愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻 病態制御部
門外科学講座 消化管・腫瘍外科学分野 教授
愛媛大学附属病院 渡部祐司 副院長
昨年3月に続いて2度目の登場となる。今回はロボット支援手術の見通しとがん征圧への取り組み、患者との関わり方を中心に聞いた。
1990年くらいから、患者さんに負担の少ない低侵襲の手術に取り組み、成果を上げていることは前回お話ししました。
ダヴィンチは今年4月に、当院でのロボット支援手術100症例を記念してメーカーから記念の盾をもらいましたが、依然として前立腺がん以外は保険の適用外です。
安全・確実で費用に見合うメリットがあれば、保険診療として認めてもいいと思いますが、通常の内視鏡手術でさえ色々と問題が起こっている状況ですから、ロボット手術が広まるにしても、施設限定でやるべきだと思います。とはいえ自費診療は高額すぎて、払える人と払えない人で医療格差が生じますから、先進医療として認めるのが妥当ではないかと思います。また、保険診療になれば手術のきちんとできる施設認定をすればいいと思います。
―9月はがん征圧月間です。
私はブルーリボンキャンペーン(大腸がん疾患啓発活動)の愛媛県のアンバサダーをつとめさせていただいています。
愛媛県での大腸がんの検診を受けている人は4人に1人で、それをまず上げなければなりませんから、市民公開講座を今年になって2回ほどやりました。
アンバサダーの活動としては、12月5日にはここ(東温市)に200人くらい集まっていただいて大腸がん治療についてわかりやすく説明します。そろそろパンフレットができてくるころで、大学や愛媛医療センター、東温市も巻き込んで、市全体の動きになればと思います。おれんじの会の松本陽子理事長に司会をお願いしようと考えています。資料ができましたら中四国医事新報にも送りますので啓蒙活動にご協力ください。
―地域医療との関係は。
地域医療との連携は重要なキーワードだと思います。
開業医の先生方や、慢性期、急性期病院が連携して機能分担する基本方針が徐々に固まってきつつあると思います。そうしなければ最適な医療を提供できなくなると思います。
―県の緩和ケア研修会を受講したと聞きました。
私は緩和ケアを専門に学んだわけではないし、現場で勉強したことしか知らないので、きちんと知っておく必要があると思いました。看護師さんはもちろんメディカルスタッフは全員受講したほうがいいと思います。
ーアンバサダーの目的は。
みんな病気は怖いし、私も怖い。でもその怖さは漠然とした対象に対する怖さも含まれ、実際に詳しく勉強してみると、どうやって治そうかという前向きな考えに至ります。これは患者さんも同じで、勉強することは重要です。実際、大腸がんなら手術で80%は治癒する時代です。そんな時代ですから、まずは早期発見が重要になります。一方、胃がんや食道がんは大腸がんに比べると治療成績では厳しい面もあります。そこで、女性を含め増加傾向にある大腸がん検診を啓蒙することから始め、その後いろんな病気に広げていったらいいと考えています。次は胃がんに関しても活動をやろうかと思っています。
―患者さんに接する時の心構えは。
セカンドオピニオンで私のところに来られた患者さんのお話を聞いてみると、それぞれの病院でいい治療をしているのに、ちょっとした心配りができていないというケースが見られます。親身になり患者の話を聞いてあげるということができなければ、いくらいい手術をしても患者さんは信頼してくれないと思います。我々医者は、患者さんの声をきちんと聞くというベースの上に技術や知識が積まれていくのだと思います。
―今後の展開や構想は。
愛媛県の医療は我々に任せてほしいとの思いで、どこにも引けを取らないという自負はあります。緩和医療などもこれから充実させ、豊かな自然環境の中で終末期を暮らしたり、術後しばらく快適な自然の中で過ごしたり、愛媛県ならではの、満足していただける環境づくりを進めたい。そのために愛媛大学の医療構想として、市と地場産業と共同で医療環境を整備していくことに取り組み始めています。