高校時代、剣道部の夏合宿では毎朝、警察道場で機動隊の猛者の手ほどきを受けた
▼もっとも、手ほどきというほど剣道はさせてもらえなかった。竹刀ははじきとばされ、なぜか投げ飛ばされ、床に這いつくばると容赦なく蹴飛ばされた。玄関で吐いたこともあり、要するにむちゃくちゃだったのだ
▼当時の常識としては稽古中に水を飲むなど言語道断で、稽古が終わると唾液も出なかった
▼理不尽な夏から30年、現在の洗練されたトレーニング理論からみれば非科学的で野蛮な常識はいつのまにか駆逐され、運動中の水分補給の大切さは広く知られるようになった
▼常識は医療の世界でも変わる。EBMとは医療現場で医学的な根拠が要求されることであり、これまでの治療法(常識)が見直されることもあるという。歓迎すべき常識の変化だろう
▼医師の経験や勘が不要ということではなく、医療安全の面からもより客観的な基準が求められている
▼医療の質を平準化する効果もある。どこかで「水を飲むな!」と怒号が響かないように、すべての医療機関で導入が進むことを願う。(レ)