ピンクリボンかがわ県協議会 香川県医師会 久米川 啓 会長
■ピンクリボンかがわ県協議会発足10年
香川県でのピンクリボン運動は、増え続ける乳がんに危機感を抱く医療関係者らの働きかけにより始まりました。2005年、医療関係者、企業、女性団体、患者会で構成する「ピンクリボンかがわ県協議会」(通称ピンクリボンかがわ)が発足し、乳がんから命を守る運動として早期発見の決め手となるマンモグラフィーの普及を柱に、さまざまな活動を展開してきました。
県内でマンモグラフィ―を設置している医療機関のネットワーク「ピンクリボンかがわ県協議会メディカルネット」ではマンモグラフィー検診実施状況の調査や医療従事者向けの講習会、講演会などを実施しています。同ネット加入の医療機関数は、発足当初の34機関から40機関へと増加しています。
乳がんの早期発見・検診受診率向上を訴えるピンクリボン運動を効果あるものにするためには、乳がんを取り巻く環境の把握が欠かせません。この10年間、その任に当たり運動を下支えしてきた存在が、このメディカルネットです。
全国各地のピンクリボン運動は、啓発活動を主体に活動しているところが多いですが、香川ではマンモグラフィー検診の受け皿づくりを重視しています。メディカルネットの講習会などによって最新情報の共有、知識・技術のレベルアップを図っています。
厚労省は「第15回がん検診のあり方検討会」(2015年7月30日)において、乳がん検診のあり方についてマンモグラフィー検査を必須として、視触診検査は任意としました。視触診に比べて精度が高い超音波検査法は、検診の組み合わせ次第で受診率や制度の向上に一役買う可能性があるため、導入が待たれるところです。そのためにも今後は超音波検診の受け皿づくりを進めなければなりません。
■全国ベスト5に入る乳がん死亡率の低さ
日本人女性の12人に1人がかかると言われているのが乳がんです。県内では元香川労災病院副院長の鶴野正基氏が古くから乳がん検診を進めてきたこともあり、全国的にも早くから乳がん検診が始まりました。
香川県の乳がん死亡率は非常に低く、全国ベスト5です。検診受診による早期発見の効果だと言えるでしょう。
県で本格的にマンモグラフィー検診が始まったのが2005年です。その後、マンモグラフィー装置の整備が拡大され、撮影技師や読影医師が充実、乳がん検診実施医療機関が徐々に増加しました。
当協議会の調べによると、保険診療を除く県内のマンモグラフィーの撮影件数は、2012年が約57,000人と2006年の36,000千人に比べ、約1.5倍に増加しています。
■乳がん啓発の取り組み
2005年12月にスタートイベントとして高松冬のまつり「ピンクリボンデー」を開催。その後もジャズコンサートやバスケットボールbjリーグの試合会場でのイベントなど、毎年地域に密着したイベントを開いてきました。
2009年には女性に人気のスイーツとのコラボレーションによる啓発イベントを開催。マスメディアを通した広報活動も功を奏して、女性やファミリーを中心に大いに関心を集めました。
一昨年からは、乳がん予防の意識を高めてもらおうと、「ピンクリボンいくしまウォーク」というウォーキングイベントを実施して、乳がん検診の重要性をアピールしています。今年は10月25日に開催する予定です。
香川でピンクリボン運動が始まって10年。さまざまな啓発活動の甲斐あって、乳がんの早期発見・検診受診の重要性に対する認識は高まり、受診率も徐々に向上してきています。ただ目標とする50%への道のりはまだ遠いですね。一般的にがんは高齢になるほど増えますが、乳がんは家庭や社会の担い手となる若い働き盛りの女性に多いのが特徴です。これまでの運動は女性が中心でしたが、男性も自分や家族のこととして理解しておく必要があります。
■香川県医師会会長としての思い
県の医師会長に就任して1年半が経過しました。急速な高齢化社会の進行で日本の医療体制は曲がり角にさしかかっていると日々、感じています。
今こそ現場の実態を把握しているわれわれが声をあげなければならない時期なのではないでしょうか。
日本の医療を支えているのは医師会であって政治家ではないんです。