精神科の特殊性に安住しない ―当たり前の医療、サービスを―

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公益社団法人 岐阜病院 鈴木 祐一郎 理事長・院長

■略歴:1983 年名古屋市立大学医学部卒業。1996 年名古屋市精神保健指導センター所長、1999年社団法人(現公益社団法人)岐阜病院副院長、2003 年岐阜県立多治見病院精神科部長、2008 年岐阜病院長、2013 年同病院理事長・院長。医学博士、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。

―岐阜病院の特色を聞かせてください。

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 1928(昭和3)年創立の岐阜県では最も古い精神科病院で、規模も県内では1番大きくなっています。

 昭和30年代から50年代までは統合失調症の患者さんが主でしたが、今はそれだけにとどまらずもう少し広い範囲の患者さんがお見えになり、外来ではうつ病の患者さんが多くなっています。

 さらに高齢社会の進展とともに認知症の方に対する治療的サポートを担うことも必要になってきました。認知症専門の病棟ができていますし、認知症疾患医療センターの指定もほかの病院とともに受けています。

―力を入れていることは。

 最も力を入れているのは精神科救急。ここは県下で1番初めにその許可を受けた病院で、11病棟のうち3つがさまざまな施設基準をクリアした精神科救急病棟です。

 精神科の患者さんは、医療者側が努力を怠るとどうしても長期入院になりがちです。ですから、精神科救急病棟の基準に合うような短期での退院を目指すならば医師も治療努力をしなければならないし、看護師も深く関わる必要がある。さらに精神保健福祉士は退院調整を家族や地域と連携しながらうまくやっていかないといけない。要するに、そこに多職種の人的資源をかなり投入するわけです。

 それによって、3カ月以内での退院が6割という精神科救急病棟の基準の中で、当院では8割ほどの患者さんが3カ月以内に退院しています。

 また地域連携室を中心に他の病院や診療所と密に協力して、スムーズに入院受け入れや退院を図っています。8月からは訪問看護ステーションも立ち上げて、患者さんの地域での生活を支えています。

―医療従事者の教育はどのように。

 精神科にはかつて、精神科だけの特殊性に安住していたところがあったと思うんですね。それを内科や外科の総合病院の基準に適合するような「当たり前の質」でやらなければいけないというふうに思うわけです。「精神科だからこの程度でいいや」ではだめですよね。

 それは医療にしても、サービスにしても、です。細かいことで言えば、給食のおいしさも患者さんにとっては大事なこと。大学病院や総合病院より長い期間入院する人が多いのですから、「まずくても仕方ない」と我慢させるのは申し訳ない。接遇サービスについても精神科だからこそ重要だと思います。

 世間の当たり前に追いつかなければいけない。そういう意味での研修が非常に大事だと思っているんです。ですから院内研修や院外での研修会にも職員には積極的に参加してもらっています。

―研修医の受け入れについては。

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 大きな総合病院の研修医は、その病院に精神科病棟がない場合、当院に、精神科の臨床研修にいらっしゃいます。

 その方たちに対しては、精神科の臨床の現場をできるだけ実際に見て体験してもらっていますし、精神科的な物の考え方や関わり方をできれば身につけてほしい。そして、内科医や外科医になった時にもそれを生かして患者さんに接してほしいと願っています。さらには精神科特有の薬の使い方の知識も少しでいいので持ってくれたらうれしいですね。

 精神科をほとんど知らずに医者になった方たちには、まだまだ精神科医への偏見があるように感じます。ですから、この病院で実習していただくことによって、それが少しでも解消できればという気持ちがあります。そして、同じ医療を提供しているんだという感覚を持って内科医や外科医になっていただきたい。本音を言えば、精神科医になってほしいんですけどね。

―最後に医師を目指す方にメッセージを。

 医者を選んだということは、直接的に人を助ける、病気になった人を助ける仕事を選んだということです。でも、職業に慣れてくると、そういうことは忘れがちなんですね。若い人にはいつもその基本に立ち返り、自分の仕事の意味を考え行動してほしいと思います。


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