医療法人至誠会 帆秋病院(大分市) 帆秋 孝幸 理事長・院長
略歴:1961 熊本大学医学部卒 1962 熊本大学大学院内科学研究科 1963 同研究科中退、岡山大学医学部神経精神医学教室 1968 岡山大学医学部附属病院臨床研究員、岡山大学医学部講師・岡山大学医学部附属病院精神科病棟医長 1969 学位(医学博士)取得、医療法人至誠会帆秋病院副院長 1982 同病院院長 1991 医療法人至誠会理事長・帆秋病院院長役職等:大分県老人保健施設協会会長(1990 ~ 2000) 大分県精神科病院共同組合理事長(2002 ~ 2004)大分県精神科病院協会会長(2004 ~ 2006) など
1956(昭和31)年、精神科・神経科診療所帆秋医院として開設された医療法人至誠会帆秋病院。今年4月には病院を移転新築し、新たなスタートを切っている。患者の社会復帰も積極的に支援する同法人の理事長で、帆秋病院院長でもある帆秋孝幸氏に話を聞いた。
―新病院の特徴は。
道路工事の関係で立ち退き対象となり、ほんのわずかな距離ですが移動し、移転・新築となりました。きっかけは必要が生じたことでしたが、どうせ新病院を造るならば、患者さんのため、地域のためにいい環境を整えたいという思いで、計画を進めました。
当院の特徴は、薬物療法に加えて、作業療法、理学療法などにも重点を置いていることです。新病院になる際に、認知症診断確定補助のための3テスラMRIを導入。さらに16列マルチヘリカルCT、高機能の脳波計、フルデジタル超音波画像診断装置、うつ病治療の高照度光療法室、不安神経症治療目的の森田療法室を新たに備えました。
精神障害がある方向けのグループホーム誠心寮と、グループホームに入居されている方向けの農園「サニーファーム」を運営し、デイケア、訪問看護にも力を入れています。治療・退院後の患者さんが自分で生きていけるように自立、自活の訓練をしたり、閉じこもりがちな患者さんが人と接触する場が必要なのです。
高齢化社会を見据えて、1988(昭和63)年には介護老人保健施設「健寿荘」を開設しました。地域密着型サービス事業所(通所介護施設)「バンブーハウス」や介護保険サービスセンター「暖家」を併設し、隣接する場所にはデイサービスセンター豊友、ヘルパーステーション豊友、居宅介護支援事業所、小規模多機能型居宅介護施設もあります。
―精神科を取り巻く環境はどう変わってきましたか。
私は熊本大学の医学部を卒業し、当初は内科学研究科に入りました。しかし当院の初代院長から「精神科はおもしろい。地域のためにもなる」と勧められたのをきっかけに、先代も学んだ岡山大学医学部神経精神医学教室へ入りなおし、この道を歩んできたのです。
昔は精神疾患は青年期までの人がかかるものというイメージでしたが、今は高齢者、認知症の方が増えています。精神科に通院していることを隠す風潮はなくなってきましたが、一方で患者さんの家族が患者さんを見捨ててしまったり取り合わないケースが増えてきているように感じます。
―精神科医を志す若い人へアドバイスを。
精神科医に必要なのは、共感、共鳴、共振。患者さんと一緒に悩み、考えなければなりません。
自分の功名心を捨てて、相手を思いやることが必要だと思います。