学 朔 啓二郎 医学部長・理事

1978 年福岡大学医学部医学科卒業、2000年4月福岡大学医学部心臓・血管内科学主任教授、2013年12月同医学部長。所属学会: 日本循環器学会(理事・専門医)、日本心臓病学会(理事・FJCC)、米国内科学会上級会員(FACP)、米国心臓病学会上級会員(FACC)、全国医学部長病院長会議(理事)

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趣味を尋ねたら表情をゆるませ、「芝刈り。庭の芝をきれいに刈り込んで、ゴルフ場のグリーンみたいにしていますよ」。(撮影=9 月15 日)

 心臓・血管内科学の主任教授に加え、2年前の12月には医学部長に就任。分刻みの多忙な毎日を送っている。医学部長としての思いや、福岡大学の医学生に望むことなどを中心に聞いた。

―医学部長として重視していることは。

 今、医学教育は臨床の視点、臨床実習を実質化する卒前教育が問われています。そこを非常に重視しています。ですから、医学部としての国際認証とも絡まって、臨床実習も72週くらい必要だという声もあり、医学教育は転換期に来ています。そこで、診療と非常に密接な、臨場感のある医学教育を目指すという意味で私が医学部長になったと思っています。

―専門医よりも総合医をという声をよく聞きます。

 今年3月に卒業した人たちから新しい専門医制度になります。今まで学会が認定していたわけですが、専門医機構が認定する。それは、どちらかといえば、ゼネラルをベースとして、その後に専門医の方向に進む。でも、あまりゼネラルを重視しますと、専門医教育に入る年齢が高くなります。30歳過ぎて次のことを勉強するというのは、なかなか難しい。大学受験で1〜2年浪人して、6年かかって医師になって、初期研修、あるいは後期研修合わせて6〜7年。それからまた専門医のトレーニング、そういった部分が一つ大きな問題になりますね。研究する時間すらとれないのではと危惧します。

―どんな医療者になって社会に出てほしいですか。

 正しい倫理観を持って、良医であるということが重要な要素ですね。そして専門的な知識と技量を持つことは当然のことで、医療人として優秀な人を育てたいわけです。

―なぜ医者になろうと。

 一番の理由は父が医師だったこと。竹下(福岡市博多区)で開業していました。祖父も曾祖父も、ずっと医業に携わっていました。黒田藩の藩医の家系でしたから、親和性が強かったんです。だから当然医学部に。生まれた時からミッションのようなものが、環境にも私自身の中にもありました。

―高齢化社会の今、新しい薬やiPS細胞も出てくる。医学はどうなりますか。

 医学は日進月歩です。いろんな形で進んで行くけれども、それは患者さんに提供するオプションの数が増えるのですね。要するに薬や手術の種類など、治療法が増えるわけです。そして、それを選択するのはあくまでも患者さん。そのような説明をきちんとできるためには、知識と能力と診断力がないと適切にやれません。90歳や100歳の人に、60歳の方と同じ治療をすることにはならない。そういったことが分からなければいけない。死生観とか倫理観とかが必要なんじゃないかと思います。そしてそれらは社会の中で醸成していかないといけないのです。

―医師が自ら正しくあろうとするのと、患者にとって良医であるのと、そこに乖離(かいり)はありますか。

 良い医師かどうかというのは永遠のテーマです。患者さんの病気のステージによっても違いますね。予防を重要視している場合もあるし、がんの手術のレベル、それから、末期の状態。さらには、社会の変化によっても異なってきますが、やはり、医師の側ではなく、患者さんが決めることです。ただし患者さんにも個性がありますから、医師への評価はずいぶん変わってくるでしょう。患者さんは医師を選べても、医師は患者さんを選べませんからね。

―医療者になろうとして勉強している若い人に励ましの言葉をかけるとすれば。

 大いにチャレンジしないといけないですよね。やはり「サイエンス」ですからね。時間をかけてサイエンスを勉強することが必要だと思います。サイエンスを「科学」と訳すのではなく、そこは「思いやり」と訳すんです。これは僕の座右の銘ですけどね。サイエンスというのは、人に対して優しくなれる学問ではないかと。そこを追求するわけですから、一生勉強する。そして、何を成し遂げたかではなくて、何のために医師になったか・何を求めて医師になったかを忘れずに、継続することだと思います。


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