医療と法律問題|九州合同法律事務所 弁護士 小林 洋二

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 先月号で取り上げた、いわゆる「平和安全法制」は七月一六日に衆議院を通過し、議論の場は参議院に移りました。

 参議院での審議でにわかにクローズアップされてきたのが、中国脅威論です。

 ここ数年、中国は急速に軍備を拡大しており、この脅威に対抗するため、集団的自衛権の行使を可能にするための法制度を整備しなければならないのだという主張です。衆議院段階では、この議論は前面に出ていませんでしたが、七月二二日、政府は、中国が東シナ海に建設している新たな海洋プラットホームの航空写真などを外務省のホームページ上に公開、二八日から始まった参議院の平和安全法制特別委では、自民党議員の質問に答え、安倍総理が中国を名指しで批判しています。

 もともと、安保法制に賛成する人たちはこの問題を声高に叫んでいました。中国は何をするか分からない、尖閣どころか沖縄も危ない、日本単独では中国に勝てない、アメリカの助力を確保するために集団的自衛権が必要なのだ。

 しかし、これまでの安保法制の議論の中で語られてきたのは、むしろ朝鮮半島有事への対応であり、ホルムズ海峡での機雷掃海作業でした。なぜなのでしょう。そう思いながら改めて法案を眺めてみると、どうも、中国脅威論に直接的に影響するものは含まれていないようです。

 実は、平和安全法制を閣議決定した同じ日、法案とは別に三本の閣議決定がなされています。「我が国の領海及び内水で国際法上の無害通航に該当しない航行を行う外国群感への対処について」、「離島等に対する不法上陸等事案に対する政府の対処について」、「公海上で我が国の民間船舶に対し侵害行為を行う外国船舶を自衛隊の船舶等が認知した場合における当該侵害行為への対処について」。特に中国という国名も示されていませんし、東シナ海という地域も特定されてはいませんが、これが尖閣問題を念頭においたものであることは間違いないでしょう。

 要するに、尖閣問題は、基本的に従来の自衛隊法や海賊対処法の枠内で対応することになっているのです。

 考えてみれば当然のことであり、尖閣諸島が中国の侵略を受けるとすれば、それは日本にとっては個別的自衛権の問題になります。そこにアメリカがどのように関わるかは、アメリカの集団的自衛権の問題であって、日本の集団的自衛権の問題ではないのです。だから、中国脅威論は議論の中心的なテーマではありませんでした。

 では、なぜいま、中国脅威論が前面に出てきたのか。

 朝鮮半島有事もホルムズ海峡での機雷掃海作業も、極めて非現実的な想定であったことが明らかになったいま、いちばん国民の共感が得られるのはこれだと見定めたということだと思います。アメリカとの同盟関係を強固にすることが、中国の日本侵略に対する抑止力として必要なのだ。そのためには、なにがなんでもアメリカの要請に応える必要がある。アメリカが日本のために血を流すのと引き替えに、日本もアメリカのために血を流さねばならない。それを可能にするのが平和安全法制なのだ。

 しかし、そうであるならば、「日本がアメリカの戦争に巻き込まれることはあり得ない」という説明を信用しろというほうが無理というものです。

 ■九州合同法律事務所=福岡市東区馬出1丁目10―2 メディカルセンタービル九大病院前6階TEL:092・641・2007


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